文献情報
文献番号
200100820A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
北 徹(京都大学医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 斉藤康(千葉大学医学部)
- 松澤佑次(大阪大学医学部)
- 馬渕宏(金沢大学医学部)
- 山田信博(筑波大学医学部)
- 及川真一(日本医科大学)
- 佐々木淳(国際医療福祉大学)
- 太田孝男(琉球大学医学部)
- 岡田知雄(日本大学医学部)
- 江見充(日本医科大学老人研)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高脂血症は、動脈硬化、腎症、膵炎などの発症と深く関わりがあり、その病態解明は治療法の開発につながるため、臨床的に極めて重要である。今回私どもの班においては原発性高脂血症の実態調査と病態解析をさらに進め、特に家族性複合型高脂血症の基礎的、および臨床的病態解析を行う。遺伝因子と環境因子の相互作用の検討においては、高脂血症と合併症との関連、および合併症を増悪させる要因を解析することにより合併症である虚血性心疾患を初めとする動脈硬化性疾患の発生を低下させることを目的とする。また、小児期に発現する遺伝性素因による脂質代謝異常症の、その後の環境因子による変化の推移を小児期から成人まで追跡調査し、遺伝素因と環境因子の相互作用を検討し、高脂血症と合併症との関連及び合併症を増悪させる要因を解析していく予定である。さらには平成12年(西暦2000年)は、10年ごとに行っている日本人の血清脂質調査の年にあたっており、この調査も併せて行う。
研究方法
(1)当研究班で解析を開始した家族性複合型高脂血症に注目し、これまで進められてきた家系調査の解析を進めたい。具体的には、対象(高脂血症者と正脂血症者)の年齢及び性別分布の影響、年齢及び性別分布の偏り、二次性高脂血症者やFCHL以外の原発性高脂血症の除外を徹底させる。(2)小児でのIIb型高脂血症とFCHLの関係を明確にし、成人の解析をあわせて動脈硬化性疾患との関連を考慮した新たな臨床指標の確立をめざす。小児期から成人期への経過観察を行うことにより高脂血症と合併症との関連及び合併症を増悪させる要因を解析していく。(3)原発性高脂血症による合併症の基礎的、および臨床的解析については、これまでの調査研究で原発性高脂血症の臨床症状との関連がかなり明確になってきた。これまでの研究は高脂血症の発症要因に偏っており、今後は合併症の防止を中心としたものになっていくべきではないかと考えられる。特に、遺伝因子と環境因子の相互作用の検討等は、今後積極的に調査されるべきであろう。この研究の延長として、これらの解析を進めていきたい。具体的には小児高脂血症患児の解析を通して環境要因の関与について調査する。(4)1960年から10年おきに調査されている日本人の血清脂質に関する調査を行う。この調査においては全国約45施設においてあらゆる年代にわたって血清脂質のみならず、血糖、ヘモグロビンA1c、アポEフェノタイプ、ホモシステインを20000例を目標に測定する。さらに京都大学医の倫理委員会で承認されたインフォームドコンセントに基づき、リポ蛋白リパーゼ、CETP、アポC3の遺伝子調査も併せて行う。
結果と考察
1) 2000年6月より始まった日本人血清脂質調査が終了した。約1万3千人の検体の測定を行った。まだ、解析の途中ではあるが、以下の表1にその全体結果を示す。まだ、年齢ごとの平均については解析途中ではあるが、1990年の調査に比べて、男性における中性脂肪の値が上昇を認めている。血糖、インスリン、HbA1cについては日本人におけるデータとしては最大数のものである。
表1
全体
TC
HDLc
TG
LDLc
血糖
Insulin
A1C
平均
201.2
59.1
118.4
119.5
95.1
7.2
4.90
標準偏差
34.56
15.33
102.4
31.48
19.86
8.05
0.637
測定数
13182
13170
13182
10657
8070
13903
9783
男
TC
HDLC
TG
LDLC
血糖
Insulin
A1C
平均
203.9
54.7
140.7
124.3
99.1
6.6
4.96
標準偏差
33.6
14.11
117.8
31.5
22.69
6.29
0.721
測定数
6202
6195
6202
5014
3749
6812
4688
女
TC
HDLC
TG
LDLC
血糖
Insulin
A1C
平均
201.1
64.7
92.9
118
93.4
8.4
4.87
標準偏差
33.6
14.88
63.96
32.14
19.13
10.78
0.607
測定数
3633
3628
3633
3022
