医療経済評価の文献データベースの作成と医療経済評価ガイドライン開発の予備調査(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100520A
報告書区分
総括
研究課題名
医療経済評価の文献データベースの作成と医療経済評価ガイドライン開発の予備調査(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(東京大学大学院薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 津谷喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 小林廉毅(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(EBM研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
11,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における医療経済評価研究の実施と利用を推進するために、諸外国における医療経済評価研究データベースおよび医療経済評価ガイドラインの調査・検討を行うまた、我が国において同様のデータベースを作成するために、文献の検索方法および構造化抄録の作成方法について検討を行う。
研究方法
1.医療経済評価研究データベースとして、イギリスのNHS-EED(National Health Service ? Economic Evaluation Database)とOHE-HEED(Office of Health Economics ? Health Economic Evaluation Database)、フランスのCODECSプロジェクト(College des Economistes de la Sante)について検討を行った。2.我が国における医療経済評価研究の検索方法を検討するために、医療経済評価に関するキーワードを設定し、国内雑誌約1,300、学会抄録等約5,500のハンドサーチを行った。3.NHS-EEDにおける経済評価研究の構造化抄録フォーマットおよび作成マニュアルを参照して、日本語文献について複数のアブストラクターによる構造化抄録の作成を行い、作成上の課題について検討した。4.カナダのCCOHTA(Canadian Coordinating Office for Technology Assessment)における経済評価ガイドラインについて検討を行った。また、米国の保険者においてどのように医療経済評価研究が用いられているかを調査した。
結果と考察
1.諸外国の医療経済評価文献データベースについては、NHS-EEDは英国NHSにおける医療提供に役立てるため、世界各国で公表されている医療経済評価研究から構造化抄録を作成し、ウェブ上で一般公開しているもので、full economic evaluation について抄録が作成されている。OHE-HEEDはより商用のデータベースで文献数が多い。NHS-EEDとOHE-HEEDにおける1999年の収録論文数を比較したところ、全体としてはOHE-HEEDの方が多くの論文が収録されていた。Japanというキーワードでは共通する文献が約半分で他はそれぞれのデータベースで異なっており、日本語文献を抽出した我が国独自のデータベースの作成が必要と思われた。フランスのCODECSプロジェクトはフランス医療経済学会によりフランス国内の医療経済評価研究データベースの開発を目的として開始されたもので、無償でアクセスできるデータベースとして運営されている。
2.ハンドサーチの結果から、約2ヶ月間で46件の文献が抽出された。このうち原著は6件あり、full economic evaluationは2件であった。
3.構造化抄録の作成については、NHS-EEDに収録されている5編の日本語文献を選択し、NHS-EEDにおける構造化抄録のマニュアルを参照した上で、複数のアブストラクターにより抄録を作成し、比較検討したところ、抄録作成にかかる時間は大きくばらついていたが、これはもとの論文の記載が十分になされているかに依存していた。また研究のタイプ等の選択により抄録を作成する項目は複数のアブストラクターで比較的同一であったものの、clinical evidenceのソースについての判断やコメントの作成、もとの論文に記載されていないことの判断等、アブストラクターによって違いが見られるところもあった。
4.医薬品経済評価ガイドラインとしては、カナダのCCOHTAのものが最新の知見にもとづいた提示がなされており、我が国でも参考になると思われた。米国では、民間保険者において医薬品経済評価研究がどのように実施され、用いられているかを調べた結果、独自に採用医薬品リスト(formulary)を作成している場合が多く、まず薬の有効性・安全性を検討し、同程度のものが複数ある場合に医薬経済評価を用いている場合が多かった。医薬品経済評価研究は、公表されているものを中心にするものの、企業等から提供されるデータも参考にするということだった。
結論
医療経済評価文献データベースに関する諸外国の事例は方法として大いに参考になるもののデータベースとしては我が国独自のものを作成する必要がある。また文献検索およびデータベースの収録の範囲、構造化抄録の項目、作成方法に関しては主に英国NHS-EEDの方法を参照して実施可能であるが、これらについても課題があり、諸外国の機関と協力して研究をすすめながら、有用なデータベースの作成に向けた今後の検討が必要である。さらに経済評価研究の実施および利用の促進に向けて、経済評価ガイドラインの設定や利用方法の検討が望まれる。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)