文献情報
文献番号
200100765A
報告書区分
総括
研究課題名
急性中耳炎による聴覚障害発生機構の解明とその予防に関する疫学的実験的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 敏夫(社会保険中央総合病院耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
- 増田 道明(獨協大学微生物学講座)
- 竹内 直信(東京大学医学部じ耳鼻咽喉科)
- 矢野 純(日赤医療センター耳鼻咽喉科)
- 篠上 雅信(日赤医療センター耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(感覚器障害研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性中耳炎は耳鼻咽喉科で臨床的に多く遭遇する疾患の一つであり、抗生物質が発達したにもかかわらず経過が遷延、反復再発したりする例も少なくない.滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行する例もあり、治療に難渋し、難聴などの後遺症が残ることもある.感受性のある抗生剤の投与にもかかわらず、難治化、反復する原因としては、近年、発症や予後について影響を及ぼしているとされているウイルスの役割がいまで明らかではなくそれに対する治療予防が不充分なこと、低年齢での集団保育の増加や母乳栄養の減少等の環境因子の悪化してきていることなどがあげられる。
今回我々は、急性中耳炎の予後を改善し、後に聴覚障害をひきおこしていく急性中耳炎の難治例を減らしていく目的で、中耳貯留液中の呼吸器ウイルス、ヘルペスウイルス、細菌などの病原微生物、そして急性中耳炎患者をとりまくさまざまな環境因子について解析し、小児急性中耳炎の予後を規定するさまざまな因子を検索した。
今回我々は、急性中耳炎の予後を改善し、後に聴覚障害をひきおこしていく急性中耳炎の難治例を減らしていく目的で、中耳貯留液中の呼吸器ウイルス、ヘルペスウイルス、細菌などの病原微生物、そして急性中耳炎患者をとりまくさまざまな環境因子について解析し、小児急性中耳炎の予後を規定するさまざまな因子を検索した。
研究方法
小児急性中耳炎患者からの耳漏の採取、ウイルスゲノムの検索、急性中耳炎の予後調査と環境因子の解析のながれを円滑に進めるために、今年度は以下の3つテーマにわけて分担して研究をおこなった。
1.小児急性中耳炎の中耳貯留液中に存在するヘルペスウイルスゲノム
(分担研究者;増田 道明)
2.呼吸器ウイルスと小児急性中耳炎の予後
(分担研究者;竹内 直信)
3.小児急性中耳炎の予後に関与する環境因子の検討
(分担研究者;矢野 純、篠上 雅信)
1.小児急性中耳炎の中耳貯留液中に存在するヘルペスウイルスゲノム
(分担研究者;増田 道明)
2.呼吸器ウイルスと小児急性中耳炎の予後
(分担研究者;竹内 直信)
3.小児急性中耳炎の予後に関与する環境因子の検討
(分担研究者;矢野 純、篠上 雅信)
結果と考察
結果=1.小児急性中耳炎の中耳貯留液中に存在するヘルペスウイルスゲノム
小児急性中耳炎の中耳貯留液94検体をMultiplex Nested PCR法で4種のヘルペスウイルスゲノムの検索をおこなったところ、ヘルペスウイルスDNAは20検体(21%)に検出された。内訳は、EBVが10例に、CMVが5例に、HSVが4例に、VZVが4例に検出された(表2)。このうち、3例に複合感染が認められた.
