野生げっ歯類及びダニ類に由来する感染症の予防、診断及び疫学に関する研究

文献情報

文献番号
200100686A
報告書区分
総括
研究課題名
野生げっ歯類及びダニ類に由来する感染症の予防、診断及び疫学に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
高島 郁夫(北海道大学)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎琢也(長崎大学)
  • 水谷哲也(北海道大学)
  • 苅和宏明(北海道大学)
  • 有川二郎(北海道大学)
  • 辻正義(酪農学園大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダニ媒介脳炎、ハンタウイルス感染症とバベシア症について、精度の高い診断法を確立し、疫学調査を実施し、国内の汚染地の特定とヒトにおける感染状況の解明に努める。またロシアシベリア、極東地区における疫学調査を実施する。さらにこれらの感染症の発症機序を解明し、ワクチン(ダニ媒介脳炎)による予防法を確立する。
研究方法
遺伝子組換え技術を用いてウイルス抗原を発現させ、この抗原を用いたELISAによる血清学的診断法を確立する。国内およびロシアにおいて疫学調査を実施し、マダニ類、野生げっ歯類および患者から病原体を分離する。病原体の遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹解析を行う。ダニ媒介脳炎ウイルスの既存のワクチンの効果を評価する。
結果と考察
ダニ媒介脳炎:シベリアと極東ロシアに分布するダニ媒介脳炎ウイルス株の性状を解析した。この結果、極東型ウイルスに加え新しいシベリア型ウイルスの存在が明かとなった。シベリア型ウイルスは極東型ウイルスよりマウスに対する病原性が強かった。ダニ媒介脳炎ウイルスヨーロッパ型のワクチンを近年流行しているシベリア型および極東型のウイルスに対して有効か否か調べた。本ワクチンが極東型およびシベリア型の流行株に対して有効であることが、ヒトの中和抗体産生とマウスにおける防禦試験において示された。
ハンタウイルス感染症: 由来のラクトフェリンとリバビリンのin vitoroとin vivoにおける抗ハンタウイルス作用について調べた。リバビリンはウイルス感染後に作用点を持ち、ラクトフェリンはウイルスの細胞への吸着時に作用することが判明した。ハンタウイルスの組換え核タンパクを用いた血清学的鑑別診断法を開発を試みた。異る血清型のウイルス核タンパクの各種切断物をバキュロウイルス系を用いて発現させ抗原としたELISA法による抗体測定に応用したところ異る血清型ウイルスの感染を鑑別できることが判明した。
バベシア症:日本で最初のヒトのバベシア症の感染源を決定するため研究を行った。患者へ血液が献血された不顕性感染者の血液から人血液に改変した SCIDマウスを用いてバベシア原虫を分離し感染源を明らかにした。さらに血液献血者の居住地周辺のアカネズミからバベシア原虫を分離し病原巣動物を同定した。
結論
ダニ媒介脳炎についてはロシアイルクーツク地区に新種のシベリア型ダニ媒介脳炎ウイルスが分布しており、極東型のウイルスより病原性が強かった。これらの近年流行しているダニ媒介脳炎ウイルスに対してヨーロッパ型のワクチンが効果があることが判った。リバビリンとラクトフェリンがハンタウイルスに有効であることが判明した。ハンタウイルスの組換え核タンパクを用いたELISAによる精度の高い鑑別血清診断法を開発した。ヒトのバベシア感染症初発例の感染源は不顕性感染者の輸血によること、病原巣動物はアカネズミであることを示した。

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