アルツハイマー病の医療手順に関する総合的調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100590A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の医療手順に関する総合的調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
新井 平伊(順天堂大学)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 茂(旭川医科大学)
  • 笠原洋勇(慈恵医科大学柏病院)
  • 伊豫雅臣(千葉大学医学部)
  • 古川壽亮(名古屋市立大学医学部)
  • 福居顯二(京都府立医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(痴呆・骨折研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
いまだ根本的な治療法が医学的に確立されていないアルツハイマー病に関してその診断法と治療のためのガイドラインを明確にし、その後の医療従事者や介護職員などによるチーム医療を確立するための医療手順(クリティカルパス)を作成すること、また臨床経過として徐々に進行する機能障害に対しての適切な社会サービス支援を計画・実行するシステムを開発することを目的としている。
研究方法
主任及び分担研究者が所属する施設において入院適応となったアルツハイマー病患者の実態調査を行うために、入院目的、入院日数、各種検査、薬物療法、入院・退院指導、転帰、退院後の行き先などを記入する調査票を作成した。そして各施設における平成13年1月1日から12月31日までの入院症例をすべて調査した。その中から、アルツハイマー病もしくは痴呆性疾患疑いのために入院となった症例について調査票を用いて必要事項を記入した。
結果と考察
(1) 入院目的としては一番多くを占めたのは随伴症状治療のためで28%であり、検査入院である初期診断と検査入院は20%であった。また合併した身体疾患の治療のためという入院も25%と高かった。(2) 入院日数については上記の調査で上位を占めた4つの入院目的について入院日数を調べたところ、随伴症状の治療目的入院では入院日数が8日から305日にまで分布し、平均は60.5日であった。初期診断目的入院では、5日から112日で、平均44.1日であった。また検査目的入院は3日から49日で、平均15.1日、さらに身体疾患治療目的入院では9日から162日で、平均39.1日であった。(3) 退院時点での転帰では、初期診断及び検査目的入院では不変が相当数を占めたが経過と悪化も存在し、一方、随伴症状治療及び身体疾患治療目的入院については軽快がより多くを占めていた。(4) 検査については、CT,MRI、脳波、SPECT,血液生化学、内分泌、ビタミン、脳脊髄液検査について調べたところ、初期診断目的入院においては概ね実施されていたものの、他の目的入院ではMRI及び血液生化学検査を除いては各検査の実施率がかなり低いことが明らかで、特に治療目的の際にはその傾向が強かった。(5) 入院中に用いられた薬物に関する調査では、当然のことながら初期診断目的入院での低い薬物使用率を除いて、脳代謝循環改善薬と共に抗精神病薬が高い率で用いられていることが明らかとなった。また、睡眠導入剤や抗うつ薬、抗パーキンソン薬の使用が相当数を占めるのに、塩酸ドネペジルに使用が比較的低いことも明らかとなった。
今回の第一次調査では、アルツハイマー病患者の入院に関する現状が明らかになったといえる。まず、その入院目的に関しては、初期診断や経過中の検査入院といった診断・精査目的入院、随伴症状の治療を目的とした対症療法目的入院、そして合併する身体疾患治療目的の合併症治療目的入院といった三グループに大別できることである。これは、今回の調査で入院に至る要因を分析し、その結果に基づきクリティカルパスの適応となるような病態を何通り設定するかが最初から大きな議論となっていたところであるため重要な所見である。次いで注目されるのは、予想をはるかに超える大きなバリエーションを持って、入院日数、検査実施率、薬物使用頻度などがばらつくことであった。とくに、入院日数には各入院目的ともばらつきが大きく、注目に値するものであった。さらに、検査項目や薬物療法においても同様で、必ずしも標準的なレベルで医療が実施されているとは言い難い。つまり、入院日数、検査頻度、薬物使用頻度の調査結果いずれからもある程度標準化された医療手順の必要性が強く示唆された。アルツハイマー病に対する診断・治療に用いるアルゴリズムを基に具体的な面から考えれば、初期診断のための検査入院、経過途中の検査入院、そして薬物療法の導入目的入院などはクリティカルパスも設定し易く、またその医療経済的問題も検討しやすい。しかし、さまざまな行動異常や随伴症状に対する治療入院に適応するようなクリティカルパスや身体疾患治療のためのクリティカルパスの導入には、現実的にはさまざまなケースが考えられ、今後さらなる検討を要すると思われる。その中では、せん妄、徘徊などの行動異常、妄想、うつ状態などに対するクリティカルパスが現実的に検討できるものと思われる。そして、なるべく多彩な痴呆症状に対して汎用性のあるクリティカルパスのセットを、病期や病状に対応し臨床的に実用可能な形で提案できたらと考えている。つまり、症例ごとにケースバイケースで対応できるように、共有的(shared)かつ注文的(semi-tailor-made)な医療手順を今後の医療に提供することを目指したい。
結論
本研究計画の初年度としてアルツハイマー病の入院に関する実態調査を行ったところ、入院は診断・治療目的、随伴症状の対症療法目的、そして身体合併症治療目的に大別できること、しかし、入院日数、検査項目、薬物使用頻度などについては予想をはるかに超える範囲でのばらつきが見られ、本研究計画が目指す標準的医療手順の必要性が改めて浮き彫りにされた。

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