知的障害者の利用者主体の地域生活援助サービス推進に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号

200100342A

報告書区分

総括

研究課題名

知的障害者の利用者主体の地域生活援助サービス推進に関する研究(総括研究報告書)

課題番号

研究年度

平成13(2001)年度

研究代表者(所属機関)

小林　繁市(北海道社会福祉事業団伊達市地域生活支援センター)

研究分担者(所属機関)

三田優子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所)
山田優(社会福祉法人愛光園知多地域障害者生活支援センターらいふ)
中里誠(社会福祉法人白根会白根青年寮)
林弥生(社会福祉法人愛育会若竹通勤寮)

研究区分

厚生科学研究費補助金総合的プロジェクト研究分野障害保健福祉総合研究事業

研究開始年度

平成13(2001)年度

研究終了予定年度

平成15(2003)年度

研究費

5,000,000円

研究者交替、所属機関変更

研究報告書（概要版）

研究目的

先進国で唯一、施設入所者が増加しているわが国で、ノーマライゼーションが具現化されるために、地域生活支援サービスのあり方と援助方法を明らかにすることを目的とする。特に、知的障害者本人とともに研究を行なうことも研究目的のひとつとする。

研究方法

①平成元年に制度化された知的障害者生活援助事業(グループホーム)の全国実態調査を通して、地域生活支援の実際と課題を分析した(調査票を用いた郵送調査)。なお、分析にあたっては日本知的障害者福祉協会、全日本手をつなぐ育成会等の協力を得た。
②地域生活移行に効果的な実践を行なっている全国5施設を、平成11年実施の全国入所施設実態調査結果(厚生科学研究・主任研究者　渡辺勧持)から抽出し、独自の工夫やプロセスを生み出している自活訓練事業の実態を調査し、自立支援のあり方を検討した。
③全国で当事者活動に参加している8人の知的障害者本人とともに、入所施設での実態、援助のあり方、地域移行への取り組み等を議論した。その結果、職員むけマニュアルとして「地域移行のための個別支援計画作成のためのガイドライン」を作成した。わかりやすい、話しやすい会議運営を心がけた。また各当事者の会に持ち帰り、その意見を反映させながら会議をすすめた。
④平成15年度より導入の支援費制度を前にし、また、平成15年度から10年間のものとして策定される「新障害者プラン」について提言を行なった。

結果と考察

①調査時点(平成13年8月現在)で2197ヶ所存在したグループホームのうち、74.9%の1646ヶ所から回答を得た。「入居者の重度高齢化が進んでいる」「入居者の就労問題」「世話人の確保困難」「経済基盤の貧しさ」等が目立つ結果となったが、「個室化がすすんでいる」「入所施設からの受け皿になっている」ことも明らかになり、一層の設置緩和がすすみ、地域移行が促進する必要をまとめた。
②自活訓練事業から、地域移行を促進する事業にするには「施設長のリーダーシップが重要」「重度・齢者も対象とすることが重要」「施設敷地内ではなく、地域での訓練が重要」「本人利用負担料徴収」など、独自の事業補助が認められた。柔軟な自活訓練事業および移行のための事業を展開することで、長期入所者についても地域生活移行が促進されると考えられ、そのための補助を確立する必要があると分析した。
③「地域移行のための個別支援計画作成のためのガイドライン」では、支援費制度の「契約」「説明」の重要性を鑑み、また、知的障害者本人が最も発言した「職員のあり方、支援のあり方」を丁寧に盛り込んだ。各施設での実践に参考となるべく、改定し、広く配布予定である。
④ガイドラインの視点は、社会福祉基礎構造改革を受け、「個人の生活に焦点をあてる」「集団処遇でない個別の支援が重視されること」「援助計画の検証が重要である」「知的障害者観の変化、すなわちできないことがあっても地域移行のために入所施設は努力・工夫を行なうべきであること」「わかりやすい情報提供と利用者の声にきちんと耳を傾けることを職員の専門性の重要点としたこと」などである。
⑤利用者である知的障害者が新障害者プランや市町村障害者計画策定時に関わることが少なく、社会福祉基礎構造改革を迎えても、なお、利用者が中心の、利用者が参画する福祉施策策定ではないことが伺えた。
⑥入所施設における人権侵害や虐待等、密室化により表面化しない問題について、知的障害者本人からの問題提起が多かった。障害者本人がオンブズマンになるなど第三者評価に参加することも提案された。
⑦入所施設偏重の予算配分を地域支援サービス中心にシフトし、障害の程度に関わらず地域生活を可能にすることがコスト面でも急務であると分析した。
⑧以上から、「新障害者プランへの提言」を行なった。

結論