有害反応の回避を目指した副作用原因遺伝子の同定とSNPの探索

文献情報

文献番号
200100419A
報告書区分
総括
研究課題名
有害反応の回避を目指した副作用原因遺伝子の同定とSNPの探索
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 寛(千葉大学薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 中村祐輔(東京大学医科学研究所ゲノム解析センター)
  • 白川太郎(京都大学大学院医学研究科)
  • 上田志朗(千葉大学薬学研究院)
  • 岸田 浩(日本医科大学)
  • 埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 北村啓次郎(雪谷皮膚科クリニック)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究事業(ヒトゲノム分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品は有効性と有害作用の相反する二面性を有しており、現代の科学技術を持ってしても有害な面を全く持たない医薬品を創製することは困難である。このわずかに残された有害作用に一部の患者は敏感に反応し、予想できない反応を示し、死に至ることもある。本研究の目的は、このような有害反応の原因遺伝子とSNP (single nucleotide polymorphism)を明かにし、有害反応を未然に回避するための有効な方法を確立することにある。そのための具体的な目標として、重篤な場合は死に至ることもある、1)薬物誘起性横紋筋融解症2)薬物誘起性QT延長症候群、まれではあるが、致死率の高い全身性の皮膚障害を引き起こす3)Stevens-Johnson 症候群(皮膚・粘膜・眼症候群)を取り上げ、その原因となる遺伝子とそのSNPを明らかにすることを目的とした。
研究方法
遺伝子解析チームとDNA試料収集チームの連携により研究を遂行した。DNA試料収集チームは4人の分担研究者からなる組織で、横紋筋融解症は上田、埜中が、QT延長症候群は岸田が、Stevens-Johnson症候群は北村が主に担当した。本年度はDNA試料収集に伴う倫理問題への対応と各有害作用の診断基準、検体収集のネットワークの確立を行った。遺伝子解析チームはHMGCoA還元酵素阻害薬による横紋筋融解症(千葉)及び薬物誘起性QT延長症候群のSNP及び機能解析(中村)、及びStevens-Johnson 症候群の原因遺伝子とSNPの探索(白川)を担当し、本年度は解析法の検討を中心に患者試料解析のための基礎検討を行った。なお、ヒトゲノム検体の収集と解析にあたっては「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針」を尊守し、研究の遂行にあたっては倫理委員会の承認を得た後、提供者の同意を必ず得て行っている。また、研究対象者の不利益、危険性を可能な限り排除し、ゲノム情報及び個人情報を漏洩させない情報管理体制のもとで研究を遂行した。
結果と考察
研究結果と考察:
1) 薬剤性横紋筋融解症
診断基準と倫理委員会申請のための書類作成が終了し、千葉大学医学部付属病院とその関連病院、国立精神神経センター武蔵病院を中心に患者試料収集のためのネットワークを確立し、試料収集のための倫理委員会申請を行った。現在、HMGCoA還元酵素阻害薬を服用患者で横紋筋融解症が疑われる高度のCPK上昇を示した患者約20名がリストアップされており、これらの患者について倫理委員会の承認が得られ次第DNA試料の収集を開始する予定である。SNP解析に関しては候補遺伝子である極長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ遺伝子(VLCAD)、カルニチンパルミトイル転移酵素遺伝子の総ての既知SNPに関する解析法を、HMGCoA還元酵素阻害薬の体内動態関連遺伝子についてはCYP3A4、4種、MPR1、3種のSNP解析法を確立した。また、候補遺伝子の絞り込みのため原因不明のミオグロビン尿症患者56例を対象にVLCADの抗体を用いた免疫染色を行い2例の完全欠損と10例の部分欠損例を見出した。これは原因不明のミオグロビン尿症患者の約1/4にあたることから、VLCADは薬剤性横紋筋融解症の有力な候補遺伝子と考えられた。VLCADの既知SNPについては総て解析法の確立が終了していることから患者試料が集まり次第解析を開始する予定である。
