文献情報
文献番号
200100792A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の病因病態の解明及び新治療法の開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 清(東京医科歯科大学大学院環境皮膚免疫学)
研究分担者(所属機関)
- 玉置邦彦(東京大学)
- 烏山一(東京医科歯科大学)
- 眞弓光文(福井医科大学)
- 瀧川雅浩(浜松医科大学)
- 片山一朗(長崎大学)
- 相馬良直(聖マリアンナ医科大学)
- 古賀哲也(九州大学)
- 塩原哲夫(杏林大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
75,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の研究目的は、患者の増加傾向が著しい難治性アトピー性皮膚炎の病因・病態を解析し、アトピー性皮膚炎の新しい治療法を開発することにある。アトピー性皮膚炎の病態として①IgE抗体過剰産生に基づくアレルギー炎症と②皮膚バリア機能異常による皮膚の易刺激性に基づく非特異的炎症が指摘されている。後者の皮膚易刺激性に対しては、すでに、スキンケアを中心とした治療法が確立され、日常診療に繁用されているが、前者のアレルギー炎症は、皮膚バリア機能異常によって発症した皮膚炎症反応を増幅、遷延化し、アトピー性皮膚炎の難治化の中心的役割を果たしている。本研究班では、難治化したアトピー性皮膚炎の新しい治療法の開発を行うため、アトピー性皮膚炎の難治化の要因となっているアレルギー炎症の病因・病態を解析し、得られた知見に基づく新しい治療法を開発することを目的として活動している。
研究方法
研究方法と結果=1)アレルギー炎症の病態解析と治療法開発への標的の方策
アトピー性皮膚炎の炎症局所に浸潤するTリンパ球はCLA(cutaneous lymphocyte-associated antigen)を発現しており、CLA陽性Tリンパ球がアレルギー炎症の重要な役割を果たすとされ、治療法開発の標的の一つとなっている。しかし、果たしてCLAが新しい治療法開発の標的となりうるのかについてはまだ多くの問題点が残している。塩原班員は、皮膚局所にCLA陽性T細胞が多く浸潤するが、患者末梢血中のT細胞の多くもCLAを発現している事に注目し、CLA発現調節機構の解析を行った。CLAの発現にはFucosyl transferase VII(Fuc-TVII)が関与し、この酵素はCLAに糖鎖を添加し、E-selectin との結合が可能になる。 Fuc-TVIIは、CLAのみでなく、E-selectin legand(ESL)にも糖鎖を付与する役割を持っており、IL-12により発現が増強し、IL-4により発現が減弱する。Fuc-TVIIによってCLAの発現が増強されるとすると、アトピー性皮膚炎の炎症局所に大量に放出されるIL-4とのかかわりで矛盾が生じる。そこでnaiiveT細胞を活性化し、E-selectin とESL、CLAの発現を経時的に観察した。T細胞活性化の過程で、E-selectinが発現され、ついでESLの発現が起こる。CLAの発現はT細胞がresting stageに入った時点で起ることがわかり、T細胞のCLA陽性化はT細胞の浸潤とは別の現象で、局所への浸潤にはE-selectinnとESLの反応が関与していることを明らかにした。この結果から、アレルギー炎症を阻止するためにはCLAを標的とするのでなく、E-selectin-ESLあるいはFuc-TVIIを標的とすべきであることを提案した。
烏山班員は、IgE遺伝子transgenic mouseが高IgE血症を示し、このような状態では、肥満細胞表面のFceRIがIgEと結合することによって安定化し、かつ、この安定化の鍵はFceRIのα鎖が担っていたことから、IgEのα鎖の発現調節によって治療薬の開発が可能であることを示唆した。さらに、FceRIの動きを解析するため、マウスにIgEを静脈投与したところ、IgEは1週間以内に急速に血中から消失した。しかし、血中IgEが消失した状態のマウスに抗原投与を行ったところ、アレルギー反応が引き起こされた。すなわちIgE炎症のメモリーは1ヵ月以上にわたって残存し、異なった抗原特異性をもつIgEを追加投与してもメモリーはかわらず持続していることを明らかにした。この現象は、アレルギー炎症の遷延化を考える上で重要な知見である。また、烏山班員が昨年の成果で発見したIgEによる第3相反応である遷延化する皮膚反応との関連性で興味深いものであり、また、アレルギー炎症を抑制 する治療法を開発する上で考慮すべき重要な知見といえる。
