痴呆性高齢者にふさわしい生活環境に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100598A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆性高齢者にふさわしい生活環境に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 桂子(日本社会事業大学)
研究分担者(所属機関)
  • 足立啓(和歌山大学)
  • 児玉昌久(早稲田大学)
  • 溝端光雄(東京都老人総合研究所)
  • 潮谷有二(長崎純心大学)
  • 後藤隆(日本社会事業大学)
  • 下垣光(日本社会事業大学)
  • 石川弥栄子(高齢者住宅財団)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(痴呆・骨折研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゴールドプラン21において、痴呆性高齢者支援対策の推進は重点課題と位置づけられている。北欧等での実践から、痴呆性高齢者に適した環境は、痴呆症状の緩和や介護負担の軽減をもたらすことが認識されつつある。しかしわが国では、車いすなど移動障害への環境整備は取り組まれているが、痴呆性高齢者の在宅生活継続を容易にする住環境整備マニュアルや、施設環境適応を円滑にする施設環境整備マニュアルなど体系的な住環境整備プログラムはたいへん遅れている。3年間の本研究から以下の成果が期待できる。①痴呆性高齢者と介護者を取り巻く屋内・屋外の生活環境全体を対象とした本研究は、痴呆性高齢者の在宅継続と介護負担の軽減に寄与し、痴呆性高齢者と家族の地域での生活継続を容易にする。②ユニットケア施設の環境整備に関する研究結果は、緊急整備課題であるグループホームやユニットケア施設の充実に寄与する。③痴呆ケアにおいて環境支援は不可欠であり、本研究成果は介護職員の痴呆ケア研修プログラムに有用であり、痴呆ケアの質的向上に貢献する。④環境整備によりマンパワーによる介護サービスの軽減が期待でき、介護費用の抑制が期待できる。以上のように、本研究はゴールドプラン21の重点課題である痴呆性高齢者支援対策に多大な寄与を目的とした研究である。
研究方法
研究の方法と結果=①痴呆性高齢者の状態像に対応した在宅環境の整備方法:全国の家族介護者924名の調査結果から、歩行・見当識の程度別に分析を行い、痴呆の状態像に対応して重要な居住配慮項目やその有効性を明らかにした。今後、痴呆の状態像の変化に対応する住まいの整備方法について、家族およびサービス提供者に詳細調査を行い、自立支援と在宅ケアのための住宅整備マニュアルの作成を行う。②高齢者専用住宅における痴呆性高齢者への支援方法:シルバーピアの生活支援員に対し調査を実施し、痴呆性居住者への対応の困難さと支援方法の方向性を示した。今後、全国調査を行い、痴呆性居住者の発生状況と対応状況の把握し、高齢者専用住宅における生活支援と環境整備指針の作成を行う。③ユニットケア施設の環境整備方法:ユニットケア施設における詳細な行動観察等から、小規模でかつ居場所の多様性が、痴呆性高齢者の安定と職員との豊かな関わりをもたらすことを実証。今後、海外の先進事例を調査し、痴呆症の安定と緩和をもたらす「小規模・家庭的」環境の整備手法を検討し、ユニットケア施設の環境整備指針の作成を行う。④痴呆性高齢者や介護者への環境配慮の効果に関する評価研究:本年度は二つの研究を行ったA.施設職員(対象316名)への調査に基づき、専門的な痴呆ケアに専門的環境の存在が大きいことを実証。B.痴呆性高齢者(対象862名)の調査に基づき、痴呆性高齢者の安定した表出行動に環境配慮と職員の関わりの両者の重要性を実証。これらの研究のなかで、痴呆性高齢者専門的ケア尺度と痴呆性高齢者表出行動尺度を開発した。⑤痴呆性高齢者への環境支援のための指針の開発:高齢者ケアの専門家等を対象に調査を実施して、Professional Environmental Assessment Protocol(PEAP)日本版3を作成した。今後、この指針を適用する効果と課題の調査を行い、環境指針の普及に向けた研修プログラムの開発を行う。⑥PEAPによるケアユニットの環境デザインの具体的手法の開発:痴呆ケア環境指針を環境デザインにおいても実施するためのデザイン手法の提案を実施した。今後
、北欧の先進施設の調査も踏まえ、モデルプラン作成。痴呆性高齢者のためのデザイン研修プログラムの開発とモデルプラン施設評価を実施する。⑦痴呆性高齢者のストレスを指標とした居住環境の評価研究:健常男子を対象にストレス刺激に対応した唾液中の免疫抗体分析を行い、痴呆性高齢者の推定基準値の算定。今後、痴呆性高齢者への適用と環境変動に対応した変化の様態の確認を行い、痴呆性高齢者の施設環境への適応評価。⑧痴呆性高齢者に対応した屋外環境の整備方法:在宅およびグループホーム入居者への調査より痴呆性高齢者の近隣への外出の実態、および痴呆ドライバーの存在について分析した。
結果と考察
結論
痴呆性高齢者と介護者を取り巻く生活環境(一般住宅、専用住宅、ユニットケア施設、屋外環境)を取り上げ、痴呆性高齢者の自立支援、痴呆症状の緩和、在宅生活の継続性の維持、介護ストレス軽減に生活環境の面から寄与するために、①痴呆性高齢者にふさわしい環境整備方法、②環境配慮が痴呆性高齢者やケアの質向上に及ぼす効果の評価、③それらを解明する評価尺度の開発、この三領域から、9編の分担研究報告をまとめ以下の成果を得た。①痴呆性高齢者の在宅継続に有効な住居配慮項目の明確化。②高齢者専用住宅における、痴呆性高齢者への対応の困難さと支援方法の方向性。③ユニットケア施設の小規模で多様な空間特性が及ぼす痴呆症状の緩和効果を実証。④痴呆性高齢者への専門的なケアと、痴呆性高齢者を配慮した環境の強い相関を実証。⑤痴呆性高齢者の好ましい表出行動に、環境配慮と職員の専門的ケアの双方の強い影響を実証。⑥痴呆ケア実践に環境を生かすために、「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」の開発。⑦痴呆ケア環境指針をユニットケア施設のデザインに生かすための、デザイン手法の開発。⑧痴呆性高齢者のストレスを指標とした居住環境評価研究のため、唾液中の免疫抗体分析の実施。⑨痴呆性高齢者の外出の実態とドライバーにおける痴呆の課題を明確化。

公開日・更新日

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