半導体型ガンマカメラの医学的意義の研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100670A
報告書区分
総括
研究課題名
半導体型ガンマカメラの医学的意義の研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
久保 敦司(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井博史(慶應義塾大学医学部)
  • 尾川浩一(法政大学工学部)
  • 森一生(東芝医用システム社)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
7,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
半導体型ガンマカメラの臨床医学分野への応用の可能性を検討することを目的とする。東芝医用システム社と共同で開発中の半導体素子CdTeを用いたガンマカメラの臨床医学領域で有用性の評価を最終目的とするが、今年度は、装置の設計にあたって、現在、利用が可能な半導体素子を使用したガンマカメラを用いて、その有用性を調査した。特に、可搬型半導体検出器の導入が期待されているセンチネルリンパ節(SLN)検索を中心に検討を進めた。
研究方法
半導体素子を使用したガンマカメラとして、Digirad 2020tc ImagerTM (Digirad, San Diego)とeZ scope(安西メディカル、東京)を用いて、従来型ガンマカメラToshiba GCA7200A/DI(東芝、東京)との比較を交え、センチネルリンパ節の描出能を中心に検討を進めた。
両装置ともに(1)検出可能なradioactivity、(2)ファントムを用いてのSLNの検出能について検討した。
模擬線源として、投与部位のRIを模した主線源とSLNを模した線源とを用いた。主線源として、74MBqあるいは 7.4MBqの99mTc 1mlを封入したものを作成した。SLN線源は、主線源の1%あるいは0.1%のradioactivityとなるように、740kBq, 74kBq, 7.4kBqの99mTc 0.1mlを封入したものを用いた。
主線源とSLN線源を同一平面上において、線源間の距離を0~5cmに変化させて、配置した。半導体カメラを線源の直上2cmのところに固定し、撮像した。
撮像時間は、Digirad 2020tc ImagerTM では、5分間とした。eZ scope では10秒としたが、この時間で描出が困難な場合は、15秒、30秒に延長して撮像した。 
得られた画像でのSLNの描出については、両線源の中心を結ぶ線上のカウント値をプロフィール曲線の形で示し、両線源の間に、SLN線源のカウント値の20%以上のカウントの低下があった場合に、SLN線源が認識可能と判断した。
結果と考察
Digirad 2020tc ImagerTMは、単独線源の撮像では、7.4kBqの線源の描出が可能であった。
主線源を近傍に置いたSLN検索を模した撮像では、SLNに主線源の1%のradioactivityの移行がある場合には、線源から1cmの距離にある74kBqのradioactivityが描出でき、実地診療への応用が可能であることが示された。移行率が0.1%の場合は、線源の描出には、線源からの距離が5cm以上であることが必要であったが、これは、従来型ガンマカメラと同程度の検出感度であった。
eZ scopeでは、単独線源は、74kBqの線源が10秒以内に描出できることが確認できた。
主線源を近傍に置いたSLN検索を模した撮像では、SLNに主線源の1%のradioactivityの移行がある場合は、2cmの距離で十分な線源の描出が確認できた。
しかし、線源を水中に沈めての撮像実験では、SLNに主線源の1%の良好なradioactivityの移行がある場合においても、SLN線源の描出には、5cmの距離を要した。空中での実験で、比較的良好な分解能が得られたことから、この結果は、検出器自体の感度の問題ではなく、装置に装着しているコリメータの性能の問題であると考えられた。
Digirad 2020tc ImagerTMは、従来型のアンガー型ガンマカメラの光電子増倍管以後を半導体素子に置き換えたポータブルタイプのガンマカメラである(検出器17kg、本体160kg)。シンチレータとしてCsI(Tl)を、半導体素子として3mm角シリコン光ダイオードを使用している。この素子を64個×64個に配置した検出器(Useful field of view (UFOV) 20.8cm×20.8cm)が搭載されている。このため、比較的広い範囲の撮像が可能であるが、ガンマ線の1次検出にシンチレータが使用されているため、分解能などの物理学的特性は、従来型の装置を超えることは難しいと考えられた。事実、今回の実験の結果からも、SLN線源の描出能は、シンチレーションカメラと同程度であった。しかし、検出器部分が小型軽量化されているため、臨床症例においては、撮像方向の制限が少なくなり、体表への近接が容易となる利点が得られることが示唆された。
eZ scopeは、半導体素子として2mm角のCdZnTeを16個×16個に配置した検出器(UFOV 3.2cm×3.2cm)を有した超小型のガンマカメラである(重量800g)。この検出器は、撮像範囲が極めて狭いものの、検出器全体が半導体素子で構成されていることが特徴であり、物理学的特性もシンチレーションカメラを超えるものが期待できる。
今回の検討の結果から、この検出器の感度は高く、10秒単位の撮像で、SLNの画像化が可能であった。しかし、SLNのactivityが主線源の0.1%の場合には、30秒の撮像が必要な場合もあった。検出器の感度を高めることと、散乱線の影響を抑制し、コリメーションを改善することとは相反するが、線源を水中に沈めて撮像した場合(深部臓器の撮像に相当する)、線源の描出能が劣化することから、コリメータの改善は今後検討が必要と考えられる。
結論
現在、利用可能である半導体素子を使用したガンマカメラは、撮像条件に制限があるものの、一般的な撮像条件で、従来型のシンチレータ、光電子増倍管を使用したガンマカメラと同等あるいはそれ以上のガンマ線検出感度、分解能を有している。さらに、両装置の重量は、従来型ガンマカメラより、はるかに軽量であり、搬送可能である。このため、現在、シンチレータを利用しているガンマ線の検出部分を含めた検出器全体を半導体素子に置換し、撮像範囲が実用上十分に広いガンマカメラを作成することは、核医学検査の診断能の改善につながり、さらに核医学検査の臨床応用範囲の拡大にもつながるものと考えられる。

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