リウマチ性疾患克服に関する研究

文献情報

文献番号
200100793A
報告書区分
総括
研究課題名
リウマチ性疾患克服に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 久寿樹(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩倉洋一郎(東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター)
  • 越智隆弘(大阪大学医学部)
  • 岡正典(京都市立身体障害者リハビリテーションセンター付属病院)
  • 越智光夫(島根医科大学整形外科)
  • 戸山芳昭(慶応義塾大学医学部整形外科教室)
  • 中島利博(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
  • 中西徹(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中村耕三(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能医学講座整形外科)
  • 開祐司(京都大学再生医科学研究所)
  • 山本一彦(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻)
  • 吉川秀樹(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科))
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学予防医学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リウマチ性疾患は、筋骨格系といった日常生活に直結する運動器が系統的に侵襲される疾患である。そのために患者の日常生活活動作を中心とする生活の質(QOL)は著しく低下し、またそれによる社会的損失は著しい。人口の高年齢化とともに増加の一途にあると考えられ、リウマチ性疾患の発症機構の解明とその制圧は、国民保健上からも緊急性を要する課題である。本研究班は、①リウマチ性疾患に伴う難治性炎症の制御を目的とした創薬研究とその臨床的適応の推進、②骨・軟骨の変性の分子機構の解明により、その制御手段を開発、③再生医学の手段を用いた運動機能の回復、の3本を重要な研究課題として、以下の研究を遂行した。
研究方法
本研究計画を達成するための研究目標
① 創薬・遺伝子制御を中心とする先端的治療研究領域
② 筋・骨格系障害の制御、とくに骨・軟骨変性の再生
③ リウマチ性疾患に対する医療経済モデルの確立
以上三つの研究を主軸として、これを国民の保健・医療及び福祉の面から評価するため、研究目標達成によって得られる費用対効果の検討を行う。このために現在第一線で研究活動を行っている分担研究者を選定し、それぞれの戦略目標を立てた。
結果と考察
1) 先端的研究
① 既存のリウマチ剤の評価を、患者の遺伝子多型性解析に基づいて、その結果、適正な治療計画を確立するためのデータベースが整備された。
② 病態形成にかかわる炎症性分子や骨破壊分子とそれを標的とした生物製剤の開発が進展しており、その前臨床準備が進められている。
③ 難治性リウマチに対する遺伝子治療の基礎的成果に基づき、臨床応用へ向けた研究が展開されている。
④ 転写異常に伴う病態制御のための鍵となる分子が幾つか明確になった。
⑤ 発生工学に基づく抗リウマチ剤の開発のための動物モデルが5系統ほど確立された。
2) 筋骨格系を中心とする障害運動器の修復と再生医療
① 骨・軟骨破壊の分子機構の解明とその制御が進み、特にIL-1Ra, γ-インターフェロンの強力な効果が動物モデルで確認された。
② 成長因子による軟骨再生の基礎的・臨床的研究が着実に進んでいる。
③ 胚性幹細胞を用いた骨・軟骨の分化・誘導とそれを用いた再生医療への検討が行われている。
④ 運動器障害の修復のためのロボシステムを用いたナビゲーターオペレーションが確立され臨床応用に一定の目途がついてきた。
⑤ 運動器科学及び生活機能病の視点からリウマチ性疾患の制御目標が確立された。
⑥ リウマチ性疾患の国民医療費に対する計量的評価とその克服によって得られる経済効果の予測モデルが確立されて、そのデータベースが構築された。
以上のように、今年度の研究班では、リウマチ性疾患による運動器障害に対して、運動器再生・機能再生を企て新しい治療戦略を構築し、現在着実に進展している。また運動器科学という新しい分野の構築に基礎をおいた。リウマチ性疾患の病因病態解明・治療戦略の構築を試みた独創的な研究である。また、今回リウマチ性疾患の罹患による社会的損失の計量的評価地域別に検討する評価モデルを作成したが、これも本邦では初めての試みである。
結論
リウマチ性疾患に対する疫学的研究から病因・病態・治療戦略について、これまで本研究の構成員は国際的にも第一線の研究開発活動を行ってきた。これまでの成果に基づいて、数多くの新しい制圧戦略が確立した。また、新たに生物製剤・遺伝子制御などによる先端治療研究を遂行してきた。その結果は次の通りである。
① 難治性炎症の制御のための新規生物製剤臨床へ向けた開発が遂行されている。
② アポトーシスの制御を通じて骨・関節疾患に対する先端的な治療戦略の研究開発を展開してきている。
③ リウマチの病因の1つに関節や四肢の形態形成遺伝子の関与を解明した。またこれらは再生治療の方向性を示し、関節形成に主要な役割を担っている遺伝子を解析している。
④ 軟骨破壊の再生のために成長因子ペプチドや胚細胞用いた研究、自家軟骨移植など新しい試みが遂行されている。
⑤ 生物活性を有する骨・軟骨破壊の予防薬の臨床応用に向けた基礎的研究及び臨床が発展している。
⑥ 転写機能の異常が、新たにこれらのリウマチ性疾患に関与していることが明らかにされ、そのモデルマウスが確立された。これらを制御することにより、低分子化合物による創薬開発の研究が進んでいる。
⑦ リウマチ性疾患の医療経済効果の面から検討が進んでいる。
⑧ ロボシステムを用いた新しい再建外科の手術療法が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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