ゲノム不活化機構の異常に基づく脳発達障害の病態解明と治療法開発の研究

文献情報

文献番号
200100650A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム不活化機構の異常に基づく脳発達障害の病態解明と治療法開発の研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 健夫(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤雄一(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 伊藤雅之(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノムプロジェクトの進展・完了を受け、多数の疾患において遺伝子の構造異常が遺伝子機能の低下を引き起こしていることが明らかにされた。一方遺伝子構造は正常でも遺伝子発現制御機構の異常によって発症する疾患も存在するが、こちらの研究は遅れている。そこでわれわれは遺伝子発現制御機構の異常に起因すると考えられる2つの発達障害疾患において、その病態解明を行った。具体的には遺伝子発現不活化蛋白MeCP2の異常症である「レット症候群」と本来不活化されるべき環状X染色体に不活化が生じない「環状X不活化異常症」の2疾患において不活化異常により過剰発現する遺伝子を同定することにした。
研究方法
[レット症候群研究] (1)ヒトリンパ芽球を材料にMeCP2抗体を用いたクロマチン免疫沈降法を用いて、MeCP2蛋白と結合する遺伝子の探索を行った。 (2)ヒトおよびマウス組織を材料にMeCP2蛋白抗体を用いた免疫染色法を用いて、高発現臓器と高発現時期の検討を行った。また Mecp2遺伝子のノックアウトマウスを用いたマイクロアレイ解析による過剰発現遺伝子の同定のための基礎検討を行った。 [環状X不活化異常症研究] (1)FISH法とマイクロサテライトマーカーを用いた多型解析法による完全不活化不全症例の環状X染色体の構造(サイズ)の決定と共通ゲノム領域を特定し、完全不活化不全症例細胞における過剰発現の証明のためのRNA-FISH法を確立した。なお倫理面への配慮として、ヒト組織の使用にあたっては個人またはその家族からインフォームドコンセントを得た。
結果と考察
[レット症候群研究](1)MeCP2蛋白はゲノム状の既知の遺伝子を含む様々な領域に結合していた。このことからMeCP2蛋白は様々な遺伝子領域に結合していることが示唆された。(2)ヒトおよびマウスにおいてMeCP2蛋白は脳、特に脳幹部において高発現していた。高発現は胎生期から新生児期に顕著で、ニューロンの核に局在が認められた。このことから、胎生期から新生児期の脳幹部においてMeCP2蛋白により核遺伝子の発現制御がなされていることが示唆された。またマウスの脳幹部から抽出したRNA でマイクロアレイ解析が可能であることを確認した。 [環状X不活化異常症研究](1)X染色体不活化異常症患者の解析から3名の環状X染色体の共通ゲノム領域はXcen (DXS1190) とXq12 (XIST) 遺伝子のDNAマーカー間であることを明らかにし、データベースより領域内の過剰発現候補遺伝子を明らかにした。(2)本症の過剰発現遺伝子同定の方法として有用なRNA-FISH法を確立した。以上の研究によりそれぞれの疾患の病態に直結する過剰発現遺伝子を明らかにできると思われた。また本研究の成果は、これらの他に多数存在すると考えられる遺伝子過剰発現に起因する疾患の病態解明・治療研究に適用できると考えられた。
結論
遺伝子不活化機構の破綻の結果、正常遺伝子が過剰発現して発症すると予測されるレット症候群とX不活化異常症という2つの疾患において、それぞれの病態に直結する過剰発現遺伝子の同定研究を試みた。その結果今年度は、 [レット症候群研究]においてはヒトおよびマウスにおいてMeCP2蛋白の高発現組織と高発現時期を明らかにし、[環状X不活化異常症研究]においては、不活化異常を起こしている環状X染色体の領域を特定した。

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