WHO国際障害分類第2版の信頼性・妥当性・実用性に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100303A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO国際障害分類第2版の信頼性・妥当性・実用性に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
上田 敏(日本障害者リハビリテーション協会)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤久夫(日本社会事業大学)
  • 山崎晃資(日本児童青年精神医学会)
  • 大橋謙策(日本社会福祉学会)
  • 大川弥生(国立長寿医療研究センター)
  • 丹羽真一(日本精神科診断学会)
  • 加我君孝(東京大学)
  • 西島英利(日本医師会)
  • 増田寛次郎(関東労災病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成11年度の厚生科学研究費補助金特別研究事業「WHO国際障害分類改定に関する研究」の成果ならびに平成12年度の厚生科学研究費補助金保健福祉総合研究事業「WHO国際障害分類第2版の信頼性・妥当性・実用性に関する研究」の成果に立って、1)全世界にわたる研究調査に基づきベータ2案に更に手を加えて2001年5月に第54回世界保健会議(WHO総会)によって採択されたICF:国際生活機能分類(国際障害分類改定版)の日本語訳の検討、および、2)ICF:国際生活機能分類の信頼性・妥当性・有用性の検討を行い、更にICIDH-2ベータ2案とICFとの差異に関する理論的・実際的検討を行なった。またあわせて各種障害について適用上の問題点を実例を通して研究した。これらを通して、ICFが各種障害者に関する疫学的研究、臨床的手段、また障害者の施策の上でどのように役立つかを検討した。
研究方法
Ⅰ.ICF(国際生活機能分類)に関して1.翻訳A.検討事項:昨年度に行なったICIDH-2ベータ2案の日本語訳を出発点として、2001年5月に採択されたICF:国際生活機能分類(国際障害分類改定版)の翻訳を行い、厚生労働省による翻訳作業に協力した。B.対象:2001年10月のICIDH-2 Pre-final版に準拠し、その後の2002年1月のFinal版ならびに同年5月の採択後に微調整を加えて同年9月に完成したICFによって必要な修正を加えた。C.検討方法:分担研究者の行なった翻訳を主任研究者が最終的に修正し確定した。2.信頼性・妥当性・有用性の研究A.検討事項:本分類が我が国において実際の使用に耐えるかを確認するために日本語訳を用いて信頼性・妥当性・有用性を検討した。B.対象:1)標準ケースサマリー(WHO作製)による信頼性研究参加者30名、2)現実のケースによる信頼性研究25例、3)記録(カルテ)による信頼性研究30例、4)妥当性の検討85例を対象とした。C.検討方法:1)標準ケースサマリー:章レベルのコーディングの一致率を計算した。2)現実のケース:同じく章レベルのコーディングの一致率を計算した。3)記録:同じく章レベルのコーディングの一致率を計算した。4)妥当性:包括的QOL評価表と本法を併用し、項目ごとに順位相関係数を計算した。
Ⅱ.ICIDH-2ベータ2案とICFとの差異A.検討事項:ICFは基本的骨格はICIDH-2ベータ2案と変わらないが、活動と参加の共通リスト化、活動の評価点における「能力」の導入などかなり大きな変化もみられており理論的検討およびそれに基づいた実際的適用基準の検討が必要となった。B.対象:ベータ2案とICF、特にそれらの序論・付録の比較検討。C.検討方法:各種資料および主任研究者らが参加した各種国際会議における討論を参考としつつ検討した。
結果と考察
Ⅰ.ICF:国際生活機能分類に関して 1.昨年度のベータ2案の日本語訳を出発点として、ICFの翻訳を行い、厚生労働省による翻訳作業に協力した。2.本分類が高い信頼性と妥当性をもつことが確認された。3.本分類は臨床的介入の結果を鋭敏に反応する点で優れた実用性を有することが確認された。
Ⅱ.ICIDH-2ベータ2案とICFとの差異について。 ベータ2案とICFとの相違点に関する検討を行なった結果、以下のような点が確認された。1.活動と参加の共通リストに関しては①活動の項目と参加の項目とが重複がないように両者間に画然とした線引きを行う考え方、②活動と参加の項目は全体にわたって重複して用いるが、参加に関しては中項目までの評価にとどめる(活動は小項目まで評価する)考え方、③活動と参加の両者について必ずしも全項目ではないが重複を認める(共に小項目まで評価する)考え方、④活動と参加を全項目について小項目まで評価する考え方という4つのオプションが提出されているが、この中では③をとるべきであるとの結論に達した。そして活動と参加のぞれぞれについて具体的にどの項目をとるべきかについての試案を作製した。2.活動の評価点における「能力」の導入について。従来の「実行状況」の評価とならんでICFであらたに導入された「能力」の評価はこれまでリハビリテーション医学・介護等で強調されたきた臨床現場における「できるADL(できる活動)」と「しているADL(している活動)」の厳密な区別の必要性からみて非常に歓迎すべき改善点であることが確認された。すなわち「できる活動」(能力)と「している活動」(実行状況)との両者を共に評価することがADL(および活動一般)の水準向上を目的とする臨床的介入にとって重要であり極めて有効であることがリハビリテーション医学および介護の現場において確認されており、ICFはそのような原則を国際的に支持するものと考えられ、ICFの実践的な意義を示すものである。3.今後に残された問題として、(1)活動と参加の項目選択基準の確定、(2)活動の「能力」評価点のコーディングの方法の確定、(3)障害の主観的次元、(4)第3者の障害、等があり、今後の研究を必要とすることが確認された。
結論
昨年度のICIDH-2ベータ2案に関する研究を出発点として昨年5月に第54回世界保健会議において採択されたICF:国際生活機能分類の翻訳を行い、厚生労働省による翻訳作業に協力した。ICIDH-2ベータ2案とICFとの間には表面的にはかなりの変化はあったが、基本的な考え方と骨格は保たれたため、ベータ2案の翻訳の経験が十分生かされ、比較的短期間でICFの翻訳が行なわれることに寄与したと考えられる。またICF日本語訳を用いた研究によってICFが高い信頼性・妥当性・有用性を有することが確認された。またICIDH-2ベータ2案とくらべての第1の変化点である、活動と参加の統一リスト化に伴なうコーディング項目についての基本的な考え方について一定の結論をだすとともに実際的な選択基準について試案を作成した。さらに第2の変化点である、活動の評価点における「能力」の導入については、リハビリテーション・介護等の中で重要な概念となってきた「できるADL」と「しているADL」の基本的な考え方が国際的に支持されたものとしてICFの実践的意義を示すものであると評価された。今後の課題としては、1)結果と考察のⅡの3に述べた残された問題点の研究、2)普及活動(研修会などを含む)、3)障害に関連する保健・医療・リハビリテーション(医学リハおよび職業リハ)・福祉・介護・教育等の専門分野における実務・研究・教育への適用、4)障害当事者、関係者による使用、5)などが考えられるが、本研究はそれらの課題解決のための基礎として大きな意義をもつものと考えられる。

公開日・更新日

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