障害者ケアマネジメントの総合的推進に関する研究

文献情報

文献番号
200100304A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者ケアマネジメントの総合的推進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 政和(大阪市立大学大学院・生活科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 加瀬進(東京学芸大学・教育学部)
  • 大島巌(東京大学大学院・医学系研究科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は平成12年度に引き続き、身体障害者ケアマネジメントに関する研究、知的障害者ケアマネジメントに関する研究、精神障害者ケアマネジメントに関する研究、の障害別に研究を推進した。
身体障害者ケアマネジメント研究では、①平成12年度に引き続き障害者ケアマネジメントの概念研究を行うとともに、②市町村障害者生活支援事業におけるケアマネジメント従事者のケアマネジメント実践の分析を行って、の2つの研究課題を設定した。知的障害者ケアマネジメント研究では、平成12年度研究で行った知的障害者ケアマネジメント推進事業受託事業所に対する調査結果をもとに、サービス調整会議の設置・運営マニュアルの第1次案を策定することをとを目的とした。精神障害者ケアマネジメント研究では、精神障害者に対するケアマネジメントの実施体制を整備し、その普及をはかるために、①精神障害者ケアガイドラインに基づいて行われている試行的事業の実施体制上の問題点の整理、②昨年度改定した用具類の手引きを作成し、その上で用具類の有用性の検討、③直接サービスを伴うケアマネジメントの実施形態について先進諸国の実例を検討し、日本における効果的な実施のための方策を検討、の3点を目的とした。
研究方法
1)身体障害者ケアマネジメント研究
ケアマネジメントの概念研究では、ケアマネジメント実践にかかわる諸概念の文献研究を行った。市町村障害者生活支援事業におけるケアマネジメント従事者のケアマネジメント実践の分析では、支援事業受託機関のケアマネジメント従事者を対象に調査票を用いた郵送調査を実施した。
2)知的障害者ケアマネジメント研究
平成12年度調査で回答を得た受託事業所のうち、ワーキンググループへの参画に了解を得られた事業所と研究協議会をもち、①各エリアにおけるサービス調整会議の設置・運営に関する事例研究を行い、②整理された事例研究をもとにサービス調整会議設置・運営マニュアル第一次案の策定を行った。
3)精神障害者ケアマネジメント研究
①研究委員会の開催:調査実施方法について検討するとともに、精神障害者ケアマネジメントの日本における効果的な実施のための方策を討議した。②都道府県における精神障害者ケアマネジメント試行的事業の実施状況調査:都道府県・政令市主管課を対象に、精神障害者ケアマネジメント試行的事業の実施状況と課題を把握するための調査を行い、実施体制上の問題点を昨年度に引き続き整理し、前年度からの進行状況を把握した。また用具類の有用性についても明らかにした。③改訂版用具類の手引き作成と有用性の検討:昨年度作成した精神障害者ケアマネジメント用具類改訂版の手引きを作成した。また、用具類を使用したケアマネジメント従事者と利用者に記入してもらう自記式の調査票を用い、改訂された用具類の有用性を検討した。④先進諸国のケアマネジメントシステムの資料収集と比較検討:直接サービスが伴う、集中型ケアマネジメントを中心に、先進諸国3カ国(米、英、ニュージーランド)の計10都市での取り組みの状況を研究会方式で検討した。
結果と考察
1)身体障害者ケアマネジメント研究
ケアマネジメント実践にかかわる概念研究では、「ストレングスモデル」「エンパワメントアプローチ」に基づいたケアマネジメント実践のあり方について考察を深めることができた。市町村障害者生活支援事業