いままでわれわれが検索した中耳貯留液における呼吸器ウイルス感染のデータをもとに、呼吸器ウイルス、ヘルペスウイルス、細菌感染と中耳炎の予後との関係を解析した。呼吸器ウイルスも細菌も検出されなかった検体群においては、呼吸器ウイルスか細菌が検出された検体群に比べて、有意に高い頻度でヘルペスウイルスが検出された。
2.呼吸器ウイルスと小児急性中耳炎の予後
79人の小児急性中耳炎患者から採取した93耳の中耳貯留液検体についてMultiplex-nested RT-PCR法により呼吸器ウィルスの検出結果を行ったところ、39検体(42%)に呼吸器ウィルスゲノムが検出され、内訳は、RS-Aウィルスが29症例(31%)、アデノウィルスが8症例(9%)、RS-Aウィルスとアデノウィルスの混合感染が3例(3%),インフルエンザウィルス(H3N2)が2症例、ライノウィルスが3症例であった。細菌は93耳の中耳貯留液検体中42検体に認められ、このうち、肺炎球菌は20例に、インフルエンザ菌が16例に、モラキセラカタラーリスが4例に認められらた。細菌陽性例のうち、81%に肺炎球菌もしくはインフルエンザ菌が検出されている。ウィルスRNAは51例の細菌感染陰性症例のうち、23例(45%)に、42例の細菌感染陽性症例のうち、16例(38%)に認められた。28症例30%の症例においてはウィルスRNAも細菌も検出されなかった。
初診から1ヶ月後に中耳貯留液が存在していて鼓膜が正常化しなかった例を初期失敗例とし、いったん鼓膜が正常化するも初診から1ヶ月以内に中耳炎が再燃したものを初期再燃例と定義した。そして、それらの頻度を、ウィルス単独感染、ウィルスと細菌の混合感染、細菌単独感染、細菌とウィルスとも陰性のグループに分けて検討したところ、初期失敗率、初期再燃率の両方において各群に有意の差は認められなかった。次に、急性中耳炎の中耳貯留液中に最も頻度が高く検出されたRSウィルスと同じく頻度の高い細菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌に限って予後の解析を行った。RSウィルスと肺炎球菌and/or インフルエンザ菌の混合感染においては、全年齢においては結果に有意の差を認めないものの、2才以下の年齢群においては混合感染群の方がそれぞれ単独の感染より有為に初期治療失敗率が高かった。早期再燃群、反復性中耳炎に関しては各群に有意差を認めなかった。
3.小児急性中耳炎の予後に関与する環境因子の検討
①反復性中耳炎と環境因子
年齢、性、集団保育、兄弟、母乳栄養の有無などの環境因子と反復性中耳炎の頻度との関係を検討した。2才未満では38人中13人(34%)、2才以上では23人中1人(4%)に反復性中耳炎が認められ、低年齢であることが危険因子となっていた。他の環境因子はいずれも統計学的に危険因子といえるものはなかった。
②早期再燃と環境因子
2才未満では38人中12人(32%)、2才以上では23人中2人(9%)において早期再燃が認められ、2歳未満において再燃しやすい傾向が認められたが、統計学的には有意の差ではなかった。(p=0.08)。集団保育下にある児では全年齢では31人中2人(6%)、集団保育下にない児では30人中12人(40%)が早期再燃しており、集団保育を受けていない児で早期再燃の頻度が高いという結果になった(p=0.005)。2才未満での検討でも同様で、集団保育下の児は16人中2人(13%)が早期再燃、集団保育下にない児では22人中10人(45%)と集団保育下にない児で早期再燃が多かった(p=0.03)。
③乳児院症例での検討
乳児院症例12人(全て2才以下)での反復性中耳炎、早期再燃、治療1ヶ月後の中耳貯留液の頻度について、2歳以下の乳児院症例を除いた一般児を対照として比較検討した。乳児院症例では12人中11人(92%)と、一般児での38人中13人(34%)と比較し、反復性中耳炎の頻度が有意に高かった(p=0.0017)。
