免疫・アレルギー等研究に係る企画及び評価に関する研究

文献情報

文献番号
200100790A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫・アレルギー等研究に係る企画及び評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 一男(国立相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口正実(国立相模原病院)
  • 當間重人(国立相模原病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成4~6年度の厚生省アレルギー総合研究事業による調査により我が国のアレルギー疾患有病率は各世代を通じて人口の約30%であることが明らかになっている。気管支喘息発作死亡率は過去2O年間、人口10万対5~5.5人であったのが、最近特に青少年男子の死亡が増加しつつあることが明かとなり、問題となっている。また、リウマチ膠原病疾患においては、日常動作の困難に起因する患者のQOLの著しい低下が明かである。このようなアレルギー・リウマチ性疾患診断・治療の向上をめざし、発症要因、病態、難治化の予防、新規治療法の開発、さらには、発症予防等に関する研究を推進するための研究事業を適切に遂行するためには、それぞれの研究分野において諸外国に比肩しうる研究を実施するための適切な課題の設定、最適な研究者の選考、公正な研究費の配分が必要であり、さらに厳密な研究成果の評価が必要不可欠である。そのためにもアレルギー・リウマチ研究の専門家からなる評価委員会において適正かつ厳正な評価を行う必要がある。また我が国における臨床研究が基礎研究に比較して国際的に立ち遅れている原因の一つとして検討対象症例数の少ないことが挙げられている。そこで今後の我が国の臨床研究の質の向上を視野に入れて、質の高い臨床研究を実施するため国病・国療政策医療“免疫異常(アレルギー・リウマチ性疾患)"ネットワークにおいて、共通カルテ、共通初診時検査項目の作成等の基盤整備を行い、均一な多数症例を対象としたプロスペクティブ臨床研究をパイロットスタディとして立ち上げることで、国際的に比肩し得る臨床研究をめざす。
研究方法
主任研究者を事務局責任者としてアレルギー部門を分担研究者谷口正実、リウマチ研究部門を分担研究者當間重人が担当して事務局業務を行った。平成12年度から、免疫・アレルギー等研究事業はアレルギー・リウマチ性疾患研究に限定されることになり、本年度は2年目として当該研究の企画・評価等を免疫・アレルギーの専門家による事前評価委員会の指導のもと、研究協力者としてアレルギー臨床部門4名、リウマチ臨床部門4名、基礎免疫部門2名の合計10名の専門家評価小委員及び行政職評価小委員2名を委嘱し評価小委員会を構成し、平成13年度新規課題に関する一次評価実施体制を整えた。本年度は新規課題募集が例年よりも約2ヶ月遅く、平成13年3月23日に公募が締め切られた。本年度新規課題としては、(1)リウマチ及びアレルギー疾患の難治性病態に係る新規治療法の開発に関する研究、(2)リウマチ及びアレルギー疾患に係る科学的根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine)による治療方針の確立に関する研究、(3)リウマチ及びアレルギー疾患の早期診断に関する研究、(4)リウマチ及びアレルギー疾患の患者の生活の質(Quality of Life)の向上に関する研究、(5)リウマチ及びアレルギー疾患に関する研究の成果の収集及び評価に関する研究、(6)皮膚アレルギー形成機序における表皮機能の解明及びアレルギー疾患の治療に関する研究、以上6課題が公募された。これら公募課題に対して合計34編の応募があり、評価小委員による1次評価が行われ、その結果を事前評価委員会へ上申した。4月27日に事前評価委員会が開催され、審議の結果、(1)4題、(2)4題、(3)2題、(4)0題、(5)1題、(6)2題、の合計13題が平成13年度新規課題として採択された。一方本年度実施された研究課題は、平成11年度からの継続課題5課題(アレルギー部門4課題、リウマチ部門1課題)平成12年度からの継続課題6課題(アレルギー部門5課題、リウマチ部門1課題)に平成13年度からの新
規課題13課題(アレルギー部門9課題、リウマチ部門4課題)、及び指定課題としての本課題の合計25課題であった。平成14年2月12,13日に研究報告会及び中間事後評価委員会を開催し、各課題毎の書面・口頭発表報告を受け、平成13年度研究の中間事後評価を実施した。本年度は中間事後評価会議を報告会開催時に開催することで、書面評価とともに口頭発表に対する評価を重視したことにより、これまで以上に適正かつ厳正な評価が実施された。また、各研究課題についての平成13年度研究報告をまとめ、平成13年度感覚器及び免疫・アレルギー等研究事業免疫・アレルギー部門研究報告書を刊行する(5月刊行予定)。さらに昨年度と同様平成13年度に3年間の研究を終えた課題5課題(アレルギー部門4課題、リウマチ部門1課題)について、3年間の成果を一般国民に向けて情報発信すべくカラーパンフレットを作成する予定である。なお、本年度のヒューマンサイエンス振興財団による免疫・アレルギー等研究推進事業においては、外国人招聘事業2件、日本人派遣0件、リサーチレジデント6件が助成された。
