未認可抗生物質ネガマイシンによる筋ジストロフィーの治療

文献情報

文献番号
200100656A
報告書区分
総括
研究課題名
未認可抗生物質ネガマイシンによる筋ジストロフィーの治療
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 武田伸一(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 原 孝彦((財)東京都臨床医学総合研究所)
  • 浜田 雅((財)微生物化学研究会微生物化学研究所)
  • 斉藤加代子(東京女子医科大学)
  • 松尾雅文(神戸大学)
  • 塩塚政孝(早稲田大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヂュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者の5-15%はジストロフィン遺伝子のナンセンス突然変異によって起きる。もし、生じたストップコドンを読み越えさせる薬物があれば、化学療法が可能である。1999年、米国のLeeSweeneyらはゲンタマイシンの持つストップコドン読み越え活性を利用してジストロフィン遺伝子にナンセンス型突然変異があるmdxマウスの薬物治療に成功した。しかし、ゲンタマイシンは聴覚毒性や腎毒性が強いため、長期間投与は危険である。そこで、別の抗生物質を検索した所、ネガマイシンという未認可抗生物質に同様な作用があることが分かった。我々は、このネガマイシンをmdxマウスに投与し、ジストロフィンの発現を認めた。本研究ではネガマイシンの毒性、作用機序の解明、至適投与量や投与方法、さらにその類似体の機能について検討し、ナンセンス突然変異型遺伝子病の薬物治療薬の開発を目指すことを目的とする。さらにナンセンス突然変異型DMD患者の生検試料から骨格筋細胞株を樹立し、それに対するネガマイシンの効果の検討を行う。
研究方法
1)ネガマイシンの高度産生菌を用いてネガマイシンの生産を行う。2)mdxマウスにネガマイシンを投与し、そのジストロフィン発現量、治療効果、毒性について検討する。3)mdxマウス由来骨格筋細胞に易熱性SV40-T遺伝子を導入し長寿命細胞株を樹立する。4)同様にヒトDMD患者由来の骨格筋細胞に易熱性SV40-T遺伝子を導入し長寿命細胞株を樹立する。5)これらを培養系で分化させ培養液にネガマイシンを添加し、筋細胞におけるジストロフィンの発現を検討する。6)正常およびmdxマウス由来の小各区筋細胞株において発現する遺伝子をcDNAランダムアレイを用いて同定する。7)緑色蛍光タンパク質あるいはルシフェラーゼ遺伝子内にストップコドンを挿入したコンストラクトを細胞に導入し、その細胞を用いてネガマイシンによるストップコドンの読み越え活性を定量化できるアッセイ系を確立する。8)培養系での筋細胞損傷を測定するため、無血清培養液中に漏出してくるクレアチンキナーゼ活性の定量系を開発する。
結果と考察
1)1969年に樹立したネガマイシンの高度産生菌の蘇生に成功し、それを用いてネガマイシンの試験生産を始めた。2)mdxマウスにネガマイシンを投与した所、正常マウス骨格筋の1/10レベルのタンパク量のジストロフィン発現した。聴覚毒性は認められなかった。同時におこなったゲンタマイシン投与マウスの聴覚は低下していたので、ネガマイシンは聴覚毒性がないか低いことが示された。3)正常およびmdxマウス由来骨格筋細胞に易熱性SV40-T遺伝子を導入し長寿命細胞株を樹立した。4)同様にナンセンス突然変異型のヒトDMD患者由来の骨格筋細胞に易熱性SV40-T遺伝子を導入し長寿命細胞株が数株、樹立出来た。これらを用いて、今後、ネガマイシンの効果を検討する。5)mdxマウス由来の骨格筋細胞を培養系で分化させ培養液にネガマイシンを添加した所、ジストロフィンの発現を認めた。今後、添加量、添加中止後のジストロフィンタンパク質の減少等について調べる。6)mdxマウス由来細胞で転写が活性化している遺伝子を10種類、低下している遺伝子を5種類を同定した。7)ネガマイシンによるストップコドンの読み越え活性を定量化できるアッセイ系を作出中である。8)培養系での筋細胞損傷のマーカーとしてクレアチンキナーゼ活性を測定するため、無血清培養液を開発中した。
結論
1)mdxマウス骨格筋に対し、in vivoおよびin vit
roでネガマイシンを投与した所、ジストロフィンtタンパク質の蓄積を認めた。2)正常およびmdxマウス、さらにナンセンス突然変異型のヒトDMD患者由来の骨格筋細胞に易熱性SV40-T遺伝子を導入し、それぞれの細胞の長寿命化に成功した。3)それらを用いてin vitroでネガマイシンその他の薬物による治療効果を検討するアッセイ系が出来た。

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