磁気応用診断・治療機器装置の開発及び肺癌診療への適用(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100668A
報告書区分
総括
研究課題名
磁気応用診断・治療機器装置の開発及び肺癌診療への適用(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
垣添 忠生(国立がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 小林寿光(国立がんセンター)
  • 荒井賢一(東北大学電気通信研究所)
  • 角美奈子(国立がんセンター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
手術にかわる内視鏡やカテーテルを使用した低侵襲の診断、治療手技は、技術難度が高いために標準化が妨げられている。これらの器具の誘導または誘導の補助を行う磁気応用診断・治療機器装置を開発することで、低侵襲の医療手技の技術難度と侵襲を低減し、精度と効果、安全性を向上させ、標準化に寄与する。
まず各種医療手技に対する磁気誘導の可能性を評価し、誘導実験を行うことで、磁気応用診断・治療機器装置に必要な仕様を作成する。この仕様を基に、医療用磁気応用診断・治療機器装置の基本装置を製作する。
研究方法
1.カテーテルの誘導実験
カテーテル等を使用したこれまでの医療手技が、磁気誘導により可能であることを検証した。
プラチナ磁石(1×6mm)をガイドワイアー(Boston Scientific, MICROVASIVE, JagwireTM, 0.038inch, 260cm)の先端に装着し、磁気誘導カテーテルを製作した。これを気管支内(全麻下の豚)に挿入し、位置をCアームX線透視装置で確認しながら、2軸ヘルムホルツコイル(0.6kOe/磁極間200mm)を使用して誘導した。
気管支鏡を使用しても通常誘導が難しい肺尖を含め、目的の部位に0.6kOeまでの平行磁場を使用して誘導可能であった。またガイディングカテーテル(Boston Scientific, TARGET, GuiderTM SoftipTM, 9Fr, STRAIT, 0.099inch)を併用することで、生検鉗子(Boston Scientific, MICROVASIVE(r), Pulmonary Biopsy Forceps, RADIAL jaw(r))、電気凝固用プローブ(Boston Scientific, MICROVASIVE(r), Goldprobe 210cm, 2.3mm, 7Fr.)、動脈瘤用コイル(Boston Scientific, TARGET, IDCTM, INTERLOKING COIL, コイル外径4mm, コイル部を直線にして4cm、コイルの外径0.381mm/0.015in.)を、目的の部位に挿入することが可能であり、目的の手技が施行可能であった。
以上より磁気誘導ガイドワイアーを製作してガイディングカテーテルと併用すれば、0.6kOeまでの平行磁場を発生できる磁気誘導装置を使用して、これまでの医療手技が可能であることが検証された。
X線透視画像が磁気の影響で著しく乱れる現象が確認されが、光電子増倍管または撮像管が原因であると考えられた。
2.X線透視画像への磁気作用の検証
磁気に影響されないCCD系固体撮像素子と光電子増倍管、撮像管と光電子増倍管の2種類のX線透視系を用意し、X線透視に対する磁気の影響を検証した。
磁界の発生に空芯コイル(ソレノイドコイル)を使用した場合は、0.9AでいずれのX線透視系でも画像が乱れた。漏れ磁束を減じる閉磁路構造の鉄芯コイルを使用し、コイル直上に光電子増倍管を置いて、3Aで磁極間(65mm)に0.78kOeの磁場を発生させた場合は、漏れ磁束は光電子像倍管の表面で0.005kOeであり、いずれのX線透視系でも透視画像は実用可能範囲内であった。
以上より画像劣化の原因は光電子増倍管である考えられ、磁気誘導装置には閉磁路構造が必要であると考えられた。
3.内視鏡誘導実験
磁気誘導装置に必要な磁場強度を決定するために、誘導を行う医療器具として最大のものを消化器内視鏡と想定して誘導実験を行った。
内視鏡を改造せずに誘導する方法として、内視鏡の先端に被せる磁気誘導キャップと処置チャンネルに挿入する磁気誘導ガイドワイアーを考えた。12×6mm(内径7mm)のリング状ネオジウム鉄ボロン磁石を3個連結して、磁気誘導キャップを製作した。磁気誘導ガイドワイアーは、5×3.5mmのネオジウム鉄ボロン磁石を3個連結して、ガイドワイアー(Boston Scientific, MICROVASIVE, JagwireTM, 0.038inch, 260cm)に装着して製作した。消化器内視鏡は、Pentax FG34W(先端硬性部径:11.5mm、処置チャンネル径:3.8mm)を使用した。
磁気誘導キャップを装着した場合には、0.6kOeの平行磁場で誘導可能であった。磁気誘導ガイドワイアーでは4kOe以上の平行磁場が必要であった。
以上から、普及を目的とした標準型磁気誘導装置では0.6kOe、医療手技の高度な補助と磁気医療の開発のための装置には、4kOe以上の磁場強度を必要とすることが確認された。
4.磁気誘導装置の製作
三次元的な磁場を発生する8極磁気誘導装置の基本構造である、4極磁気誘導装置の1/2モデルを製作した。100A通電時の磁場強度は3.724kOe(磁極間隔:150mm)、0.835kOe(磁極間隔:600mm)であったが、補助ポールチップを磁極先端に装着して磁極直径を60mmから150mmとすることで、約4.1kOeの磁場強度を得ることができた。
普及を目的とした外径350mmのポータブル型盤状磁気誘導装置では、磁極中心から150mmの距離で0.68kOeを発生することができた。
臨機応変の使用と一層早期の普及を目的に、更に簡便なハンディー型盤状磁気誘導装置を製作した。300mm(径)×50mm(厚さ)、約10kgで、磁極表面から100mmの位置で0.3kOeを発生することが可能であった。
結果と考察
既存の医療器具を大きく変更することなく、磁気誘導により既存の医療手技が補助されることが示された。磁気のX線透視への影響は、閉磁路構造をとることで解決可能であった。必要な磁場を発生する具体的な磁気誘導装置も、普及、開発に配慮して製作された。
今後、4極磁気誘導装置を対向させた8極磁気誘導装置を製作し、三次元的磁場を発生させることで研究開発は促進されると考えられる。X線透視画像の劣化の問題は、近い将来の直接型平面型X線検出器の登場で根本的に解決され、磁気誘導装置開発の自由度を向上すると考えられる。更に磁気誘導の特徴を生かした、新たな低侵襲で高度な医療手技および医療概念が開発される可能性があり、機器の開発と併せて医療の開発を進めることが重要であると考えられる。
結論
磁気誘導装置は内視鏡やカテーテルを使用した医療手技を補助し、今後の研究開発の進行によってカテーテルや内視鏡を使用した低侵襲の医療手技の、難度と侵襲を低減し、精度と効果、安全性を向上して、高度な医療手技の標準化に寄与すると考えられる。

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