術中にがんを可視化することで、5年生存率を20%向上させるシステムの臨床開発に関する研究

文献情報

文献番号
200100667A
報告書区分
総括
研究課題名
術中にがんを可視化することで、5年生存率を20%向上させるシステムの臨床開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
伊関 洋(東京女子医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 村垣善浩(東京女子医科大学)
  • 丸山隆志(東京女子医科大学)
  • 川俣貴一(東京女子医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性脳腫瘍特に悪性神経膠腫(グリオーマ)の予後は不良である。外科的摘出が最も確実な治療法であるが、グリオーマでは正常と腫瘍との境界が不明瞭であるため摘出が不充分になることが多い。腫瘍のみを正確に摘出するためには腫瘍を可視化するシステムの開発を目的とした。
研究方法
術中MRIにより術中に脳などの臓器移動の状態を見ながすることができるため、腫瘍の取り残しの無い手術が可能となる。術中画像データを必要に応じて、常にリフレッシュするリアルタイムアップデートナビゲーションの併用により、98から100%の切除率が期待できる。わずか、95%と100%の差は5年生存率では、約20%の差となるのである.腫瘍の全摘出が可能となれば、放射線療療や科学療法による副作用も大幅に減らすことが可能となる.光化学物質の一つである 5 アミノレブリンサン(5-ALA)を利用した悪性脳腫瘍可視化システムと紫外光照射と5ALA取り込みによる発光を可視化できる高画質立体ビデオ顕微鏡を組み合わせ臨床試用した.
結果と考察
覚醒下手術とオープンMRIおよびリアルタイムアップデートナビゲーションにより、術前後で精密に計測し得た21症例の悪性腫瘍患者にオープンMRI下の腫瘍摘出術を行い、90.3%の高い摘出率を達成できた.また,Hivision方式を用いた高画質立体ビデオ顕微鏡、術中MRI、ナビゲーション技術(術者道具の位置同定システム)、そして5ALAによる腫瘍可視化、これらの実用的融合により悪性脳腫瘍の全摘出を可能にするシステムの臨床試用を行った。
5-ALA(5-Aminolevulinic Acid)を用いて脳腫瘍を染色、可視化することで残存腫瘍の存在と部位を簡便かつ即時的に確認できる優れた方法であるが、以下の問題点がある。1、蛍光確認には手術用顕微鏡をOffにするため発光部位の確認が時に困難、2、蛍光確認が肉眼のため定量的評価が困難である。
結論
5-ALA蛍光同定装置と術中MRI立体画像の重畳可能な手術用顕微鏡を開発し、手術顕微鏡画像と5ALA発光画像と術中MRI画像とを一画面に重ね合わせて表示することにより、従来は迅速病理検査によってしか判別できなかった正常と腫瘍との識別を、術中リアルタイムに行う新たな"ケミカルナビゲーション"システムを構築した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)