④治療1ヶ月後の経過と反復性中耳炎
乳児院症例を除く63人において治療1ヶ月後の経過と反復性中耳炎の頻度を比較した。早期再燃のあった群では14人中9人(64%)、早期再燃のなかった群では47人中5人(11%)に反復性中耳炎を発症しており、早期再燃のあった群において有意に高い頻度で反復性中耳炎をおこしていた(p=0.00013)。2才以下の症例に限って検討しても、同様に、早期再燃のあった群において有意に高い頻度で反復性中耳炎をおこしていた(p=0.00022)。次に治療1ヶ月後の時点での中耳貯留液の有無によって、反復性中耳炎の頻度を比較した。全年齢での検討では、中耳貯留液の有の群で32人中12人(38%)に、中耳貯留液の無の群で31人中2人(6%)に反復性中耳炎がおこり、中耳貯留液の有の群で有意に反復性中耳炎の頻度が高かった (p=0.008)。2才以下でも同様に、中耳貯留液の有の群で有意に反復性中耳炎の頻度が高かった (p=0.004)。
考察=本研究では、小児急性中耳炎の中耳貯留液の21%においてヘルペスウイルスゲノムが検出された。ヘルペスウイルス感染と細菌、呼吸器ウイルス感染との関係を検討したところ、呼吸器ウイルスも細菌も検出されなかった群において、呼吸器ウイルスか細菌が検出された群よりも有意の高率でヘルペスウイルスが検出されことは興味深い。いままで、急性中耳炎の病原微生物は細菌と呼吸器ウイルスとされてきたが、ヘルペスウイルスも急性中耳炎において疫学的な役割をはたしている可能性が示された。
呼吸器ウイルスについては、43%の中耳貯留液検体から検出され、そのうちの73%はRSウイルスであった。小児急性中耳炎に関与するvirusはRSVが最も多いというこれまでの報告と一致するものとであった。他のvirusが分泌物に伴って受動的に中耳へいくのに対し、RSウイルスは他のウイルスに比べて、中耳に浸潤しやすいためとおもわれる。
われわれは、2歳以下の患者において、RSウイルス感染が肺炎球菌 and/or インフルエンザ菌の細菌感染に加わると、中耳貯留液が残存しやすくなり、治療後1ヶ月までに鼓膜が正常化しにくいことを示した。このことは、2才以下のRSウイルスと肺炎球菌 and/or インフルエンザ菌の混合感染群では、それぞれの単独感染より中耳滲出液のclearanceが遅れることを示唆している。このような混合感染群で治癒が遷延することについてはいくつかの報告があるが、その理由について、Chonmaitreeらはvirusと細菌の混合感染の群ではそれぞれ単独感染群より抗性剤に対する反応が悪く、炎症が遷延化するためだという。今後、急性中耳炎の遷延化を阻止するには、肺炎球菌やインフルエンザ菌のワクチンによる感染防御と同様に、2歳以下の急性中耳炎においてはRSウィルスの感染防止が重要といえる。
急性中耳炎の予後を規定している環境因子を検討では、2才以下の症例において高頻度で反復性中耳炎が認められ、さらに、治療1ヶ月後で中耳に貯留液の残る症例に反復性中耳炎が多かったことは興味深い。2才以下の患児は急性中耳炎に罹患、遷延しやすいとされており、その理由として免疫能の未成熟などが指摘されているが、われわれが前項でのべた、RSウイルスが深くかかわっているのではないだろうか。RSウイルス感染がおこり、引続き細菌感染がおこると、中耳滲出液のclearanceの遅延を引き起こし、中耳炎の遷延、反復の下地ができるのであろう。ワクチンによるRSウィルスの感染防止により、急性中耳炎の罹患率の低下や予後の改善が期待できるものと思われる。
小児急性中耳炎の中耳貯留液94検体をMultiplex Nested PCR法で4種のヘルペスウイルスゲノムの検索をおこなったところ、ヘルペスウイルスDNAは20検体(21%)に検出された。内訳は、EBVが10例に、CMVが5例に、HSVが4例に、VZVが4例に検出された(表2)。このうち、3例に複合感染が認められた.