2389
3662
2746
インフォームドコンセントが得られた2267名より、DNAを採取し、解析を行った。CETP変異1452GA出現率は0.49%、CETP変異D442G出現率は7.28%、LPL変異S447Xの出現率は20.8%であった。CETP多型TAQIBはB1/B1、B1/B2、B2/B2がそれぞれ24.9%、50.4%、24.7%であった。また、HTGL多型514CTにおいてはC/C24.9%、C/T50.4%、T/T24.7%であった。ホモシステイン代謝に関わるMTHFR多型C677TにおいてはC/C、C/T、T/Tそれぞれ32.7、49.0、18.3%であった。アポCIIISSTIサイトに関してはC/C、C/G、G/Gそれぞれ42.0、45.8、12.2%であった。
CETP変異に関してD442ヘテロ接合体の人においてHDLコレステロールが高く、統計学的に有意であった。中性脂肪が低い傾向が認められたが、有意差はなかった。また、1452GA変異のヘテロ接合体の人において総コレステロールが高い傾向がみられたが、有意ではなかった。TAQ多型においてはB2アリルを持っている人にHDLコレステロールが高く、有意であった。LPL変異S447Xホモ接合体の人において総コレステロール、HDLコレステロールが高い傾向がみられたが、有意ではなく、統計学的には中性脂肪値のみが有意差を持って低かった。HTGL多型514CTにおいてはTアリルを持つ人に総コレステロールとHDLコレステロールが有意に高かった。MTHFR遺伝子多型においては脂質代謝に影響を認めなかった。ApoCIIISSTIサイトに関してはGアリルを持つ人において中性脂肪が高い傾向が認められたが、統計学的には有意ではなかった。CETPのTAQIB多型の出現頻度はOkumuraら、Kawasakiらの報告とほぼ一致していた。また、B2アリルと高HDLコレステロールとの相関もKawasakiらの報告と一致していた。LPL変異S447Xの出現率は20.8%と諸家の報告と比べ、やや高めであった。HTGL多型514CT、 MTHFR多型C677Tの出現頻度は諸家の報告とほぼ同様であった。
2) 次に昨年度の班会議において作成した新しいFCHLの診断基準を用いた研究が行われた。原発性高脂血症高脂血症研究班による診断基準による問診から診断したFCHL34症例と対照180症例についてHTGL遺伝子多型HTGL-514C/T変異を解析した。遺伝子解析は末梢血液よりDNA抽出後、変異部位を挿む特異的配列のプライマーを用いてPCR増幅し、得られたDNA断片のシーケンスを解読することにより決定した。遺伝子多型頻度はCC、CT、TT型各々、FCHL症例14、47、39%、FCHL対照症例24、51、25%であり、Tアリル(62%)がFCHLにおいて高値(p<0.05)だった。各多型の血清脂質は、男性で、TT型(276mg/dl)およびTC型(242mg/dl)がCC型(186mg/dl)に比べ高値を示した。各アリルにおけるヘパリン静注後HTGL活性を測定した結果、TT型およびTC型は、CC型に比べ有意に低値(p<0.05)だった。
また、血管造影を行なった冠動脈疾患62症例と対照42症例の血中MDA-LDL濃度を抗MDA-LDL抗体ML25を用いたELISA法により測定した。血中MDA-LDL値は冠動脈疾患症例113U/l 、対照85U/lと前者で有意に高値(p<0.001)だった。男女共に高値であり、MDA-LDL/LDL-C値も冠動脈疾患で有意に高値を示した。MDA-LDL濃度は頚動脈内膜中膜肥厚度と正の相関を示した(R=0.41、p<0.001)。MDA-LDL濃度は、LDL-CおよびTGと正の相関(R=0.402、P<0.0001およびR=0.312、P<0.001)を示し、HDL-Cと負の相関(R=0.227、P<0.02)を示した。年齢とは有意な相関はみられなかった。LDLサイズの相関を検討したところ、負の相関を示した(R=0.24、p<0.01)。超遠心法により分離同定したLDL亜分画におけるMDA-LDL濃度を検討したところ、MDA-LDLは主に高比重画分であるLDL3とLDL4に存在していた。
3) 最後に小児における高脂血症の研究が行われた。1993年から1999年の7年間に日本各地で行われた小児生活習慣病予防健診を受診し、予防医学事業中央会により集計された9歳-16歳の小児を対象とした。総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDLC)、トリグリセライド(TG)を空腹時に得られた検体より測定し、Friedewald式よりLDLコレステロール(LDLC)を算出した。各血清脂質について、1999年に得られた性別年齢別測定値の平均値と有意差の認められない(student t-test)各健診年度の性別年齢別群を抽出して、パーセンタイル値(th%)を求めた。TC、LDLCの基準値は小児に対するNational Cholesterol Education Program ガイドラインに従って、75th%、95th%をカットオフ値として適性域、境界域、高値を設定した。HDLC、TGのカットオフ値はそれぞれ5th%、95th%とした。ただし、基準値としての簡便性を優先し、男女、年齢を統一して小児一般に対するものとした。
