心不全における遺伝子発現プロファイル作成およびテーラーメイド医療の確立(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100426A
報告書区分
総括
研究課題名
心不全における遺伝子発現プロファイル作成およびテーラーメイド医療の確立(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 宮武邦夫(国立循環器病センター)
  • 堀正二(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 村松正明(ヒュービットジェノミクス株式会社)
  • 寄兼良輔(三共株式会社)
  • 古川秀比古(三共株式会社)
  • 磯村正(葉山ハートセンター)
  • 南都伸介(関西労災病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究事業(ヒトゲノム分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
36,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人死因の第2位を占める心血管疾患の最終終末像の大半が心不全を呈するも、現在の内科的心不全治療では限界があり、心臓移植に頼るほかないのが現状である。心臓移植を内科的立場より携わる一員として、移植を受けられずに死亡する移植待機患者を経験する中で、新しい心不全治療開発の必要性を痛感する。さらに高齢者増加による心不全患者の増加は必至であり,厚生行政の最重要課題である医療費抑制の観点からもその適切な治療法の開発は急務である。しかし心不全は原因疾患が多岐にわたり病態が不均一であるという理由から心不全に関する研究は十分進んでいない。近年の遺伝子解析技術の急速な進歩により、病態解明へのアプローチに対する大転換期にある。そこで申請者は、遺伝子解析技術を駆使し新しい心不全治療の展開を目指す。
研究方法
DNAチップおよびSNPの遺伝子解析技術を用いて、ヒト、マウス、イヌとあらゆる角度から心不全に対する解析を行う。1. ヒト不全心筋の遺伝子発現プロファイルの集積心不全患者において、バチスタ手術、ドール手術、もしくは左心補助装置挿入時に摘出する心筋の一部(1cm角)からmRNAを抽出する。正常心筋のRNAは現時点において入手困難なため、海外において市販されているmRNAを使用する。心不全より得られたmRNAを用いてaffymetrixのDNAチップを用いてヒト不全心筋における遺伝子発現レベルの解析を施行する。2.心不全動物モデルの遺伝子発現プロファイルの集積圧負荷モデルなどの心不全モデルにおける遺伝子発現プロファイルの作成を行う。方法は研究計画1と同様にして行い、各群20匹を目標に作成する。これらの動物モデルに共通に変化している遺伝子は、ヒトにおいても可能性が十分考えられるために心不全関連遺伝子として下記の研究へと展開する。3.心不全特異的遺伝子の機能解析心不全特異的遺伝子の機能解析は、蛋白からのアプローチと遺伝子改変からのアプローチの2つで行う。4.心不全特異的遺伝子の遺伝子多型の検討(平成14~15年度)診断において有用になりうる遺伝子多型の検討を行う。心不全特異的遺伝子の報告されている遺伝子多型をサーチする。可能性の高い部位を中心に遺伝子多型の解析を行う。5.慢性心不全治療薬と心筋遺伝子発現パターンの解析
結果と考察
バチスタ手術、ドール手術を施行された患者より、インフォームドコンセントにより同意を取得した。同意を得られた症例の心筋サンプルより、RNAzolを用いてmRNAの抽出を施行した。mRNAをT7にて増幅を行い、Affymetrix社製のDNAチップを用いて、未知遺伝子を含めた約6万遺伝子の解析を行った。本年度において、コントロール5症例、心不全症例10症例の解析を行った。解析した結果、コントロール症例中、ANPおよびBNPが上昇している症例が3症例認められた。心不全症例のすべてにおいて、ANPおよびBNPの遺伝子発現レベルの変化が、全遺伝子のなかで最大を示した。また、変化が認められた遺伝子は、1万遺伝子中約500程度の遺伝子に変動が認められた。現在、これらの遺伝子に関して、臨床データをあわせたより詳細な解析を行っている。さらに、心不全動物モデルにおいても解析を進行している。現在は、大動脈縮窄モデルを用いた心不全モデルを用いた検討を開始している。また、ヒト遺伝子多型解析に関しても、倫理委員会の申請がほぼ完了したことから、3月よりインフォームドコンセ
ントの取得のもと、血液サンプルの収集を開始している。今回我々は、不全心筋の遺伝子発現レベルの解析を開始したわけであるが、コントロールとなる正常心筋のサンプル収集が困難であることが判明した。今回コントロールとして解析を開始したサンプルは、日本においてコントロールサンプルを得ることが難しいことから、アメリカにて市販されているサンプルを用いた。しかしながら、本サンプルを解析した結果、5症例中3例に心不全にて上昇するANPおよびBNPの上昇がみられた。本検討より、コントロールのサンプルの重要性が明らかとなった。また、心不全症例の不全心筋サンプルを10症例のDNAチップの解析を終了したが、6万遺伝子の解析を並列に解析することは非常に労力を伴い、解析方法の確立からスタートする必要が出てきた。また、臨床データとのすり合わせも重要であり、データマイニング法を駆使した解析方法を進めることが必要である。現在、いくつかの興味深い遺伝子が得られており、詳細な解析をすすめつつある。
結論
本研究により、不全心筋における遺伝子発現プロファイルの作成に着手した。現在、コントロールの遺伝子発現プロファイルの作成を中心に行い、2症例の正常心筋解析が終了している。今後、5症例を目標に正常心筋の解析を進める努力をする。バチスタ手術およびドール手術より得られた不全心筋を用いた解析に関しては、すでに10症例が終了している。臨床データとあわせた詳細な解析を進めている。

公開日・更新日

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