いままでわれわれが検索した中耳貯留液における呼吸器ウイルス感染のデータをもとに、呼吸器ウイルス、ヘルペスウイルス、細菌感染と中耳炎の予後との関係を解析した。呼吸器ウイルスも細菌も検出されなかった検体群においては、呼吸器ウイルスか細菌が検出された検体群に比べて、有意に高い頻度でヘルペスウイルスが検出された。
2.呼吸器ウイルスと小児急性中耳炎の予後
79人の小児急性中耳炎患者から採取した93耳の中耳貯留液検体についてMultiplex-nested RT-PCR法により呼吸器ウィルスの検出結果を行ったところ、39検体(42%)に呼吸器ウィルスゲノムが検出され、内訳は、RS-Aウィルスが29症例(31%)、アデノウィルスが8症例(9%)、RS-Aウィルスとアデノウィルスの混合感染が3例(3%),インフルエンザウィルス(H3N2)が2症例、ライノウィルスが3症例であった。細菌は93耳の中耳貯留液検体中42検体に認められ、このうち、肺炎球菌は20例に、インフルエンザ菌が16例に、モラキセラカタラーリスが4例に認められらた。細菌陽性例のうち、81%に肺炎球菌もしくはインフルエンザ菌が検出されている。ウィルスRNAは51例の細菌感染陰性症例のうち、23例(45%)に、42例の細菌感染陽性症例のうち、16例(38%)に認められた。28症例30%の症例においてはウィルスRNAも細菌も検出されなかった。
初診から1ヶ月後に中耳貯留液が存在していて鼓膜が正常化しなかった例を初期失敗例とし、いったん鼓膜が正常化するも初診から1ヶ月以内に中耳炎が再燃したものを初期再燃例と定義した。そして、それらの頻度を、ウィルス単独感染、ウィルスと細菌の混合感染、細菌単独感染、細菌とウィルスとも陰性のグループに分けて検討したところ、初期失敗率、初期再燃率の両方において各群に有意の差は認められなかった。次に、急性中耳炎の中耳貯留液中に最も頻度が高く検出されたRSウィルスと同じく頻度の高い細菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌に限って予後の解析を行った。RSウィルスと肺炎球菌and/or インフルエンザ菌の混合感染においては、全年齢においては結果に有意の差を認めないものの、2才以下の年齢群においては混合感染群の方がそれぞれ単独の感染より有為に初期治療失敗率が高かった。早期再燃群、反復性中耳炎に関しては各群に有意差を認めなかった。
3.小児急性中耳炎の予後に関与する環境因子の検討
①反復性中耳炎と環境因子
年齢、性、集団保育、兄弟、母乳栄養の有無などの環境因子と反復性中耳炎の頻度との関係を検討した。2才未満では38人中13人(34%)、2才以上では23人中1人(4%)に反復性中耳炎が認められ、低年齢であることが危険因子となっていた。他の環境因子はいずれも統計学的に危険因子といえるものはなかった。
②早期再燃と環境因子
2才未満では38人中12人(32%)、2才以上では23人中2人(9%)において早期再燃が認められ、2歳未満において再燃しやすい傾向が認められたが、統計学的には有意の差ではなかった。(p=0.08)。集団保育下にある児では全年齢では31人中2人(6%)、集団保育下にない児では30人中12人(40%)が早期再燃しており、集団保育を受けていない児で早期再燃の頻度が高いという結果になった(p=0.005)。2才未満での検討でも同様で、集団保育下の児は16人中2人(13%)が早期再燃、集団保育下にない児では22人中10人(45%)と集団保育下にない児で早期再燃が多かった(p=0.03)。
③乳児院症例での検討
乳児院症例12人(全て2才以下)での反復性中耳炎、早期再燃、治療1ヶ月後の中耳貯留液の頻度について、2歳以下の乳児院症例を除いた一般児を対照として比較検討した。乳児院症例では12人中11人(92%)と、一般児での38人中13人(34%)と比較し、反復性中耳炎の頻度が有意に高かった(p=0.0017)。
④治療1ヶ月後の経過と反復性中耳炎
