感染症発症抑制に関わるヒトB細胞由来抗体の作製

文献情報

文献番号
200100680A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症発症抑制に関わるヒトB細胞由来抗体の作製
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
垣生 園子(東海大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹腰正隆(東海大学医学部)
  • 関川巌(順天堂大学医学部)
  • 瀧孝雄(大塚製薬株式会社分子医科学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(人工血液開発研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病原体やその産物が引き起こす様々な生体の病的反応は、抗体で阻止できすことが動物実験から明らかとなっている。従って、それら病原体に対するモノクロナール抗体(Mab)の臨床応用が期待されているが、実用に際しては、以下のような障害がある。(1)マウス・ヒトのキメラ抗体やマウス抗体からのヒト型化の作製も進んでいるが、現存するMabの多くはマウス部分を残している。従って、安全性や効率の面から問題がある。(2)病原体は種類によっては激しく変位を起こすので、単に病原体の構造タンパク質に対する抗体では、有効である保証はない。昨年までの研究プロジェクトにより、ヒト造血幹細胞を用いたヒト免疫系を再構築したモデル動物を開発してきた。これを用いて(1)の課題は基本的に克服できると考えられた。また、感染症の症状は示さないが病原体に反応する抗体のキャリアー血清を利用して、生物活性の高い抗体を誘導するエピトープを決定することで(2)の問題に挑戦し、それらエピトープに基づいて作製した合成ペプチドを、ヒト免疫系再構築マウスに免役して感染防御と治療に有効なヒト型抗体の作製を目指している。本年度は、患者血清からの血清収集とスクリーニングおよびそれを基盤に合成ペプチ作製をおこなう。また一方では、より良い抗体産生ができるモデルマウスの改良も続ける。
研究方法
(1)無症候キャリアー血清のスクリーニング:熱帯熱マラリア感染者で無症候者の血清は、Mahidol大学付属病院から相川教授の協力の下に提供された。(2)抗体認識エピトープの決定:ファージペプチドランダムライブラリーを用いて、熱帯熱マラリア患者血清から分画したIgMとIgGと反応するクローンをスクリーニングし、陽性クローンを大腸菌に感染させて増幅した後、再度患者血清と反応させて特異性と確認した。(3)HERV clone-4発現SLE患者の検索:human endogenous retrovirus family のサブクローンであるHERV clone-4の発現はSLEと密接な関連があることが指摘されている。一方、HERV clone-4対する抗体はHIVと交叉反応することが示唆されているので、抗HERV clone-4抗体をもつ患者血清をの存在をスクリーニングする手段として、同遺伝子の発現をRT-PCRで検索した。(4)ヒト幹細胞の移植による免疫系再構築モデルの改良:これまでのプロジェクトで使用してきたNOD-SCIDマウスに、IL-2Rg KOマウスを交配して最近樹立されたTおよびB細胞の他にNK細胞が欠如したNOGマウスをレシピエントとして使用した。移植するヒト幹細胞は昨年までと同様の条件で得た。このキメラマウスにおける免疫系の再構築の解析は、flowcytometryによっておこなった。
結果と考察
本年度の研究では、無症候熱帯熱マラリア患者の血清が先行して提供されたので、それらを利用して生物活性をもつ抗体が認識するエピトープ解析を、マラリアで集中的に進めた。その結果複数の該当するペプチドを決定することができた。それらは、8量体として合成し、免疫原としての性状を保有するかを通常マウスに免疫してその抗原性をチェックした後、他の分担者によって開発されたヒト免疫系再構築NOG モデルマウスに免疫する予定である。一方、HIVと交叉反応することが指摘されているHERV clone-4に対する抗体の存在は、HERV clone-4 gag分子の全長が得られなかったので、Western blottingによる陽性が明確に示せなかったため、直接証明ができなかった。その代替として、今回はHERV clone-4がSEL患者のみに発現することを示したが、次年度は抗体を直接証明し、抗HERV clone-4抗体の認識エピトープの同定とそれに対するヒト抗体を作
製する方向に進展させる予定である。NK細胞の完全欠如したNOD-SCIDマウスを利用することによってヒトT細胞の分化増殖が改良されたことを示す今回の成果は、今後ヒトB細胞由来の抗原特異的抗体作製に有用であり、その成功に期待がもたれる。
結論
熱帯熱マラリアの無症候キャリアーから得た血清を、ファージペプチランダムドライブラリーによってスクリーニングし、マラリア原虫と反応する抗体が認識するペプチドを複数決定した。従って、これらペプチドは生物活性のある抗マラリア機能をもつ有効なヒト抗体作製の免疫源となる可能性をもつ。一方、HIV感染に有用な抗HIV生物活性を有することが示唆されている抗HERV clone-4抗体の検出はSEL患者血清で直接できなかったが、SEL 患者ではHERV clone-4遺伝子が特的に発現していることを、mRNAレベルで証明した。この結果は、今後HERV clone-4特異的抗体の明確な検出を進めるに当たって、1つの指標となる。以上、生物活性をもつ抗体が認識するエピトープを免役してヒト型抗体を作製するために、有用なモデル開発をNOGマウスを用いて開発した。

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