文献情報
文献番号
200100591A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養学的介入による痴呆の予防・治療システム(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
植木 彰(自治医科大学大宮医療センター神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 中島健二(鳥取大学医学部)
- 苗村育郎(秋田大学保健管理センター)
- 宮永和夫(群馬県精神保健福祉センター)
- 大久保毅(国保町立小鹿野中央病院)
- 佐々木敏(国立がんセンター研究所支所)
- 池田和彦(東京都精神医学総合研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(痴呆・骨折研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳の健康維持に食事栄養素が関連しており、疫学調査ではビタミンB群(B1, B6, B12, 葉酸)、抗酸化物(ビタミンC, E, βーカロチン)、 ミネラル(カルシウム、亜鉛など)の欠乏、及び 脂質摂取の異常が高齢者の認知機能低下に関係していることが示されている。また我々の横断的調査ではアルツハイマー病 (AD)でもほぼ同様の栄養素の欠乏と魚摂取不足、肉の摂取過剰による多価不飽和脂肪酸 (PUFA) の摂取バランス異常が見いだされている。このことは栄養学的介入が痴呆の予防・治療に応用できる可能性を示している。国際的評価に耐える栄養疫学調査結果を出すためにはすべての地域で標準化された方式で調査並びに介入を行うことが重要となる。本研究では摂取栄養素の解析、認知機能検査・うつ度・生活歴などの調査項目の標準化、画像・血清微量栄養素・赤血球膜脂肪酸組成などの検査項目の標準化が必要となるため、初年度は特にシステム構築とチーム作りを中心とした基盤整備に重点を置いた。
研究方法
A 臨床疫学的研究
研究区分は次の3項目である。
【研究1】断面研究 (Cross-sectional Study):食事因子は認知機能障害と関連しているかを見る実態調査(60歳以上?74歳以下で一地域500人 程度)。
【研究2】追跡コホート研究 (Prospective Cohort Study):食事因子はその後の認知機能の変化(認知機能障害の発生)に関連しているかを検証する前向き調査(2?3年後)。
【研究3】栄養学的介入試験 (Nutritional Intervention Study)
食事の改善が認知機能障害を改善するかを見る介入調査(軽度認知機能障害、痴呆に区分はするが原則としてMMSEが27点以下は全例介入)。
【研究対象地域】
秋田県全域、新潟県南魚沼郡大和町、埼玉県秩父郡小鹿野町、埼玉県さいたま市、鳥取県西伯郡大山町の5地域で、いずれもこれまでに痴呆検診や一般住民検診によって痴呆の実態を把握している地域である。
【研究システムの構築】
1.自治体への説明と協力依頼、2.地域住民への説明など啓蒙活動、3.対象者のコード化、4. 新たな栄養調査票の作成とコンピューター入力システムの完成、5. 栄養素解析の中央管理システムの完成、データの送付・返却システムの完成、6.参加者への結果の表示還元システムの完成、7.血清ビタミン・脂肪酸・ホモシステイン測定のシステム化。
【チーム作り】
栄養士の指導講習(栄養調査の方法、栄養指導の目標値の設定、栄養指導の頻度の設定、具体的栄養指導法の標準化)。
保健婦の指導講習(認知機能検査・行動評価・生活歴調査の習熟、栄養指導の方法の習熟)。
B 基礎研究
本研究班では、臨床疫学的研究とは別に、臨床で得られた知見がどのような機序で神経細胞の老化、神経変性、認知機能維持に関連するかその機序を明らかにする目的で、基礎研究をも行っている。アルツハイマー病モデル動物において、栄養学的介入がアミロイドβ蛋白やタウ蛋白の蓄積を抑制するかいなかを検討する。
研究区分は次の3項目である。
【研究1】断面研究 (Cross-sectional Study):食事因子は認知機能障害と関連しているかを見る実態調査(60歳以上?74歳以下で一地域500人 程度)。
【研究2】追跡コホート研究 (Prospective Cohort Study):食事因子はその後の認知機能の変化(認知機能障害の発生)に関連しているかを検証する前向き調査(2?3年後)。
