精神障害者の社会復帰に向けた体制整備のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200100315A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の社会復帰に向けた体制整備のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
北川 定謙(埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 谷中輝雄(全国精神障害者社会復帰施設協会)
  • 竹島正(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者社会復帰施設は、病院と地域の中間にあって回復途上にある精神障害者の社会復帰援助を専門的に行うことを目的として設置され、障害者プランにもとづき整備が進められてきた。平成11年度の精神保健福祉法改正においては,新たに地域生活支援センターが社会復帰施設として法定化され、市町村において居宅生活支援事業が実施されることとなった。グループホーム等で生活する単身者は増加しており、保護者の高齢化等とあいまって,精神障害者社会復帰施設の果たす役割はますます重要となっている。また障害者プランは平成8年度からの7ヵ年計画であって平成14年度はその最終年度にあたるため、社会復帰施設整備の新たな計画が必要となっている。社会復帰施設の地域における活動の進展とともに、どのようなシステムが必要とされ、社会復帰施設の整備をどのように進めていくべきか、先行的に活動している地域の実地調査を行う。また精神障害者地域生活支援センターは、地域の精神保健および精神障害者の福祉に関して、相談、指導および助言、連絡調整を身近で行う施設として役割が期待されている。しかし、地域生活支援センターで実施されている業務の内容を、共通の定義を用いて相互比較可能なかたちで体系的に測定することは行われていない。そこで地域生活支援センターの業務の測定方法を確立するための調査を実施する。
研究方法
「精神障害者社会復帰施設から地域福祉への展開とこれからの展望に関する研究」(谷中輝雄)においては,社会復帰施設が精神保健福祉活動を先行的に進めている地域である北海道十勝地域(人口36.4万人),地域生活支援センター1箇所設置が現実的な取組みを伴っている埼玉県東松山市(人口9.2万人)、人口10-15万人規模の区から成り立っている政令指定都市の仙台市(人口96.5万人)を選び,これら3地域における地域システムのあり方や施設の整備計画について、聞き取り調査を行った。
「地域生活支援センターの業務測定に関する研究」(竹島正)においては,地域生活支援センター4施設の聞き取り調査をもとに,14日間に実施された地域生活支援センターの業務について、調査票を用いて体系的に業務測定を行った。
結果と考察
「精神障害者社会復帰施設から地域福祉への展開とこれからの展望に関する研究」(谷中輝雄):北海道十勝地域からは、地域で精神障害者を支えていくための長年に渡る社会資源開発の経過と,近い将来にどのような地域における支援システムを想定しているかについて情報を得た。埼玉県東松山市からは、人口9.2万人を中核にしつつも、保健福祉圏域を想定した将来的なシステムのあり方,三障害統合のあり方、地域住民への啓発等について情報を得た。仙台市からは、三障害を統合した総合的なサービス、すなわちケアマネジメントを中心にした活動のあり方について情報を得た。その結果、人口規模30万人は圏域として大き過ぎるため,きめ細かなサービスを提供することは困難であり、人口15万人を1つの単位としてシステムを考える必要があること、さらに理想的には人口3~5万人を1つの単位とすれば、3障害並びに高齢者サービスとの整合性を図れる見通しを持てた。今後の展望として、圏域を設定して、計画的・戦略的に地域支援システムを構築することが、重要であるとの結論に達した。さらにケアマネジメントの導入によって、市町村が窓口になって総合的なサービスを提供することの必要性が示唆された。社会復帰施設の整備にあたっては,施設を地域システムの中に組み入れて、利用者主体の地域生活支援を実現し、居宅生活支援活動を十分に展開できるような体制づくりが重要である。
「地域生活支援センターの業務測定に関する研究」(竹島正)においては,全国精神障害者社会復帰施設協会から紹介を受けた全国12か所の地域生活支援センターに調査への協力を依頼した。調査期間は3月4日から17日までの14日間で、11ヵ所のセンターから回答が得られた。対象施設の設置主体は、医療法人4、社会福祉法人3、地方公共団体4であった。運営主体との関係は、医療法人と社会福祉法人は設置主体と運営主体が全て一致していたが、設置主体が地方公共団体であった施設の運営主体は社会福祉法人1、社団・財団法人1、その他の法人1、その他1、と多様であった。施設の開設年次は、1996年1、1997年4、1998年2、1999年1、2000年2、2001年1であった。
全ての対象施設で利用者の登録制をとっていた。支援活動の内容については、憩いの場の提供は全ての対象施設で実施されており、家事援助、公共機関の利用援助、レクリエーションへの参加、就労支援などについてもほとんどの施設で実施されていた。行政、保健福祉施設、医療機関などの他の機関・団体との関わりについては、全ての対象施設が何らかの機関・団体と関わりがあった。関わっていると回答した施設が多かったのは、精神保健福祉センター、保健所、精神障害者社会復帰施設、作業所、グループホーム、医療機関、家族会、市の相談窓口やサービス機関、社会福祉協議会、精神障害者以外の障害者対象の福祉施設や支援センター、高齢者対象のサービス機関、ボランティアセンターであった。地域住民への広報活動および地域とのネットワークづくりや調査研究・普及・広報活動のための会議への出席は、全ての施設で実施しており、地域生活支援のためのボランティアの育成、当事者グループの運営援助についても多くの施設で実施されていた。研究・調査活動については、約半数の施設が13年度に何らかの研究・調査活動を実施したと回答した。調査期間中のセンターの業務時間を主な業務別に調査した結果、どの業務についてもセンター間で業務時間にばらつきがあった。これは、施設毎にどの業務に力を入れて取り組んでいるかに違いがあることを反映していると思われ、施設ごとの特徴を表していると考えられる。相談業務ついては、電話、面接双方において、施設間のばらつきがあった。また、その内容別の件数では、電話相談においては、日常生活支援的な内容が最も占める割合が高く、次にセンターへの問い合わせ、専門的対応が必要なものの順であり、面接においては、日常生活支援的な内容、専門的対応が必要なもの、センターへの問い合わせの順であった。今回の調査内容で網羅されていない、地域生活支援センターの主要な業務としては、グループホーム・共同住居への支援、ケアマネジメント試行的事業検討委員会への参加、地域交流会の企画・参加、軽作業の実施、などが挙げられていたが、多数の対象施設から共通して挙げられていた業務はなかったことから、ほぼ今回の調査内容で主要な業務に関して測定するための大枠を示すことができたと思われる。
結論
「精神障害者社会復帰施設から地域福祉への展開とこれからの展望に関する研究」によって,平成14年度が最終年度となる障害者プラン以後の、精神障害者社会復帰施設から地域福祉への展開に関して、方向性を検討するための重要な情報が得られた。今後は、この研究で得られた方向性について施策化の可能性を検討するとともに,必要な資源整備量について推計を行うことが重要と考えられる。「地域生活支援センターの業務測定に関する研究」によって,地域生活支援センターの業務を測定する方法の大枠を示すことができた。今後は平成14年度から市町村において居宅生活支援事業が実施されることを踏まえて,本研究の成果を踏まえた地域生活支援センターの全国調査を行ない,そのあり方を検討することが重要と考えられる。

公開日・更新日

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