その結果TCの75th%は188mg/dl、95th%は220mg/dl、LDLCの75th%は113mg/dl、95th%は142mg/dl、HDLCの5th%は39mg/dl、TGの95th%は139mg/dlであった。基準値は各値の概数で設定し下表のごとくになった。
表 小児における血清脂質基準値
総コレステロール (LDLコレステロール)
コレステロール適正域
190 mg/dl未満 (110mg/dl未満)
コレステロール境界域
190?219mg/dl (110?139mg/dl)
高コレステロール血症
220mg/dl以上 (140mg/dl以上)
高トリグリセライド血症 140mg/dl 以上
低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
また、FCHLの原因遺伝子候補としてAcyl-CoA:Cholesterol Acyltransferase-1 (ACAT-1)遺伝子を30名のFCHL患者で解析し、2つの遺伝子変異を発見した(R526G, -77G-A)。R526G変異は高脂血症者及び正脂血症者の脂質・アポ蛋白濃度に影響を与えないサイレントな変異であった。-77G-A変異はR526G変異と同様に正脂血症者の脂質・アポ蛋白濃度には影響を与えなかったが高脂血症者ではHDL-C、アポA-I濃度に大きな影響を与えた。-77G-A変異を有する高脂血症患者では変異を持たない患者に比べHDL-C、アポA-I濃度は有意な高値を示した。以上の結果からACAT-1の肝臓或いはマクロファージにおける活性の変化が血中HDL濃度を制御している可能性が示唆された。
D. 考察
昨年度作成したFCHLの診断基準を元に病態に関与する因子の解析を進めつつある。日本人におけるFCHLの病態解析、予後に関する調査を来年度以降も継続して行うことにより、FCHL患者の早期発見、治療指針の作成が今後必要になろう。また、今年度作成した小児における高脂血症の基準に関しては成人の新基準値より、TC、LDLCは低い基準値となった。National Cholesterol Education ProgramのTC、LDLC高値よりも高い基準値(それぞれ+20,+10mg/dl)となった。FCHLなどの家族性高脂血症の家族の小児では、75th%以上をカットオフ値とすべきではないかと考えられた。また、TC、LDLCの各値の相対頻度は1990年の「日本人の血清脂質調査研究班」の報告の9歳以上小児と一致した成績であった。
昨年度作成したFCHLの診断基準を元に病態に関与する因子の解析を進めつつある。日本人におけるFCHLの病態解析、予後に関する調査を来年度以降も継続して行うことにより、FCHL患者の早期発見、治療指針の作成が今後必要になろう。また、今年度作成した小児における高脂血症の基準に関しては成人の新基準値より、TC、LDLCは低い基準値となった。National Cholesterol Education ProgramのTC、LDLC高値よりも高い基準値(それぞれ+20,+10mg/dl)となった。FCHLなどの家族性高脂血症の家族の小児では、75th%以上をカットオフ値とすべきではないかと考えられた。また、TC、LDLCの各値の相対頻度は1990年の「日本人の血清脂質調査研究班」の報告の9歳以上小児と一致した成績であった。
表1
全体
TC
HDLc
TG
LDLc
血糖
Insulin
A1C
平均
201.2
59.1
118.4
119.5
95.1
7.2
4.90
標準偏差
34.56
15.33
102.4
31.48
19.86
8.05
0.637
測定数
13182
13170
13182
10657
8070
13903
9783
男
TC
HDLC
TG
LDLC
血糖
Insulin
A1C
平均
203.9
54.7
140.7
124.3
99.1
6.6
4.96
標準偏差
33.6
14.11
117.8
31.5
22.69
6.29
0.721
測定数
6202
6195
6202
5014
3749
6812
4688
女
TC
HDLC
TG
LDLC
血糖
Insulin
A1C
平均
201.1
64.7
92.9
118
93.4
8.4
4.87
標準偏差
33.6
14.88
63.96
32.14
19.13
10.78