【研究3】栄養学的介入試験 (Nutritional Intervention Study)
食事の改善が認知機能障害を改善するかを見る介入調査(軽度認知機能障害、痴呆に区分はするが原則としてMMSEが27点以下は全例介入)。
【研究対象地域】
秋田県全域、新潟県南魚沼郡大和町、埼玉県秩父郡小鹿野町、埼玉県さいたま市、鳥取県西伯郡大山町の5地域で、いずれもこれまでに痴呆検診や一般住民検診によって痴呆の実態を把握している地域である。
【研究システムの構築】
1.自治体への説明と協力依頼、2.地域住民への説明など啓蒙活動、3.対象者のコード化、4. 新たな栄養調査票の作成とコンピューター入力システムの完成、5. 栄養素解析の中央管理システムの完成、データの送付・返却システムの完成、6.参加者への結果の表示還元システムの完成、7.血清ビタミン・脂肪酸・ホモシステイン測定のシステム化。
【チーム作り】
栄養士の指導講習(栄養調査の方法、栄養指導の目標値の設定、栄養指導の頻度の設定、具体的栄養指導法の標準化)。
保健婦の指導講習(認知機能検査・行動評価・生活歴調査の習熟、栄養指導の方法の習熟)。
B 基礎研究
本研究班では、臨床疫学的研究とは別に、臨床で得られた知見がどのような機序で神経細胞の老化、神経変性、認知機能維持に関連するかその機序を明らかにする目的で、基礎研究をも行っている。アルツハイマー病モデル動物において、栄養学的介入がアミロイドβ蛋白やタウ蛋白の蓄積を抑制するかいなかを検討する。
結果と考察
【臨床疫学研究】
多数回にわたる住民への説明会、講習会を開催し、食事栄養が高齢者の認知機能の維持にいかに有益かについて啓蒙活動を行った。6地域における本年度内の総エントリー数は587人であり、これらの対象ですでに栄養調査、認知機能検査が終了し、さらに57人においては採血を終了した。
食事栄養素と認知機能との相関、血清ビタミン・赤血球脂肪酸分析の結果の解析はこれから行うところであるが、研究3の介入試験の結果では、まだ12例と少数ではあるが、6か月までの介入成績では8例でMMSEの上昇を認め、12例全例でうつ度が改善し、予想以上の効果を見ている。今後対象数を増やすとともに、効果がどこまで持続するかも検討する予定である。
【基礎研究】
アルツハイマー病モデル動物において、摂取食餌中の不飽和多価脂肪酸n-6/n-3比を様々に変化させの栄養学的介入がアミロイドβ蛋白やタウ蛋白の蓄積への影響を検討している。
多数回にわたる住民への説明会、講習会を開催し、食事栄養が高齢者の認知機能の維持にいかに有益かについて啓蒙活動を行った。6地域における本年度内の総エントリー数は587人であり、これらの対象ですでに栄養調査、認知機能検査が終了し、さらに57人においては採血を終了した。
食事栄養素と認知機能との相関、血清ビタミン・赤血球脂肪酸分析の結果の解析はこれから行うところであるが、研究3の介入試験の結果では、まだ12例と少数ではあるが、6か月までの介入成績では8例でMMSEの上昇を認め、12例全例でうつ度が改善し、予想以上の効果を見ている。今後対象数を増やすとともに、効果がどこまで持続するかも検討する予定である。
【基礎研究】
アルツハイマー病モデル動物において、摂取食餌中の不飽和多価脂肪酸n-6/n-3比を様々に変化させの栄養学的介入がアミロイドβ蛋白やタウ蛋白の蓄積への影響を検討している。
結論
栄養学的介入が高齢者の認知機能の維持や痴呆の予防・治療に有効であることが明らかになれば、国民の健康維持、生活の質の維持、さらには結果的に自立した高齢者を増やすことにつながるため、その医療・経済的効果はきわめて大きい。
本研究で開発されつつある正確でかつ迅速な栄養調査の結果解析システム、具体的な栄養所要量の目標値、具体的栄養学的介入の方法、一般住民医おけるビタミン欠乏症や高ホモシステイン血症の頻度の検索は生物学的マーカーとして重要であるのみならず国民栄養摂取量の目標値の策定にも利用可能となる。
本研究で開発されつつある正確でかつ迅速な栄養調査の結果解析システム、具体的な栄養所要量の目標値、具体的栄養学的介入の方法、一般住民医おけるビタミン欠乏症や高ホモシステイン血症の頻度の検索は生物学的マーカーとして重要であるのみならず国民栄養摂取量の目標値の策定にも利用可能となる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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