睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100639A
報告書区分
総括
研究課題名
睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
早石 修(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 裏出良博(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
  • 江口直美(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
  • 曲 衛敏(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
  • 黄 志力(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
  • Michael Lazarus(財団法人大阪バイオサイエンス研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
27,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
睡眠覚醒調節の情報伝達経路に基づく睡眠障害に対する医薬品候補化合物の理論的探索法を開発し、スクリーニング系として有効な睡眠障害モデル動物を作製する。そして、新たな作用点を持つ合理的で合目的な睡眠障害の治療薬および治療法の開発をめざす。
研究方法
1)無麻酔下のマウス脳室への薬物投与と睡眠覚醒の同時測定法を開発し、各種の遺伝子欠損マウスに応用する。
2)ウレタン麻酔下のマウス前脳基底部への微量脳内透析プローブの埋め込みを行い、クモ膜下腔における睡眠情報の変換機構を解析する。
3)小動物(ラットおよびマウス)用の無線方式自動薬液注入ポンプを開発する。
4)動物睡眠自動判定ソフトを改良し、睡眠判定データの編集速度を向上させる。
5)プロスタグランジン(PG)D合成酵素の結晶化条件を改良し、阻害剤との複合体の結晶化を試みる。
6)放射光施設(SPring-8)を利用して、高分解能のX線回折データを収集する。
7)小胞体膜結合型PGE合成酵素のcDNAクローニングを行い、遺伝子組換え型酵素を精製する。さらに特異性の高い抗体を作製する。
8)ラットの覚醒中枢(結節乳頭核)への微量脳内透析プローブの埋め込みを行い、覚醒情報の変換機構を解析する。
9)ヒスタミン受容体欠損マウスの脳室内へオレキシンを投与し、睡眠覚醒情報の変換機構を解析する。
結果と考察
1)マウス脳室へのPGD2投与により、徐波睡眠の選択的な増加が起きることを見出した。
2)PGD2受容体遺伝子欠損マウスでは、PGD2の脳室内投与による睡眠誘発が起きないことを見出した。
3)マウス前脳基底部のクモ膜下腔において、PGD2受容体を介した細胞外アデノシン濃度の上昇が起きることを見出した。
4)PGD合成酵素遺伝子欠損マウスおよびPGD2受容体遺伝子欠損マウスは断眠による睡眠要求の蓄積が起こり難いことを発見した。
5)小動物(ラットおよびマウス)用の無線方式自動薬液注入ポンプを開発した。
6)動物睡眠自動判定ソフトに睡眠判定アルゴリズムの自己学習機構を組み込んだ。
7)PGD合成酵素と阻害剤との複合体の結晶化に成功した。
8)小胞体膜結合型PGE合成酵素cDNAを単離し、大腸菌を用いた遺伝子組換え型酵素の発現と精製に成功した。さらに、精製蛋白質を抗原として特異性の高い抗体の作製に成功した。
9)覚醒中枢(結節乳頭核)近傍へのPGE2あるいはオレキシン投与により、覚醒中枢の活性化を反映したヒスタミン系神経の活動促進が起きることを見出した。
10)ヒスタミンH1受容体遺伝子欠損マウスでは、オレキシンの脳室内投与による覚醒誘発が起きないことを発見した。
結論
1)PGD2は、前脳基底部のクモ膜に分布するPGD2受容体を介して、細胞外アデノシン濃度の上昇を起し徐波睡眠を誘発し、長期間の覚醒により不足した睡眠を補う場合に特に重要であることを証明した。
2)PGE2やオレキシンなどの覚醒作用には、結節乳頭核のヒスタミン神経系の活動が関与することを証明した。
3)内因性覚醒物質であるPGE2やオレキシンは、結節乳頭核のヒスタミン神経系を活性化し、脳内の遊離ヒスタミン濃度を上昇させることを証明した。そして、ヒスタミンH1受容体遺伝子欠損マウスでは、オレキシンの脳室内投与による覚醒誘発が全く起こらないことを発見した。
4)小動物用の無線方式自動薬液注入ポンプの開発と睡眠自動判定ソフトの改良により、睡眠覚醒調節医薬品候補化合物のスクリーニング系を整備した。
5)PGD合成酵素とPGE合成酵素の構造解析を進め、睡眠覚醒調節薬としての酵素阻害剤の開発を進めた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-