乳児院症例を除く63人において治療1ヶ月後の経過と反復性中耳炎の頻度を比較した。早期再燃のあった群では14人中9人(64%)、早期再燃のなかった群では47人中5人(11%)に反復性中耳炎を発症しており、早期再燃のあった群において有意に高い頻度で反復性中耳炎をおこしていた(p=0.00013)。2才以下の症例に限って検討しても、同様に、早期再燃のあった群において有意に高い頻度で反復性中耳炎をおこしていた(p=0.00022)。次に治療1ヶ月後の時点での中耳貯留液の有無によって、反復性中耳炎の頻度を比較した。全年齢での検討では、中耳貯留液の有の群で32人中12人(38%)に、中耳貯留液の無の群で31人中2人(6%)に反復性中耳炎がおこり、中耳貯留液の有の群で有意に反復性中耳炎の頻度が高かった (p=0.008)。2才以下でも同様に、中耳貯留液の有の群で有意に反復性中耳炎の頻度が高かった (p=0.004)。
考察=本研究では、小児急性中耳炎の中耳貯留液の21%においてヘルペスウイルスゲノムが検出された。ヘルペスウイルス感染と細菌、呼吸器ウイルス感染との関係を検討したところ、呼吸器ウイルスも細菌も検出されなかった群において、呼吸器ウイルスか細菌が検出された群よりも有意の高率でヘルペスウイルスが検出されことは興味深い。いままで、急性中耳炎の病原微生物は細菌と呼吸器ウイルスとされてきたが、ヘルペスウイルスも急性中耳炎において疫学的な役割をはたしている可能性が示された。
呼吸器ウイルスについては、43%の中耳貯留液検体から検出され、そのうちの73%はRSウイルスであった。小児急性中耳炎に関与するvirusはRSVが最も多いというこれまでの報告と一致するものとであった。他のvirusが分泌物に伴って受動的に中耳へいくのに対し、RSウイルスは他のウイルスに比べて、中耳に浸潤しやすいためとおもわれる。
われわれは、2歳以下の患者において、RSウイルス感染が肺炎球菌 and/or インフルエンザ菌の細菌感染に加わると、中耳貯留液が残存しやすくなり、治療後1ヶ月までに鼓膜が正常化しにくいことを示した。このことは、2才以下のRSウイルスと肺炎球菌 and/or インフルエンザ菌の混合感染群では、それぞれの単独感染より中耳滲出液のclearanceが遅れることを示唆している。このような混合感染群で治癒が遷延することについてはいくつかの報告があるが、その理由について、Chonmaitreeらはvirusと細菌の混合感染の群ではそれぞれ単独感染群より抗性剤に対する反応が悪く、炎症が遷延化するためだという。今後、急性中耳炎の遷延化を阻止するには、肺炎球菌やインフルエンザ菌のワクチンによる感染防御と同様に、2歳以下の急性中耳炎においてはRSウィルスの感染防止が重要といえる。
急性中耳炎の予後を規定している環境因子を検討では、2才以下の症例において高頻度で反復性中耳炎が認められ、さらに、治療1ヶ月後で中耳に貯留液の残る症例に反復性中耳炎が多かったことは興味深い。2才以下の患児は急性中耳炎に罹患、遷延しやすいとされており、その理由として免疫能の未成熟などが指摘されているが、われわれが前項でのべた、RSウイルスが深くかかわっているのではないだろうか。RSウイルス感染がおこり、引続き細菌感染がおこると、中耳滲出液のclearanceの遅延を引き起こし、中耳炎の遷延、反復の下地ができるのであろう。ワクチンによるRSウィルスの感染防止により、急性中耳炎の罹患率の低下や予後の改善が期待できるものと思われる。
結論
急性中耳炎の中耳貯留液中から、ヘルペスウイルスDNAは20検体(21%)に検出され、疫学的な検索からヘルペスウイルスが急性中耳炎の一部の症例で、病原微生物となっている可能性が示唆された。2才以下の年齢群においては、RSウィルスと肺炎球菌and/or インフルエンザ菌の混合感染群において、それぞれ単独の感染群に比べて、有意に予後が悪かった。2才以下の患児は急性中耳炎に罹患、遷延しやすく、その理由の一つとしてRSウイルス感染が深くかかわっている可能性が示唆された。ワクチンによるRSウィルスの感染防止により、急性中耳炎の罹患率の低下や予後の改善が期待できるものと思われる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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