文献情報
文献番号
200100313A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害者のための専門診療科医療の確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 正高(社団法人日本知的障害福祉連盟)
研究分担者(所属機関)
- 馬場輝実子(国立療養所長崎病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
知的障害をもつ人は、青壮年期は急性死が多く、加齢とともに視覚、聴覚、内分泌代謝機能の退行にともなう健康障害が多い。これらは意思伝達の困難のために、病気の発見が遅れ、専門の医療を受けにくくして予後を悪くしている。本研究は、知的障害をもつ成人の専門診療科、特に外科系の医療の実態を調査し、そのニーズとそれを困難にしている各種の条件を明らかにすることを目的とした。
研究方法
以下の点について調査と資料の解析した。 1)専門診療科への受診状況の調査:専門診療科として、耳鼻科、眼科、婦人科、外科を選び、それぞれにおける知的障害者の診療実績を調査した。また、診療を積極的に行っている障害者専門機関の医師、支援者などに対し、専門診療科への受診依頼の実績とその結果についての調査を行った。 2)急性死のリスク評価と対策の立案:背景因子を調査し、リスク因子の評価尺度を作成する資料とした。 3)歯科医療のニーズと地域での対応の調査:障害者歯科を広告している医療機関の医師から、受診経路、診療内容、受診を困難にしている要素とその対策を調査し、同時に、地域の歯科保健担当者の調査と照合した。 4)研究組織:九州および本州地区(東京、埼玉、滋賀、山口など)それぞれに合計40名の研究協力者を配置して調査を実施した。
結果と考察
九州地区の分担研究者から共同研究の報告がなされた。また、本州地区の研究協力者からは家族や居住施設にあって診療を依頼する立場、および医療機関の専門診療科として専門的な診療サービスを提供する立場からの調査報告を得た。その表題は以下の通りであった。
1.診療ニーズと受診状況 (1)分担研究 九州地区 (2)協力研究 本州地区
2. 専門診療科における知的障害者診療の内容
3. 急性死への取り組み
4. 知的障害者の健康をめぐる国際的動向
以下のように要約された。
1. 障害を持たない人にも一般的に認められる疾病は知的障害者にも多く認められた。しかし、受診理由と臨床診断名の分布は知的障害者を多く扱う医療機関においては一般医療機関の専門診療科のそれといくつかの差異が認められた。外科における消化器疾病、特にイレウスや逆流性食道炎、生活習慣病としての肥満、糖尿病に続発する下肢の潰瘍、耳鼻科における小児難聴および壮年期の聴力低下、喉頭気管等の気道不全、外耳孔異物、眼科における斜視、弱視、先天性および初老期白内障、外傷性網膜剥離等は特徴的であった。
2. 専門診療科の医療を受けるにあたり障壁となったのは、受診のための適切な支援者が得難いこと、診療についての医療機関側の熟練の不足、待合室や診療室等の構造の不便さが一般的に指摘された。それらが適切に配置され多数の障害者が訪れている診療機関の意見としては、支援者の熟練、時間をかけて診療する、障害者にともない易い症状の知識、慣れた医療チームの養成等をあげるところが多かった。
3. 歯科診療において一次医療や口腔保健を地域の診療所と協力する件については、慣れた専門機関に定着する傾向が著明であり、一次診療機関の受け入れ体制の向上が必要と考えられた。
今回の報告をみると、重い疾病や稀な合併症は比較的少なく、外科系の疾病による死亡例は内科系に比して少なかった。しかし、眼科における自傷、ダウン症における白内障や眼振、発作や転倒による外傷や骨折、異物による耳孔閉鎖、薬物によるイレウスや尿閉、胃食道逆流にともなう食道潰瘍など、特徴的な合併症も多くみられた。外から判断できる疾病に比し内臓の特徴的なものは比較的少ないが、発見の精度について検討を要する。専門診療科への診療の機会については、地域や生活状態などによる差がかなり見られた。また、一般科医師と専門診療科医師との協力が円滑でない事例も少なくないようにみえた。これらの医療の障壁を低くする努力が必要である。
1.診療ニーズと受診状況 (1)分担研究 九州地区 (2)協力研究 本州地区
2. 専門診療科における知的障害者診療の内容
3. 急性死への取り組み
4. 知的障害者の健康をめぐる国際的動向
以下のように要約された。
1. 障害を持たない人にも一般的に認められる疾病は知的障害者にも多く認められた。しかし、受診理由と臨床診断名の分布は知的障害者を多く扱う医療機関においては一般医療機関の専門診療科のそれといくつかの差異が認められた。外科における消化器疾病、特にイレウスや逆流性食道炎、生活習慣病としての肥満、糖尿病に続発する下肢の潰瘍、耳鼻科における小児難聴および壮年期の聴力低下、喉頭気管等の気道不全、外耳孔異物、眼科における斜視、弱視、先天性および初老期白内障、外傷性網膜剥離等は特徴的であった。
2. 専門診療科の医療を受けるにあたり障壁となったのは、受診のための適切な支援者が得難いこと、診療についての医療機関側の熟練の不足、待合室や診療室等の構造の不便さが一般的に指摘された。それらが適切に配置され多数の障害者が訪れている診療機関の意見としては、支援者の熟練、時間をかけて診療する、障害者にともない易い症状の知識、慣れた医療チームの養成等をあげるところが多かった。
3. 歯科診療において一次医療や口腔保健を地域の診療所と協力する件については、慣れた専門機関に定着する傾向が著明であり、一次診療機関の受け入れ体制の向上が必要と考えられた。
今回の報告をみると、重い疾病や稀な合併症は比較的少なく、外科系の疾病による死亡例は内科系に比して少なかった。しかし、眼科における自傷、ダウン症における白内障や眼振、発作や転倒による外傷や骨折、異物による耳孔閉鎖、薬物によるイレウスや尿閉、胃食道逆流にともなう食道潰瘍など、特徴的な合併症も多くみられた。外から判断できる疾病に比し内臓の特徴的なものは比較的少ないが、発見の精度について検討を要する。専門診療科への診療の機会については、地域や生活状態などによる差がかなり見られた。また、一般科医師と専門診療科医師との協力が円滑でない事例も少なくないようにみえた。これらの医療の障壁を低くする努力が必要である。
結論
知的障害者が内科系または歯科等の医療を受けた理由、医療内容と結果、医療を受けるにあたっての障壁となった内容等について調査を行った。障害者医療を行う医療機関の各専門診療科には知的障害者に特徴的な疾病異常が集まる傾向があった。診療機関からは本人の状態を正確に伝えられる介護者と入院時に安心できる付き添い人の存在が共通の要望であった。支援者や内科系の紹介医師からは引き受けてくれる専門診療科の存在と熟練した扱いのを希望が多かったが、地域差もみられた。
公開日・更新日
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