片山班員は、昨年に引き続きアトピー性皮膚炎患者の線維芽細胞からのエオタキシン産生を検討した。アトピー性皮膚炎患者の皮膚には、Th2サイトカインであるIL-4が多く放出されており、これに表皮細胞から産生されるサブスタンスPと肥満細胞からのヒスタミンの作用によって、線維芽細胞がエオタキシン産生を亢進する。エオタキシンは局所に炎症細胞を引き寄せ、アレルギー炎症を増幅・拡大して炎症の遷延化をきたす。アトピー性皮膚炎の線維芽細胞は、健常者線維芽細胞に比して、細胞の継代数の増加によるエオタキシン産生の減弱が見られず、また、患者の健常皮膚から得た線維芽細胞にも同様のエオタキシン産生の亢進が持続することを見い出しており、本症患者の線維芽細胞のエオタキシン賛成機構にも何らかの遺伝的背景が存在することを示した。
真弓班員は、アトピー性皮膚炎における酸化ストレスとレドックス制御について検討し、すでにアトピー性皮膚炎患者で、酸化ストレスの防御を行う役割を持つNOxの産生が減少していることを見い出している。そこで、アトピー性皮膚炎患者に感染症が併発した場合のレドックス制御を検討したところ、やはり、NOxの合成不全が認められ、これがアトピー性皮膚炎の難治化に大きく関わりを持っている可能性を示唆した。さらに、血管内皮細胞の接着分子は、NOx放出薬によって発現が抑制 され、抗酸化薬によってTNFなどのサイトカインにより引き起こされる血管内皮細胞の接着分子発現の亢進が抑制 されることを示し、アトピー性皮膚炎でのレドックス制御を行うNOx合成不全がアトピー性皮膚炎の病態に大きく関連しており、この側面からの治療薬の開発の必要性を示した。
また、アトピー性皮膚炎の発症予知を行う指標を見つけるため、臍帯血T細胞からのIL-13産生を検討した。臍帯血T細胞のIL-13産生と両親のアトピー家族歴、2ヶ月以上続く湿疹の間に特異性84%、感度55%の相関がみられ、臍帯血T細胞のIL-13産生がアトピー性皮膚炎発症予知の指標となることを明らかにした。
2)アトピー性皮膚炎の免疫反応の解析と治療法の開発
相馬班員は、昨年度に続き、皮膚局所へ浸潤するT細胞のクロナリティーを検討し、皮膚病巣から抽出したmRNAの解析によるT細胞受容体(TCR)のクロナリティーと患者が持つ抗原特異的末梢血T細胞のTCRのそれが一致することを示した。さらに、ダニ抗原で感作したマウスにダニ抗原で誘発した皮膚炎を同様に検討し、皮膚と脾臓細胞のTCR解析結果から、オリゴクローナルなT細胞が炎症局所に浸潤していることを明らかにした。この解析結果をもとにして、相馬班員は、抗原ペプチドによるワクチン療法の可能性を示唆している。
玉置班員は、アトピー性皮膚炎に見られるTh2優位の免疫反応をTh1優位の反応に偏位させる方法を、抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)機能の調節によって開発することを試みている。すでに、LCが、抗CD40抗体とインターフェロンγの存在下でIL-12を産生し、GM-CSFの添加によってIL-12産生(Th1型反応への偏位)が抑制されることを明らかにしている。さらに、TGF-βはGM-CSFによるLCのIL-12産生低下を解除することを明らかにしている。そこで、LPS刺激によるIL-6、IL-12産生を、脾臓樹状細胞(DC)、腹腔マクロファージと比較したところ、DC、マクロファージはともに反応したが、LCは、LPS刺激下でも、IL-6、IL-12産生ともにみられず、LCの抗原提示細胞としての特異性を明らかにした。さらに、LCをTGF-β処理した後ナイーブT細胞と培養し、産生されるサイトカインを検討したところ、T細胞はインターフェロンγを多く産生をし、IL-4を少なく産生した。このことは、LCがその存在する環境によってIL-12産生量を変化させること、TGF-β処理によってTh1型の免疫反応へと偏位させることができ、LC操作による治療法開発の可能性が示すものである。
