文献情報
文献番号
200100758A
報告書区分
総括
研究課題名
神経学的アプローチによる緑内障の病態解明と治療法の開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 春樹(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新家 眞(東京大学大学院医学系研究科)
- 三嶋 弘(広島大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(感覚器障害研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
緑内障は本邦における2大失明原因の一つで、病態解明及びその有効な治療法の開発は国民医療上の急務と考える。本研究は下記の4つを柱として進行している。
① 神経保護 ② 薬物治療 ③ 神経再生 ④ 疫学
① 神経保護 ② 薬物治療 ③ 神経再生 ④ 疫学
研究方法
①神経保護
A.網膜神経節細胞死におけるグルタミン酸受容体の関与(阿部)
NMDA型受容体サブユニットノックアウトマウスの網膜神経節細胞死の解析
B.網膜神経節細胞死における神経栄養因子群の動態(阿部)
網膜内神経栄養因子の定量的解析
C.網膜神経節細胞障害モデルを用いた新薬開発(新家)
網膜障害モデルを用いた水溶性カルシウムブロッカーとカルシウム・ナトリウムチャンネルブロッカー の神経保護効果及びミューラー細胞の神経節細胞死への関与の検討
D.網膜神経節細胞死におけるグルタミンの発現及び機能(三嶋)
単離網膜神経節細胞培養系を用いたグルタミン酸受容体の電気生理学的解析
E.網膜神経節細胞死における一酸化窒素合成酵素(NOS)及び一酸化窒素(NO)の動態(三嶋)
単離網膜神経節細胞培養系のNOS発現(免疫染色)及びNO産生の解析(NO蛍光指示薬を使用)
②薬物療法
ラタノプロストの長期使用成績及びブナゾシン併用効果の検討 (三嶋)
③神経再生
A.眼球発育に関わる新規遺伝子のクローニング(三嶋)
新規遺伝子の発現パターンの解析及び発現部位の変化解析
B.イモリ再生肢の遺伝子発現解析(三嶋)
イモリ再生肢における新規細胞外マトリックス分解酵素遺伝子のクローニング
④疫学
緑内障の早期発見を目的とした眼科住民検診システムの確立(三嶋)
広島県三次市において従来の眼科検診(視力、眼圧、眼底カメラ検査)に加え、簡便な視野検査を導入し、精密検査が必要と判断された受診者に二次検診を勧告し、一次と二次検診の検査結果の関係の分析により、より効率的な健診のあり方について検討する。
A.網膜神経節細胞死におけるグルタミン酸受容体の関与(阿部)
NMDA型受容体サブユニットノックアウトマウスの網膜神経節細胞死の解析
B.網膜神経節細胞死における神経栄養因子群の動態(阿部)
網膜内神経栄養因子の定量的解析
C.網膜神経節細胞障害モデルを用いた新薬開発(新家)
網膜障害モデルを用いた水溶性カルシウムブロッカーとカルシウム・ナトリウムチャンネルブロッカー の神経保護効果及びミューラー細胞の神経節細胞死への関与の検討
D.網膜神経節細胞死におけるグルタミンの発現及び機能(三嶋)
単離網膜神経節細胞培養系を用いたグルタミン酸受容体の電気生理学的解析
E.網膜神経節細胞死における一酸化窒素合成酵素(NOS)及び一酸化窒素(NO)の動態(三嶋)
単離網膜神経節細胞培養系のNOS発現(免疫染色)及びNO産生の解析(NO蛍光指示薬を使用)
②薬物療法
ラタノプロストの長期使用成績及びブナゾシン併用効果の検討 (三嶋)
③神経再生
A.眼球発育に関わる新規遺伝子のクローニング(三嶋)
新規遺伝子の発現パターンの解析及び発現部位の変化解析
B.イモリ再生肢の遺伝子発現解析(三嶋)
イモリ再生肢における新規細胞外マトリックス分解酵素遺伝子のクローニング
④疫学
緑内障の早期発見を目的とした眼科住民検診システムの確立(三嶋)
広島県三次市において従来の眼科検診(視力、眼圧、眼底カメラ検査)に加え、簡便な視野検査を導入し、精密検査が必要と判断された受診者に二次検診を勧告し、一次と二次検診の検査結果の関係の分析により、より効率的な健診のあり方について検討する。
結果と考察
①
A.NMDA型受容体ε1サブユニットノックアウトマウスで網膜神経節細胞死が減少を認めた。また、慢性緑内障 モデルを作製し、自作水銀眼圧計で眼圧を正確に測定できることを確認した。
B. 高眼圧負荷により網膜においてBDNFが大きく変化していることを定量した。
C. イガニジピンはカイニン酸による網膜神経障害に対し神経保護効果を認めたが、Pylidoxal hydrochlorideは神経保護効果を認めなかった。また、低酸素ストレス及び高圧ストレスにおいて、培養ミューラー細胞では神経栄養因子発現の抑制が認められた。
D.単離培養神経節細胞において神経ステロイドのひとつであるエクソダインはNMDA誘発電流を濃度依存性に抑制した。
E. 単離培養網膜神経節細胞において、nNOS, eNOSの局在が認められた。また、NOSの阻害剤によりNO合成は有意に抑制され、このとき合成されるNOはnNOSによって合成されることが証明された。
②
ラタノプロストは全ての経過においてウノプロストンより有意な眼圧下降効果を認めた。
また、ブナゾシンの併用で眼圧は有意に下降した。
③
A.眼球発育期の新規遺伝子は網膜特異的な発現が示唆され、生後10日頃には抑制されていた。また、この新規遺伝子の全塩基配列をGENEBANKで公開した。