におけるケアマネジメント従事者の実践分析では、130名(有効回答率は61.9%)から回答を得た。事業受託機関の種類は自立生活センターが26箇所(20.0%)、社会福祉協議会24箇所(18.5%)、施設・行政関係48箇所(36.9%)、その他福祉法人等 32箇所(24.6%)となった。ケアマネジメントプロセスのなかの実施度の高い項目を支援担当者の所属機関別にみた場合、自立生活センター以外の機関で利用者の把握の際の公的組織とのつながりや、ケアプラン実施の際の他機関、組織への働きかけ等の実施度が高かった。これに対し、自立生活センターの場合は利用者の把握やアセスメントに関わる項目の実施度が高い傾向がみられた。一方、実施度の低い項目については、いずれの機関も契約書類を交わすことや個人別プログラムの作成等の実施度が低く、また自立生活センター以外の機関では、「ピア」による働きかけが全般的に低い傾向がうかがえた。このような結果から、自立生活センターに所属する者の場合、アセスメントの際に利用者本人の状況や意志を重視するという、主に個人に焦点をあてたケアマネジメントの実施度が高い傾向がうかがえた。一方それ以外の組織・機関に所属する者の場合、ケアプラン作成やその実施の際に家族や他組織への働きかけを行うという、主に外部との連携に焦点をあてたケアマネジメントの実施度が高い傾向がうかがえた。こうした傾向の違いは、経験年数や研修受講の有無という要素もさることながら、市町村生活支援事業の受託機関・組織の運営理念・方針の違いによるところが大きいものと考えられる。
2)知的障害者ケアマネジメント研究
研究協議会においてサービス調整会議事例研究をした結果、サービス調整会議は地域事情に設置経過・運営上のポイントも異なるが、「本推進事業を契機に充実した事例」、「既存の会議をベースに発展させた事例」、「行政がチームをリードした事例」、「サービス事業所がリードした事例」、等の類型化の可能性が示唆された。これらは特にマニュアル作りにおける立ち上げの部分に有用な情報として確認された。従ってこうしたマニュアル作りに際しては、地域事情に応じて必要要件を取捨選択し、かつ具体的な会議運営方法をイメージできる工夫が必要であると考えられる。
3)精神障害者ケアマネジメント研究
精神障害者ケアマネジメント試行的事業の実施状況の分析では、大部分の都道府県・政令市(96%)で同事業が実施されていたことが明らかになった。推進事業は、障害者ケアマネジメント体制実施推進事業実施要項の中で、Aタイプ(障害別の従来型)とBタイプ(3障害合同を含む型)が示されたが、大部分がAタイプを実施しており、Bタイプで推進事業を実施したのは2県にとどまった。また実施事業の困難についても、各自治体は試行事業を何とか実施しているものの、事業の本格実施に対して多くの疑問や不安をうかがえる意見が寄せられた。改訂版用具類の手引き作成とその有用性の検討では、研究会での検討を経て、改訂版用具類の手引きを作成した。この手引きは前年度までの試行的事業の経験に基づき実践現場での有用性と手続きの操作的基準の明確化を重視した。有用性の検討については、ケアマネジメント従事者、利用者共に用具の改訂箇所についての評価は概ね肯定的で、改訂された精神障害者ケアガイドライン用具類の実用性と有用性がほぼ確認できたと思われる。先進諸国のケアマネジメントシステムの比較検討では、3カ国のいずれの都市とも、直接サービスが伴う集中型ケアマネジメントが中心であり、特に障害の重い人たちには集中的ケアマネジメントが体系的に整備されつつあった。また、ケアマネジメントの提供体制整備の必要性や財政分析の重要性、チームアプローチのあり方、利用者参加の重要性、ケアマネジメント従事者の質の確保と研修の重要さ、多様なアセスメントとケア計画方法の可能性などについて示唆を得た。
結論
身体障害者ケアマネジメント研究では、今後各市町村において障害者ケアマネジメントを実行していくうえで、各ケアマネジメント実行機関の特性をいかしたケアマネジメントシステムを構築するうえで重要な所見を得た。また、障害者ケアマネジメント従事者養成プログラム改良に際しての重点を置くべきポイント(契約行為)についての所見を得た。知的障害者ケアマネジメント研究では、推進事業受託事業所でも調整会議は全体として難航していることが判明し、さらにサービス調整会議の設置・運営マニュアル策定に際する必須要件についての所見を得た。精神障害者ケアマネジメント研究では、都道府県・政令市主管課を対象に調査を行った結果、精神障害者ケアマネジメント事業の本格実施の際の課題点等にについて所見を得た。また同調査では平成12年度開発した用具類の有用性についても明らかになった。さらに、先進諸国の精神障害者ケアマネジメント実施体制を検討した結果、日本でも実施可能な集中型ケアマネジメント体制のあり方について、医療機関や社会復帰施設での実施、家族支援の提供やインフォーマル資源の形成を重視すること、急性期ケアの一貫としての有期限のサービスの提供という視点が当面のところ重要であることが示唆さらた。

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