文献情報
文献番号
200100509A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症検診の有効性に関する研究(腰椎骨密度の低下は骨折リスクの上昇をどの程度反映するか)(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
伊木 雅之(近畿大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 三宅吉博(近畿大学医学部)
- 久保田 恵(岡山県立大学保健福祉学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(EBM研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨粗鬆症検診で検査、または調査されている骨密度の低下や生活習慣の現状が惹起する骨折リスクの増大を、それぞれ定量的に明らかにする。骨粗鬆症検診を評価するにあたっての極めて基本的なこれらの情報を得ることによって、骨粗鬆症検診のScreening levelを、想定される許容できない骨折リスクの大きさから逆算して求め、同検診に科学的根拠の第1歩を与えることを目的とする。
研究方法
医学文献データベースPubMedを使用して研究目的に合致する医学文献を網羅的に収集し、批判的に吟味して、知見の現状を明らかにする。同時に、回顧的コホート研究を実施して、日本人において腰椎骨密度と各種の生活習慣がその後の骨折リスクをどの程度表すかを明らかにする。そのために、検診データなどの個人情報を本研究で利用するため、個人情報保護条例等を遵守した手法を市町村の保健事業担当者、個人情報保護担当者、及び検診機関と検討した。また、ライフスタイルの骨折リスクへの影響を明らかにする予備的検討として、骨折既往の有無別に骨密度や各種のライフスタイル項目を比較する患者-対照研究を実施した。
結果と考察
白人では、骨密度は骨折リスクと関連し、1標準偏差の低下毎に骨折リスクはおおむね2倍となった。骨密度による骨折リスクの予測には部位特異性があり、ある部位の骨密度はその部位の骨折をもっともよく予測した。大腿骨頚部骨折リスクを同部の骨密度で評価する際には同リスクは3程度になった。日本人のデータは2002年4月1日現在、PubMed収載の雑誌には論文としては出版されていなかった。骨折リスクの評価を行うためには、骨強度を表す骨密度に加え、転倒リスクの評価を実施する必要がある。また、骨強度と転倒リスクに直接、間接に影響する要因を明らかにし、それらが実際に骨折リスク評価に有効であるかどうかを、まず、文献的に明らかにする必要があると考えられた。次に、骨折リスクを定量的に明らかにするための回顧的コホート研究を行うため、骨粗鬆症検診受診者のデータベースの作成の準備をし、この受診者の骨折状況を把握するための骨折既往調査票を開発した。対象者は大腿骨頚部骨折と非椎体骨折の発生率を考慮して、60歳以上の女性とし、骨密度の低下により骨折リスクが2倍になった場合に有意差が得られる標本数として約3500名を想定した。調査参加市町村の担当者と詳細に協議の上、研究者側の助言や技術的援助に基づいて、市町村が骨粗鬆症検診の効果を確かめ、より効果的な検診を実現するために行う場合には、個人情報保護条例の目的外使用の禁止に抵触しない、と結論された。一方で、過去の検診データの利用につき受診者の承諾が必要である、とも結論された。データベース構築のためのコンピュータ技術的問題を解決した。現在10市町においてデータを収集している。本研究で確立した個人情報保護の規則を遵守した上でデータを移転し、研究利用する手順は、検診をはじめとする各種保健事業の評価を行う際に必要な、保健や医療データの利活用のモデルを構築するものである。さらに、岡山県の2市4町が行った骨密度測定事業へ参加した0歳以上の健常な成人女性(20~86歳)で、腰椎変形者や卵巣両側摘除者を除いた者964人を対象として、ライフスタイル上要因の骨密度と骨折既往への影響を検討した。骨折既往別に腰椎骨密度、食物摂取・栄養摂取状況・食習慣を比較したところ、骨折経験あり群では骨折経験なし群に比べて、腰椎骨密度が低く、乳製品、魚介類、大豆製品、緑黄色野菜の摂取量、蛋白質摂取量、小学生期の牛乳摂
取頻度、現在の納豆摂取頻度が低値であった。これらより、骨折リスク評価とリスクの低減のために、栄養・食生活要因をはじめとするライフスタイル要因の利用の有効性について検討していく必要があると考えられた。
取頻度、現在の納豆摂取頻度が低値であった。これらより、骨折リスク評価とリスクの低減のために、栄養・食生活要因をはじめとするライフスタイル要因の利用の有効性について検討していく必要があると考えられた。
結論
日本人においても骨密度と骨折リスクの定量的な関係を明らかにする本研究は早急に完遂させなければならない。また、骨折予防を効果的、効率的に行うためには、現状の対策を見直し、科学的に有効性が確立された方法を中心に対策を組み替えると共に、現場で利用できる骨折予防ガイドラインの作成が必要と結論された。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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