滝川班員は、レプチンによるTh1型免疫反応の活性能に注目し、アトピー性皮膚炎患者における血清中レプチンの動態を検討し、アトピー性皮膚炎患者の重症例で血中レプチンの低下を見いだした。血中レプチン/BMI(body mass index)比は、血清IgE値と皮膚症状の重症度を示すSCORAD値と逆相関した。この結果は、レプチン分泌は、アトピー性皮膚炎に加わる種々のストレスによって影響されるものであり、アトピー性皮膚炎でのレプチンの低下は、免疫反応をTh2型へ偏位させ、より重症化を招来する因子の一つとなっていることを示すものである。
3)アトピー皮膚炎の新しい治療薬の開発
アトピー性皮膚炎の新しい治療薬の開発として、西岡班員は、すでに開発したIgE投与によるアレルギー炎症モデルにおける遅発型反応が、IL-4受容体からの転写因子であるSTAT6の欠損マウスで抑制されたことから、STAT6のおとり(decoy)核酸医薬を調整し、その投与によって、IgEによって引き起こされる遅発型反応部位での炎症細胞浸潤とIL-4、IL-5の産生が抑制され、炎症反応が抑制されることを示した。この成果は、STAT6のおとり核酸医薬がアトピー性皮膚炎でのアレルギー炎症抑制のための治療薬となりうることを示すものである。
古賀班員は、すでに、抗酸化剤であるCX-659Sがランゲルハンス細胞機能を抑制することによってアレルギー性接触皮膚炎を抑制することを明らかにしており、その作用機序の解明を昨年に引き続いて行った。CX?659Sは、高濃度ではLCのIL-1β産生を抑制したが、これは薬理的濃度よりも遙かに高いことから、さらに検討を加え、CX-659Sが薬理学的濃度で表皮細胞のGM-CSF産生を抑制し、その結果、LC機能を抑制してアレルギー炎症を抑制していることを明らかにした。CX-659Sは治験の段階に入りつつあることも明らかにし、治療薬のとして臨床使用の可能性を示した。
アトピー性皮膚炎の炎症局所に浸潤するTリンパ球はCLA(cutaneous lymphocyte-associated antigen)を発現しており、CLA陽性Tリンパ球がアレルギー炎症の重要な役割を果たすとされ、治療法開発の標的の一つとなっている。しかし、果たしてCLAが新しい治療法開発の標的となりうるのかについてはまだ多くの問題点が残している。塩原班員は、皮膚局所にCLA陽性T細胞が多く浸潤するが、患者末梢血中のT細胞の多くもCLAを発現している事に注目し、CLA発現調節機構の解析を行った。CLAの発現にはFucosyl transferase VII(Fuc-TVII)が関与し、この酵素はCLAに糖鎖を添加し、E-selectin との結合が可能になる。 Fuc-TVIIは、CLAのみでなく、E-selectin legand(ESL)にも糖鎖を付与する役割を持っており、IL-12により発現が増強し、IL-4により発現が減弱する。Fuc-TVIIによってCLAの発現が増強されるとすると、アトピー性皮膚炎の炎症局所に大量に放出されるIL-4とのかかわりで矛盾が生じる。そこでnaiiveT細胞を活性化し、E-selectin とESL、CLAの発現を経時的に観察した。T細胞活性化の過程で、E-selectinが発現され、ついでESLの発現が起こる。CLAの発現はT細胞がresting stageに入った時点で起ることがわかり、T細胞のCLA陽性化はT細胞の浸潤とは別の現象で、局所への浸潤にはE-selectinnとESLの反応が関与していることを明らかにした。この結果から、アレルギー炎症を阻止するためにはCLAを標的とするのでなく、E-selectin-ESLあるいはFuc-TVIIを標的とすべきであることを提案した。
烏山班員は、IgE遺伝子transgenic mouseが高IgE血症を示し、このような状態では、肥満細胞表面のFceRIがIgEと結合することによって安定化し、かつ、この安定化の鍵はFceRIのα鎖が担っていたことから、IgEのα鎖の発現調節によって治療薬の開発が可能であることを示唆した。さらに、FceRIの動きを解析するため、マウスにIgEを静脈投与したところ、IgEは1週間以内に急速に血中から消失した。しかし、血中IgEが消失した状態のマウスに抗原投与を行ったところ、アレルギー反応が引き起こされた。すなわちIgE炎症のメモリーは1ヵ月以上にわたって残存し、異なった抗原特異性をもつIgEを追加投与してもメモリーはかわらず持続していることを明らかにした。この現象は、アレルギー炎症の遷延化を考える上で重要な知見である。また、烏山班員が昨年の成果で発見したIgEによる第3相反応である遷延化する皮膚反応との関連性で興味深いものであり、また、アレルギー炎症を抑制 する治療法を開発する上で考慮すべき重要な知見といえる。
