Stem cellを用いた人工皮膚の再構築に関する研究(総合研究報告書)

文献情報

文献番号
200100484A
報告書区分
総括
研究課題名
Stem cellを用いた人工皮膚の再構築に関する研究(総合研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
大河内 仁志(国立国際医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 公二(愛媛大学)
  • 玉木 毅(国立国際医療センター皮膚科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究事業(再生医療研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
皮膚の幹細胞の単離・培養法と培養液の検討を行い、付属器を含んだ人工皮膚の再構成を目的とする。
研究方法
1正常ヒトケラチノサイトの低密度培養
新生児包皮由来ケラチノサイトの培養には無血清培地(KGM-2)を用いた。まず低密度培養を可能にするために、培養液の検討を行い、ケラチノサイトの培養上清を新鮮な培養液に25%,50%,75%加えて96穴プレート上で限界希釈法により細胞増殖を比較検討した。50%培養上清を添加することにより、5個/wellの低密度培養が可能となった。
2ケラチノサイトの単細胞培養
ベックマン・コールター社のセルソーター(EPICS ALTRA)を用い、シース液として氷冷した滅菌PBSを使用し、コラーゲンIVでコートした96穴プレートにa6インテグリンないしb1インテグリンに対する蛍光抗体を用いて強発現している細胞を1個ずつ播種した。その後の培養経過を倒立顕微鏡で経時的に観察した。1個の細胞から2-3万個になるまで増殖させることに成功した。   
3マウスES細胞から表皮細胞へ分化過程の検討
連続的な分化過程においてある段階を蛍光発色にて検出するために分化特異的ケラチンに注目した。ケラチン19プロモーターをEGFP発現ベクターに組み込んだものとケラチン14プロモーターをDs-Red発現ベクターに組み込んだものをマウスES細胞にトランスフェクトし、発色した細胞をセルソーターで分取する計画であるが、トランスフェクトの効率が悪く、まだ分化段階の細胞を採取できていない。
4インテグリンによるシグナル伝達と幹細胞の維持機構
HaCat細胞を用いて幹細胞マーカーの候補であるb1インテグリン強発現ラインを樹立した。ERK, PI3K, Gab1について検討した。b1インテグリン強発現ラインではERKと PI3Kの活性の上昇が認められ、ERKと PI3Kのリン酸化には Gab1が関与している可能性が示唆された。
5皮膚由来多能性幹細胞の検討
マウスの背腹部と耳介とにおいて皮膚由来幹細胞のin vitroでの増殖能の違いを浮遊した細胞集団の形成をみるスフェア法で検討した。次に 皮膚細胞由来スフェアを分化条件下で培養し、免疫染色により神経細胞、平滑筋細胞,脂肪細胞の同定を行い、多能性を有することを確認した。 皮膚由来幹細胞のin vitroでの増殖に対する各種成長因子の作用をスフェア法により検討した。 TGFb存在下、非存在下で形成された1次スフェア由来細胞に含有される幹細胞の割合を明らかにするために2次スフェア形成率について検討した。 神経成長促進剤であるB27supplementとN2 supplementの培地添加による皮膚由来幹細胞のスフェア形成の違いを検討した。
6 牛由来材料を用いない培養法の確立
現在の培養表皮の作製法は牛胎児血清を使用するGreenらの方法が主に用いられており、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因がプリオンであると同定された状況では、牛由来材料を用いない培養法の確
立が急務である。MCDB153 type II無血清培地のアミノ酸、微量分子の配合量を検討し、さらに添加因子を種々組み合わせることで完全無血清培養法を確立する。培地の可否についてはすでに保存している角化細胞を用いる系と初代培養の系の両方で検討した。
7 完全無血清にて培養した角化細胞を用いた三次元培養皮膚の作製
三次元培養皮膚は真皮成分に相当するコラーゲンゲルと表皮を組み合わせた機能的に最もヒト皮膚に近い培養皮膚である。この三次元培養皮膚が完全無血清で作製できるかについて上記方法を用いて検討した。
8 皮膚構成細胞のstem cellの研究(Side Population cell)
造血幹細胞において色素Hoechst33342の排出能の高い細胞が幹細胞の候補であると言われていることから、皮膚においてもSP細胞が存在するか否かを検討した。
結果と考察
考察=ケラチノサイトの幹細胞の生存と増殖には自己分泌する何らかの因子が必要であることが示唆された。ケラチノサイトを1個から2-3万個にまで増殖させることができたが、分化した細胞も出現してきたので、今後未分化状態を維持する機構の解明が必要と思われる。また皮膚には表皮細胞以外に分化する能力を持った細胞の存在が示唆されたので、さらに効率よく培養できれば、臨床応用も可能と思われる。
結論
ケラチノサイトを単離し培養することができ、皮膚が幹細胞のソースになりうる可能性が示唆された。

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