2)薬剤性QT延長症候群;薬剤性QT延長症候群の診断基準の作成と症例の実体を明らかにするため、不整脈関係の専門医を中心に102施設197名にアンケート調査を実施しした。この結果を基に薬剤性QT延長症候群の診断基準を作成すると共に、岡山大学の協力を得て20例の薬剤性QT延長症候群の患者からDNA試料を収集した。SNP解析に関しては候補遺伝子であるKCNQ1, KCNH2, SCN5A, KCNE1, KCNA10, KCNA5, KCNAB1, KCNB1, KCND3, KCNIP2, KCNJ11, KCNK1, KCNK6, ABCC9, ADRB1, CACNA1C, SLC18A1, SLC18A2, SLC6A2 それぞれの蛋白をコードしている領域全てにプライマーを設計し、健常人DNA試料をPCRで増幅した後、SSCP法にてスクリーニングを行った.異常バンドの検出されたサンプルについて,再度 PCRをかけ,ダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定し,異常バンドを来した塩基変化を同定した.その結果、合計89個のSNPを同定した。 健常人に見出された候補遺伝子の89個のSNPのうち、27個はアミノ酸置換を伴うことから、遺伝子産物の機能修飾にかかわる可能性が高いと推定された。第2年度から前倒しでこれらの遺伝子の機能解析を始め、薬剤性QT延長症候群の原因となる候補遺伝子の絞りこみと、患者試料を用いたassociation studyを行っていく予定である。
3)Stevens-Johnson症候群; 埼玉医大を中心に症例の再評価を行った。その結果30例のStevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死融解症の症例が抽出された。これらの症例についてDNA試料を収集するため説明書、同意書を作成し、埼玉医大倫理委員会に倫理審査を申請した。また、Stevens-Johnson症候群研究大学グループ(愛媛大学、横浜市立大学、杏林大学等)の協力を得てStevens-Johnson症候群の診断基準を作成した。SNP解析については未知遺伝子SNP検索技術の確立及び少数患者での予備検討を行った。まず、マイクロサテライト法を用いて、全ゲノムについてStevens-Johnson症候群患者関連部位及び、肝臓の代謝酵素におけるSNPのスクリーニングを行い、臨床情報(重症度・家族歴、検査データ、使用薬剤)を整理・解析しデータベース化を行っている。現在までに、薬剤代謝酵素・トランスポーター領域で5601SNPs、薬剤レセプター領域で960SNPsが完了した。SNPを用いたゲノムワイドな解析研究は諸についたばかりでありる。本研究の遂行により、現時点では明らかになっていないStevens-Johnson症候群の発症、及び病態に関連する遺伝子が同定され、発症の予防への道が開かれることが期待される。
結論
1)薬剤性横紋筋融解症; 千葉大学付属病院を中心とする千葉県下の主要病院と国立精神神経センターからなる患者試料収集ネットワークを構築した。一方、原因不明のミオグロビン尿症患者の約1/4にVLCADの完全あるいは部分欠損を見出し、VLCADが薬剤性横紋筋融解症の有力な候補遺伝子であることを明らかにした。患者試料が集まり次第VLCADを中心とした候補遺伝子のSNP解析法開始する予定である。2)薬剤性QT延長症候群; 薬剤性QT延長症候群の診断基準を作成すると共に、岡山大学の協力を得て20例の薬剤性QT延長症候群の患者についてDNA試料を収集した。一方、心筋に発現しているイオンチャネルを中心に19個の候補遺伝子のSNPを健常人試料を対象に解析したところ89個のSNPが見出され、うち27個のSNPはアミノ酸置換を伴うものであった。第2年度からはこれらの変異の機能解析を行い候補遺伝子を絞り込むと共に患者試料を用いたassociation studyを行っていく予定である。3)Stevens-Johnson症候群; 埼玉医大総合医療センターとStevens-Johnson症候群研究大学グループ(横浜市立大学、杏林大学、愛媛大学等)を中心とした患者試料収集ネットワークを構築すると共に、Stevens-Johnson症候群の診断基準を作成した。SNP解析については未知遺伝子SNP検索技術の確立及び少数患者での予備検討を行った。本研究の進展により、スティーブン・ジョンソン症候群の発症、及び病態に関連する遺伝子が同定され、予防の道が開かれることが期待される。

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