具体的な年間スケジュールは以下の通りである。
平成13年
2月27日 平成13年度新規公募課題官報告示
3月23日 平成13年度新規課題公募締め切り
4月 3日 評価小委員への平成13年度新規応募課題研究計画書第1次評価依頼
4月10日    平成12年度研究報告書用各班研究報告締め切り(事務局宛)
4月27日 事前評価委員会(平成13年度新規課題採択)
9月20日    カラーパンフレット刊行
平成14年
1月 4日    研究報告会用抄録締め切り
2月12日   平成13年度研究報告会(am:リウマチ部門、pm:アレルギー部門)
2月13日   平成13年度研究報告会(am/pm:アレルギー部門)
2月13日   中間・事後評価委員会
結果と考察
免疫・アレルギー疾患研究の分野において諸外国に比肩しうる研究を実施するためには、適切な課題の設定、最適な研究者の選考、公正な研究費の配分が必要であり、さらに厳密な研究成果の評価が必要不可欠である。そのためにも免疫・アレルギー研究の専門家からなる評価委員会において適正かつ厳正な評価を行う必要がある。平成13年度実施24研究課題について、本年度は中間事後評価会議を報告会開催時に開催することで、書面評価とともに口頭発表に対する評価を重視したことにより、これまで以上に適正かつ厳正な評価が実施された。
また我が国における臨床研究が基礎研究に比較して国際的に立ち遅れている原因の一つとして検討対象症例数の少ないことが挙げられている。そこで今後の我が国の臨床研究の質の向上を視野に入れて、国際的に比肩しうる質の高い臨床研究を実施するため国病・国療政策医療“免疫異常(アレルギー・リウマチ性疾患)"ネットワークにおいて、共通カルテ、共通初診時検査項目の作成等の基盤整備を行った。質の高い臨床研究の基盤整備としての共通カルテ、共通検査項目等の策定は、全国に張り巡らされた国病・国療政策医療(拡大)ネットワークを活用する臨床研究に不可欠の整備である。一施設での個別の臨床研究では不可能である多数の患者群を対象とし、統一された研究計画に基づき治療等の質の均一な対象に対する臨床研究を遂行し得るという特色がある。さらに疫学調査の場合には、地理的には北は北海道から南は九州沖縄までほぼ日本全体を網羅する患者層を対象とし、かつ医療者側の専門性の面からも専門医による多数の患者を診療する専門施設から、非専門医による少数の当該患者を診療する一般医療施設まで非常に幅が広く包含した本ネットワークは、我が国の患者実態を反映した不偏性の高い調査フィールドとして他に例をみないものと思われる。さらにこれらにより構築される多数の患者群は、現在空洞化の危機にある我が国の新薬臨床治験実施のための質の高い均質のフィールドとして活用される可能性を有している。また本事業において実施されている喘息死調査結果の検証と今後のモニタリングシステムの構築のためのパイロットスタディとして、国病・国療気管支喘息ネットワーク施設による喘息死調査モニタリングを開始した。今後、本研究事業での各種研究報告についての検証システムとして国病・国療ネットワークが活用できれば、本研究事業成果の国民への還元が一層推進されることが期待される。
結論
本年度厚生科学研究感覚器障害および免疫・アレルギー等研究事業免疫・アレルギー部門において実施された研究課題は、平成11年度からの継続課題5課題(アレルギー部門4課題、リウマチ部門1課題)平成12年度からの継続課題6課題(アレルギー部門5課題、リウマチ部門1課題)に平成13年度からの新規課題13課題(アレルギー部門9課題、リウマチ部門4課題)、及び指定課題としての本課題の合計25課題であった。平成14年2月12,13日に研究報告会及び中間事後評価委員会を開催し、各課題毎の書面・口頭発表報告を受け、平成13年度研究の中間事後評価を実施した。本年度は中間事後評価会議を報告会開催時に開催することで、書面評価とともに口頭発表に対する評価を重視したことにより、これまで以上に適正かつ厳正な評価が実施された。しかしながら、年々実施研究課題数が増加していることから、研究報告会の開催形態や報告書の作成等についてリウマチ部門とアレルギー部門の分離等再考すべき時期にきていると思われる。国費の有効活用、成果の国民への適切な還元を常に考慮しつつ今後とも免疫・アレルギー研究分野において我が国の研究が国際的に高い評価を得るように研究体制の整備を図っていかねばならない。

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研究報告書(紙媒体)

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