文献情報
文献番号
200100660A
報告書区分
総括
研究課題名
重症糖尿病に対するバイオ人工膵による皮下移植治療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
井上 一知(京都大学 再生医科学研究所 器官形成応用分野)
研究分担者(所属機関)
- 清野 裕(京都大学 大学院 医学研究科 病態代謝栄養学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
18,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
糖尿病に対する根本的かつ普遍的な治療法の確立は緊急課題と位置付けられている。これに対し膵臓器移植や膵島細胞移植が有効な方法と考えられているが、絶対的なドナー不足、免疫抑制剤の長期使用など克服すべき問題も多く、新たな治療法の開発が望まれている。このため、我々は高機能バイオリアクター調製技術や免疫隔離膜技術を応用し、バイオ人工膵を開発し、これを用いたより簡便で低侵襲性の再生膵島細胞移植治療システムを確立し、その臨床応用を目指している。
研究方法
糖尿病モデル動物はマウス、ラットなど小動物やイヌにおいて主にストレプトゾトシン(STZ)やアロキサンを用いて作製した。血管新生誘導は塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を含んだ徐放デバイスを用い、皮下あるいは腹腔内で検討した。血管新生誘導後に膵島細胞を移植し、血液生化学的、組織化学的検討などを行った。高機能バイオリアクター細胞としてブタ膵内分泌細胞をコラゲナーゼ消化法と自己消化法を組み合わせた方法で分離し、培養した。また、免疫隔離はポリスチレンスルホン酸(PSSa)、アガロースやポリブレンなどを用い、3層型デバイスを作製し、これに膵島細胞を封入したカプセル化膵島細胞で検討した。
結果と考察
①大動物糖尿病モデルにおけるバイオ人工膵の臨床応用に向けた検討にも着手した。さらに、bFGF徐放デバイスを用いた血管新生誘導を応用し、糖尿病モデル動物でのバイオ人工膵移植に先立つ環境改善法を皮下部位においても確立した。また、これら血管新生誘導前処置後に皮下異種移植した膵島細胞に関しても生体内での生着や機能性を確認し、簡便で低侵襲な治療法の提供が示唆された。②ブタ膵内分泌細胞の大量分離法の開発に成功し、カプセル化したこの細胞を異種移植した後の生着や機能性も確認済である。さらに、幹・ES細胞から生体内でも機能する膵島様クラスターへの分化誘導にも成功し、移植ドナー不足に対する解決策が示された。③バイオ人工膵移植に用いるデバイスの改良を検討し、3層型マクロロッドタイプ移植デバイスの有効性を異種移植モデルで確認した。さらに新しいタイプの移植デバイスの開発を実施すると共に、これら免疫隔離デバイスの機能評価に対してIL-1βやiNOSが指標となり得ることを見出した。
結論
bFGFによる血管新生誘導前処置が、膵島細胞皮下移植で有効であること、ブタ膵島細胞大量調製やES細胞から膵島細胞を調製することの有用性、さらには免疫隔離デバイスの高機能化など、得られた成果を組み合わせ、根本的かつ普遍的な糖尿病皮下移植治療法が確立できる日は近いと思われる。
公開日・更新日
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