B.イモリマトリックス分解酵素遺伝子は再生肢の先端部分にできる傷上皮の基底部で発現が認められた。
④
眼底検査により緑内障を指摘された者の内、視野異常を認めたものは90%であった。また、高眼圧を指摘された者のうち、視野異常を認めたものは7%であった。
A.NMDA型受容体ε1サブユニットノックアウトマウスで網膜神経節細胞死が減少を認めた。また、慢性緑内障 モデルを作製し、自作水銀眼圧計で眼圧を正確に測定できることを確認した。
B. 高眼圧負荷により網膜においてBDNFが大きく変化していることを定量した。
C. イガニジピンはカイニン酸による網膜神経障害に対し神経保護効果を認めたが、Pylidoxal hydrochlorideは神経保護効果を認めなかった。また、低酸素ストレス及び高圧ストレスにおいて、培養ミューラー細胞では神経栄養因子発現の抑制が認められた。
D.単離培養神経節細胞において神経ステロイドのひとつであるエクソダインはNMDA誘発電流を濃度依存性に抑制した。
E. 単離培養網膜神経節細胞において、nNOS, eNOSの局在が認められた。また、NOSの阻害剤によりNO合成は有意に抑制され、このとき合成されるNOはnNOSによって合成されることが証明された。
②
ラタノプロストは全ての経過においてウノプロストンより有意な眼圧下降効果を認めた。
また、ブナゾシンの併用で眼圧は有意に下降した。
③
A.眼球発育期の新規遺伝子は網膜特異的な発現が示唆され、生後10日頃には抑制されていた。また、この新規遺伝子の全塩基配列をGENEBANKで公開した。
B.イモリマトリックス分解酵素遺伝子は再生肢の先端部分にできる傷上皮の基底部で発現が認められた。
④
眼底検査により緑内障を指摘された者の内、視野異常を認めたものは90%であった。また、高眼圧を指摘された者のうち、視野異常を認めたものは7%であった。
結論
①
A.NMDA型受容体ε1サブユニットが神経節細胞死に関与していることが示された。慢性緑内障モデルにおいても同様の結果が得られれば、選択的サブユニット阻害剤の開発により神経保護効果を期待できる。
B. 高眼圧負荷により網膜においてBDNFが大きく変化していることから、神経栄養因子群の発現増強を介した新たな治療薬開発にも発展させることが可能である。
C.イガニジピンは網膜神経障害に対し神経保護効果を認め、今後臨床使用に向け開発が期待される。また、低酸素ストレス及び高圧ストレスはミューラー細胞の神経栄養因子発現を抑制することが明らかとなった。
D.エクソダインはグルタミン酸受容体を抑制的に調節する作用があるため、神経保護作用を持つ可能性がある。
E.緑内障におけるグルタミン酸細胞毒性には神経節細胞内でグルタミン酸―NO経路が関与していることが示唆された。
②
ラタノプロストはウノプロストンより眼圧下降効果は優れている。また、ブナゾシンの追加は眼圧下降に有用である。
③
A.新規遺伝子は網膜のみならず眼球全体の発育、分化に関与している可能性が示唆された。ヒト未分化な細胞への導入による分化様式を見ることで眼球奇形などの先天性遺伝性疾患の解明につながると考えられる。
B. in situ hybridizationでもシグナルが確認され、肢の再生にこの新規細胞外マトリックス分解酵素が関与していることが考えられる。今後はこの遺伝子を用いて、タンパク質を発現させ酵素活性の確認を行おうと考えている。
④
視野検査は緑内障の発見に有用であったが、眼圧検査のみで緑内障を発見するのは困難であった。
A.NMDA型受容体ε1サブユニットが神経節細胞死に関与していることが示された。慢性緑内障モデルにおいても同様の結果が得られれば、選択的サブユニット阻害剤の開発により神経保護効果を期待できる。
B. 高眼圧負荷により網膜においてBDNFが大きく変化していることから、神経栄養因子群の発現増強を介した新たな治療薬開発にも発展させることが可能である。
C.イガニジピンは網膜神経障害に対し神経保護効果を認め、今後臨床使用に向け開発が期待される。また、低酸素ストレス及び高圧ストレスはミューラー細胞の神経栄養因子発現を抑制することが明らかとなった。
D.エクソダインはグルタミン酸受容体を抑制的に調節する作用があるため、神経保護作用を持つ可能性がある。
E.緑内障におけるグルタミン酸細胞毒性には神経節細胞内でグルタミン酸―NO経路が関与していることが示唆された。
②
ラタノプロストはウノプロストンより眼圧下降効果は優れている。また、ブナゾシンの追加は眼圧下降に有用である。
③
A.新規遺伝子は網膜のみならず眼球全体の発育、分化に関与している可能性が示唆された。ヒト未分化な細胞への導入による分化様式を見ることで眼球奇形などの先天性遺伝性疾患の解明につながると考えられる。
B. in situ hybridizationでもシグナルが確認され、肢の再生にこの新規細胞外マトリックス分解酵素が関与していることが考えられる。今後はこの遺伝子を用いて、タンパク質を発現させ酵素活性の確認を行おうと考えている。
④
視野検査は緑内障の発見に有用であったが、眼圧検査のみで緑内障を発見するのは困難であった。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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