動脈硬化症における低分子量GTP結合蛋白質制御因子の役割の解明

文献情報

文献番号
200100425A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化症における低分子量GTP結合蛋白質制御因子の役割の解明
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松田道行(大阪大学微生物病研究所)
  • 澤 洋文(北海道大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究事業(ヒトゲノム分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は①ゲノムドラフトシークエンス情報から得られた低分子量GTP結合蛋白質のGEF,GAPの動脈硬化症における制御機構を解析すること②機能解析にあたり新規機能解析法を確立することである。情報伝達系に関わる分子のうち受容体・低分子量GTP結合蛋白質・キナーゼなどの標的分子数をドラフトシークエンスで調べたところGEF,GAPに分類される分子数が比較的少ないことから研究目的の達成の可能性が非常に高いことが予想される。機能の解明のノウハウは今後も続くプロテオミクス分野でも利用される先駈け的研究となると考えている。
研究方法
(1)新規GEF,GAPの発現パターンの解析:新規同定GEF,GAPの発現をまずRNAレベル引き続いて蛋白質レベルで検討する(2)新規GEF, GAPの基質特異性の検討:当初の計画では正リン酸を用いた基質特異性のアッセイ方法を計画したが、FRET(Fulorescent Resonance Energy Transfer)理論に基づいた、Rasファミリーのプローブをあらたに開発することでRadio isotopeを利用しないアッセイ方法を確立する。(3)動脈硬化症におけるRas制御因子GEF,GAPの活性化機構に関する研究:これまで判明しているPDGF刺激でのSos活性化機構だけではなく、EDG受容体からどのような経路を活性化することでRasが調節されるかを明らかにしていく。優勢劣性変異型GEF, GAPの蛋白質発現プラスミドの構築により細胞への導入を試みシグナリング経路を明らかにする。(4)Ras活性化部位、Rap活性化部位のリアルタイムモニターリング現在Rasの活性化と不活性化を可視化するシステムを構築している。COS-1細胞をEGF刺激した場合のRasの活性化ならびにRapの活性化を改変GFPとFRETを用いた新技術で可視化できた。これを血管内皮細胞、血管平滑筋細胞に応用し様々な刺激を加えた時のGEF/GAP活性化のバランスをモニターする。
結果と考察
研究結果= Cdc42, Rac分子の活性化モニターリングプローブの作製と基質特異性の決定: pRaichu-Racはアミノ末端から順に、YFP、スペーサー、PAK1のCRIB領域、スペーサー、Rac1、スペーサー、CFP、スペーサー、Ki-RasのCAAXボックスから成る。Raichu-Cdc42は上記のRac1の部位がCdc42に置換されている。KIAA0053、KIAA0362、KIAA0793、KIAA1204、KIAA1256、KIAA1391のcDNAはKazusa DNA Institute (KIsarazu, Japan) から供与された。以上の新規RhoファミリーのGEF/GAP活性を調べた。Raichu-RasによるRas分子の活性化の可視化Raichu-RasをHAECで発現して、Rasの活性化を行なった。Ephrin刺激によりRaichuのFRETは減少したことから、RasGAPの活性化あるいはRas-GEFの抑制が起こっていることが示唆された。一方、Raichu-Rap1を導入したHAECではRasの不活性化とは反対に細胞膜ラッフリング部位でRap1の活性化が見られた。
考 察=今年度開発したRaichu-Ras, Rap1, Rac, Cdc42を用いることで、」Rasスーパーファミリーの活性化を試験管内、あるいはリアルタイムで調べることが可能になった。Rasファミリー分子が刺激依存性に違った場所、違う時間で活性化が生ずることを明らかにしたので、今後は動脈硬化巣で発現している新規GEF/GAPをtargetとしてその活性化を調べていく。
結論
ゲノム情報で明らかにされる新規GEF/GAPについて、その基質特異性、細胞内での同分子の活性化を調べるプローブを開発し、実際に有効性を確認した。

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