0.607
測定数
3633
3628
3633
3022
2389
3662
2746
インフォームドコンセントが得られた2267名より、DNAを採取し、解析を行った。CETP変異1452GA出現率は0.49%、CETP変異D442G出現率は7.28%、LPL変異S447Xの出現率は20.8%であった。CETP多型TAQIBはB1/B1、B1/B2、B2/B2がそれぞれ24.9%、50.4%、24.7%であった。また、HTGL多型514CTにおいてはC/C24.9%、C/T50.4%、T/T24.7%であった。ホモシステイン代謝に関わるMTHFR多型C677TにおいてはC/C、C/T、T/Tそれぞれ32.7、49.0、18.3%であった。アポCIIISSTIサイトに関してはC/C、C/G、G/Gそれぞれ42.0、45.8、12.2%であった。
CETP変異に関してD442ヘテロ接合体の人においてHDLコレステロールが高く、統計学的に有意であった。中性脂肪が低い傾向が認められたが、有意差はなかった。また、1452GA変異のヘテロ接合体の人において総コレステロールが高い傾向がみられたが、有意ではなかった。TAQ多型においてはB2アリルを持っている人にHDLコレステロールが高く、有意であった。LPL変異S447Xホモ接合体の人において総コレステロール、HDLコレステロールが高い傾向がみられたが、有意ではなく、統計学的には中性脂肪値のみが有意差を持って低かった。HTGL多型514CTにおいてはTアリルを持つ人に総コレステロールとHDLコレステロールが有意に高かった。MTHFR遺伝子多型においては脂質代謝に影響を認めなかった。ApoCIIISSTIサイトに関してはGアリルを持つ人において中性脂肪が高い傾向が認められたが、統計学的には有意ではなかった。CETPのTAQIB多型の出現頻度はOkumuraら、Kawasakiらの報告とほぼ一致していた。また、B2アリルと高HDLコレステロールとの相関もKawasakiらの報告と一致していた。LPL変異S447Xの出現率は20.8%と諸家の報告と比べ、やや高めであった。HTGL多型514CT、 MTHFR多型C677Tの出現頻度は諸家の報告とほぼ同様であった。
2) 次に昨年度の班会議において作成した新しいFCHLの診断基準を用いた研究が行われた。原発性高脂血症高脂血症研究班による診断基準による問診から診断したFCHL34症例と対照180症例についてHTGL遺伝子多型HTGL-514C/T変異を解析した。遺伝子解析は末梢血液よりDNA抽出後、変異部位を挿む特異的配列のプライマーを用いてPCR増幅し、得られたDNA断片のシーケンスを解読することにより決定した。遺伝子多型頻度はCC、CT、TT型各々、FCHL症例14、47、39%、FCHL対照症例24、51、25%であり、Tアリル(62%)がFCHLにおいて高値(p<0.05)だった。各多型の血清脂質は、男性で、TT型(276mg/dl)およびTC型(242mg/dl)がCC型(186mg/dl)に比べ高値を示した。各アリルにおけるヘパリン静注後HTGL活性を測定した結果、TT型およびTC型は、CC型に比べ有意に低値(p<0.05)だった。
また、血管造影を行なった冠動脈疾患62症例と対照42症例の血中MDA-LDL濃度を抗MDA-LDL抗体ML25を用いたELISA法により測定した。血中MDA-LDL値は冠動脈疾患症例113U/l 、対照85U/lと前者で有意に高値(p<0.001)だった。男女共に高値であり、MDA-LDL/LDL-C値も冠動脈疾患で有意に高値を示した。MDA-LDL濃度は頚動脈内膜中膜肥厚度と正の相関を示した(R=0.41、p<0.001)。MDA-LDL濃度は、LDL-CおよびTGと正の相関(R=0.402、P<0.0001およびR=0.312、P<0.001)を示し、HDL-Cと負の相関(R=0.227、P<0.02)を示した。年齢とは有意な相関はみられなかった。LDLサイズの相関を検討したところ、負の相関を示した(R=0.24、p<0.01)。超遠心法により分離同定したLDL亜分画におけるMDA-LDL濃度を検討したところ、MDA-LDLは主に高比重画分であるLDL3とLDL4に存在していた。
3) 最後に小児における高脂血症の研究が行われた。1993年から1999年の7年間に日本各地で行われた小児生活習慣病予防健診を受診し、予防医学事業中央会により集計された9歳-16歳の小児を対象とした。総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDLC)、トリグリセライド(TG)を空腹時に得られた検体より測定し、Friedewald式よりLDLコレステロール(LDLC)を算出した。各血清脂質について、1999年に得られた性別年齢別測定値の平均値と有意差の認められない(student t-test)各健診年度の性別年齢別群を抽出して、パーセンタイル値(th%)を求めた。TC、LDLCの基準値は小児に対するNational Cholesterol Education Program ガイドラインに従って、75th%、95th%をカットオフ値として適性域、境界域、高値を設定した。HDLC、TGのカットオフ値はそれぞれ5th%、95th%とした。ただし、基準値としての簡便性を優先し、男女、年齢を統一して小児一般に対するものとした。