片山班員は、昨年に引き続きアトピー性皮膚炎患者の線維芽細胞からのエオタキシン産生を検討した。アトピー性皮膚炎患者の皮膚には、Th2サイトカインであるIL-4が多く放出されており、これに表皮細胞から産生されるサブスタンスPと肥満細胞からのヒスタミンの作用によって、線維芽細胞がエオタキシン産生を亢進する。エオタキシンは局所に炎症細胞を引き寄せ、アレルギー炎症を増幅・拡大して炎症の遷延化をきたす。アトピー性皮膚炎の線維芽細胞は、健常者線維芽細胞に比して、細胞の継代数の増加によるエオタキシン産生の減弱が見られず、また、患者の健常皮膚から得た線維芽細胞にも同様のエオタキシン産生の亢進が持続することを見い出しており、本症患者の線維芽細胞のエオタキシン賛成機構にも何らかの遺伝的背景が存在することを示した。
真弓班員は、アトピー性皮膚炎における酸化ストレスとレドックス制御について検討し、すでにアトピー性皮膚炎患者で、酸化ストレスの防御を行う役割を持つNOxの産生が減少していることを見い出している。そこで、アトピー性皮膚炎患者に感染症が併発した場合のレドックス制御を検討したところ、やはり、NOxの合成不全が認められ、これがアトピー性皮膚炎の難治化に大きく関わりを持っている可能性を示唆した。さらに、血管内皮細胞の接着分子は、NOx放出薬によって発現が抑制 され、抗酸化薬によってTNFなどのサイトカインにより引き起こされる血管内皮細胞の接着分子発現の亢進が抑制 されることを示し、アトピー性皮膚炎でのレドックス制御を行うNOx合成不全がアトピー性皮膚炎の病態に大きく関連しており、この側面からの治療薬の開発の必要性を示した。
また、アトピー性皮膚炎の発症予知を行う指標を見つけるため、臍帯血T細胞からのIL-13産生を検討した。臍帯血T細胞のIL-13産生と両親のアトピー家族歴、2ヶ月以上続く湿疹の間に特異性84%、感度55%の相関がみられ、臍帯血T細胞のIL-13産生がアトピー性皮膚炎発症予知の指標となることを明らかにした。
2)アトピー性皮膚炎の免疫反応の解析と治療法の開発
相馬班員は、昨年度に続き、皮膚局所へ浸潤するT細胞のクロナリティーを検討し、皮膚病巣から抽出したmRNAの解析によるT細胞受容体(TCR)のクロナリティーと患者が持つ抗原特異的末梢血T細胞のTCRのそれが一致することを示した。さらに、ダニ抗原で感作したマウスにダニ抗原で誘発した皮膚炎を同様に検討し、皮膚と脾臓細胞のTCR解析結果から、オリゴクローナルなT細胞が炎症局所に浸潤していることを明らかにした。この解析結果をもとにして、相馬班員は、抗原ペプチドによるワクチン療法の可能性を示唆している。
玉置班員は、アトピー性皮膚炎に見られるTh2優位の免疫反応をTh1優位の反応に偏位させる方法を、抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)機能の調節によって開発することを試みている。すでに、LCが、抗CD40抗体とインターフェロンγの存在下でIL-12を産生し、GM-CSFの添加によってIL-12産生(Th1型反応への偏位)が抑制されることを明らかにしている。さらに、TGF-βはGM-CSFによるLCのIL-12産生低下を解除することを明らかにしている。そこで、LPS刺激によるIL-6、IL-12産生を、脾臓樹状細胞(DC)、腹腔マクロファージと比較したところ、DC、マクロファージはともに反応したが、LCは、LPS刺激下でも、IL-6、IL-12産生ともにみられず、LCの抗原提示細胞としての特異性を明らかにした。さらに、LCをTGF-β処理した後ナイーブT細胞と培養し、産生されるサイトカインを検討したところ、T細胞はインターフェロンγを多く産生をし、IL-4を少なく産生した。このことは、LCがその存在する環境によってIL-12産生量を変化させること、TGF-β処理によってTh1型の免疫反応へと偏位させることができ、LC操作による治療法開発の可能性が示すものである。
