文献情報
文献番号
200100658A
報告書区分
総括
研究課題名
中長期使用のための小型・高性能補助人工心臓システムの開発と製品化(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
妙中 義之(国立循環器病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 巽英介(国立循環器病センター研究所)
- 築谷朋典(国立循環器病センター研究所)
- 小西義昭(日機装株式会社)
- 村井剛次(日機装株式会社)
- 増澤徹(茨城大学工学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は体内に埋め込んで数ヶ月から一年連続使用可能な補助人工心臓システムを可能な限り早急に開発し,製品化することである.
研究方法
遠心型血液ポンプを用いた埋込型左心補助人工心臓システムの完成を目指して,抗血栓性の向上と同時に体内埋込時の解剖学的適合性の向上を目的として新たに開発した薄型構造をもつ遠心血液ポンプの改良,評価を行った.抗血栓性の向上を目的とした両吸込型遠心血液ポンプについては,ポンプ性能の向上を目指した流路設計の改良,流路と一体化されたモータ部分製作法の開発を行った.さらに,水力学的性能,ポンプによる血球破壊量など補助人工心臓としての基本性能の評価,体内埋め込み時の解剖学的適合性評価,ならびに覚醒状態下の慢性動物実験による補助人工心臓としての総合的評価を行った.QOL向上のために必須である体内二次電池システムについては,二次電池と経皮的伝送システムの回路部を一体化した電源パックに関して,体内埋め込み使用時に問題となっていた充電時の発熱の問題を克服するために,充電方式の検討を行なった.
結果と考察
遠心ポンプ内で生じやすいインペラ底部における血栓形成を防止するため,流入口を二分割しインペラの両面から流入させることで上記のような血栓好発部位を除去したポンプの設計を行った.一方,体内埋め込み使用される補助人工心臓は,腹壁に沿って設置される場合が多く,解剖学的観点からは,ポンプ寸法に関して軸長を可能な限り小さくとる薄型構造が好ましいと考えられる.本ポンプは,モータを構成するコイルの間隙に流路を配置するという他に類を見ない一体化構造をとっているため,ポンプの軸方向の寸法はわずか41mmであり,体内埋め込みに適した形状である.流入口については,口径に関する検討を加え,当初3mmとしていた口径を5mmに拡大することで,大幅にポンプ性能を改善し,左心補助心臓としての標準的な運転状態の所要回転数を500rpm程度軽減することに成功した.また,成ヤギの新鮮血を用いて流量5L/min, 発生圧力100mmHgの条件下で溶血試験を行った.ポンプによる溶血量は,溶血指数(NIH)に換算して0.005と十分低値であり,ポンプによる血球破壊の観点からも実用的であると考えられた.慢性動物実験として当施設で用いている成ヤギに対する解剖学的適合性の検討では,ポンプ寸法については問題なく皮下に収納可能であると判断されたが,脱血管および送血管の配置には空間的余裕が少なく,ポンプの脱血・送血口の取り付け角度について,最適角度を設定し製作する必要があると考えられた.この両吸込型遠心ポンプを用いて,慢性動物実験を合計二例実施した.成ヤギを用いて左室心尖部脱血,下行大動脈送血の左心バイパスモデルを作成し.ポンプ流量は3~7L/minの範囲で維持することが可能であった.回転数が十分に維持され,良好な脱血が実現している場合には大動脈圧における脈圧の顕著な減少が観察された.第一例目は術後31日目に,血漿遊離ヘモグロビン濃度の顕著な上昇を認めたため,実験中止となった.ポンプ内部にはインペラを両面から支持するための支柱の一本の周囲に摺動部における発熱に起因すると考えられる血栓の形成が認められた.ポンプを皮下に埋め込んだ他の一例では,流量の確保,脈圧の減少については第一例と同様であり,術後57日経過し実験継続中である.消費電力は平均6W程度であり,ポンプの発熱は許容範囲であると考えられた.実験終了後,ポンプ接触組織の組織学的検索を行い,ポンプ表面材料の評価
を行なう予定である.体内電池システムに関しては,生体内用として開発されたリチウムイオン二次電池と,体外結合型経皮電力伝送システム(ECTETS)の体内回路と,電池の充電制御回路とを,一つのチタン製ケースに収めた,動物生体内埋込可能な電源パックを試作した.容積は220mLであり,質量は400gであった.システム全体の電力伝送効率は満充電時に最高で75%であった.また,二次電池の充電完了に要した時間は235minであり,最高温度上昇は充電開始後60minで5.4[℃]に達することが確認された.
を行なう予定である.体内電池システムに関しては,生体内用として開発されたリチウムイオン二次電池と,体外結合型経皮電力伝送システム(ECTETS)の体内回路と,電池の充電制御回路とを,一つのチタン製ケースに収めた,動物生体内埋込可能な電源パックを試作した.容積は220mLであり,質量は400gであった.システム全体の電力伝送効率は満充電時に最高で75%であった.また,二次電池の充電完了に要した時間は235minであり,最高温度上昇は充電開始後60minで5.4[℃]に達することが確認された.
結論
体内埋込可能な補助人工心臓システムの各構成部分に関する改良と評価を行い,総合評価のために体内埋め込み慢性動物実験を行った.製品化の目途を有するに足る性能を有していることが明らかとなった.
公開日・更新日
公開日
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更新日
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