その結果TCの75th%は188mg/dl、95th%は220mg/dl、LDLCの75th%は113mg/dl、95th%は142mg/dl、HDLCの5th%は39mg/dl、TGの95th%は139mg/dlであった。基準値は各値の概数で設定し下表のごとくになった。
表 小児における血清脂質基準値
総コレステロール (LDLコレステロール)
コレステロール適正域
190 mg/dl未満 (110mg/dl未満)
コレステロール境界域
190?219mg/dl (110?139mg/dl)
高コレステロール血症
220mg/dl以上 (140mg/dl以上)
高トリグリセライド血症 140mg/dl 以上
低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
また、FCHLの原因遺伝子候補としてAcyl-CoA:Cholesterol Acyltransferase-1 (ACAT-1)遺伝子を30名のFCHL患者で解析し、2つの遺伝子変異を発見した(R526G, -77G-A)。R526G変異は高脂血症者及び正脂血症者の脂質・アポ蛋白濃度に影響を与えないサイレントな変異であった。-77G-A変異はR526G変異と同様に正脂血症者の脂質・アポ蛋白濃度には影響を与えなかったが高脂血症者ではHDL-C、アポA-I濃度に大きな影響を与えた。-77G-A変異を有する高脂血症患者では変異を持たない患者に比べHDL-C、アポA-I濃度は有意な高値を示した。以上の結果からACAT-1の肝臓或いはマクロファージにおける活性の変化が血中HDL濃度を制御している可能性が示唆された。
D. 考察
昨年度作成したFCHLの診断基準を元に病態に関与する因子の解析を進めつつある。日本人におけるFCHLの病態解析、予後に関する調査を来年度以降も継続して行うことにより、FCHL患者の早期発見、治療指針の作成が今後必要になろう。また、今年度作成した小児における高脂血症の基準に関しては成人の新基準値より、TC、LDLCは低い基準値となった。National Cholesterol Education ProgramのTC、LDLC高値よりも高い基準値(それぞれ+20,+10mg/dl)となった。FCHLなどの家族性高脂血症の家族の小児では、75th%以上をカットオフ値とすべきではないかと考えられた。また、TC、LDLCの各値の相対頻度は1990年の「日本人の血清脂質調査研究班」の報告の9歳以上小児と一致した成績であった。
昨年度作成したFCHLの診断基準を元に病態に関与する因子の解析を進めつつある。日本人におけるFCHLの病態解析、予後に関する調査を来年度以降も継続して行うことにより、FCHL患者の早期発見、治療指針の作成が今後必要になろう。また、今年度作成した小児における高脂血症の基準に関しては成人の新基準値より、TC、LDLCは低い基準値となった。National Cholesterol Education ProgramのTC、LDLC高値よりも高い基準値(それぞれ+20,+10mg/dl)となった。FCHLなどの家族性高脂血症の家族の小児では、75th%以上をカットオフ値とすべきではないかと考えられた。また、TC、LDLCの各値の相対頻度は1990年の「日本人の血清脂質調査研究班」の報告の9歳以上小児と一致した成績であった。
結論
昨年度作成したFCHLの診断基準を元に、今後はさらにFCHLの主要な合併症である虚血性心疾患との関連においてさらに検討が必要となろう。また、小児期における血清脂質のスクリーニングにより、高脂血症の早期発見とその家系調査によるFCHL、家族性高コレステロール血症の早期発見、早期治療により、血管合併症の発症を未然に防ぐことが可能になると思われる。西暦2000年日本人の血清脂質調査において1990年と比べ、男性における中性脂肪の上昇が明らかとなった。また、脂質代謝に関する遺伝子変異、多型と血清総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールとの相関を調べた。CETP、LPL、HTGL遺伝子と血清脂質値との相関が示された。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-