滝川班員は、レプチンによるTh1型免疫反応の活性能に注目し、アトピー性皮膚炎患者における血清中レプチンの動態を検討し、アトピー性皮膚炎患者の重症例で血中レプチンの低下を見いだした。血中レプチン/BMI(body mass index)比は、血清IgE値と皮膚症状の重症度を示すSCORAD値と逆相関した。この結果は、レプチン分泌は、アトピー性皮膚炎に加わる種々のストレスによって影響されるものであり、アトピー性皮膚炎でのレプチンの低下は、免疫反応をTh2型へ偏位させ、より重症化を招来する因子の一つとなっていることを示すものである。
3)アトピー皮膚炎の新しい治療薬の開発
アトピー性皮膚炎の新しい治療薬の開発として、西岡班員は、すでに開発したIgE投与によるアレルギー炎症モデルにおける遅発型反応が、IL-4受容体からの転写因子であるSTAT6の欠損マウスで抑制されたことから、STAT6のおとり(decoy)核酸医薬を調整し、その投与によって、IgEによって引き起こされる遅発型反応部位での炎症細胞浸潤とIL-4、IL-5の産生が抑制され、炎症反応が抑制されることを示した。この成果は、STAT6のおとり核酸医薬がアトピー性皮膚炎でのアレルギー炎症抑制のための治療薬となりうることを示すものである。
古賀班員は、すでに、抗酸化剤であるCX-659Sがランゲルハンス細胞機能を抑制することによってアレルギー性接触皮膚炎を抑制することを明らかにしており、その作用機序の解明を昨年に引き続いて行った。CX?659Sは、高濃度ではLCのIL-1β産生を抑制したが、これは薬理的濃度よりも遙かに高いことから、さらに検討を加え、CX-659Sが薬理学的濃度で表皮細胞のGM-CSF産生を抑制し、その結果、LC機能を抑制してアレルギー炎症を抑制していることを明らかにした。CX-659Sは治験の段階に入りつつあることも明らかにし、治療薬のとして臨床使用の可能性を示した。
結果と考察
考察と平成13年度のアレルギー炎症の解析から、①アトピー性皮膚炎の炎症局所へのTリンパ球浸潤を調節している因子としてFucosyl transferase VIIが標的となること、②IgEを介する炎症反応にメモリー現象が存在して炎症反応の遷延化をきたすこと、③線維芽細胞からのエオタキシン産生亢進がアトピー性皮膚炎の炎症の遷延化を来すこと、また、この形質に遺伝的背景が考えられること、④アトピー性皮膚炎患者においてNOx合成不全が潜在し、炎症反応の遷延化をきたすこと、⑤アトピー性皮膚炎発症予知因子として臍帯血Tリンパ球のIL-13産生が指標となることが明らかになった。これらの治療法開発の標的を中心に、アトピー性皮膚炎治療法の開発に向かった研究を継続する予定である。また、アトピー性皮膚炎の免疫現象として、①アトピー性皮膚炎の炎症皮膚局所に抗原特異的オリゴクローナルなT細胞が浸潤していること、②ランゲルハンス細胞のサイトカイン処理によってTh1型免疫反応への偏位が可能であることが明らかとなり、新しい治療法開発への可能性を示唆する知見と考えられる。また、③アトピー性皮膚炎患者の血清レプチン量に低下は、非免疫学的ととらえられている現象が免疫現象と複雑に絡み合っていることを示唆する知見であり、本症の病態を考える上で興味あるものである。
さらに、新しい治療薬の開発として、①STAT6のおとり(decoy)核酸医薬のよるアレルギー炎症の抑制と②抗酸化薬CX-659Sの治療薬としての検討結果並びに臨床治験への進行は、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬開発を可能にするものであり、本研究班の大きな研究成果であると考える。これらの薬物の臨床応用に向かって今後の研究活動を継続する予定である。
となることを示したこと。
さらに、新しい治療薬の開発として、①STAT6のおとり(decoy)核酸医薬のよるアレルギー炎症の抑制と②抗酸化薬CX-659Sの治療薬としての検討結果並びに臨床治験への進行は、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬開発を可能にするものであり、本研究班の大きな研究成果であると考える。これらの薬物の臨床応用に向かって今後の研究活動を継続する予定である。
となることを示したこと。
結論
公開日・更新日
公開日
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更新日
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