社会保障に係る国際協力のための専門家研修・教育カリキュラム構築に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100136A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障に係る国際協力のための専門家研修・教育カリキュラム構築に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
小林 廉毅(東京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐一郎(東京大学)
  • 内田康雄(神戸大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、開発途上国においても高齢化の進展や人口の都市集中、疾病構造の転換、高度医療技術の普及などに伴って、国民の間における経済状態と疾病構造の二極分化が進行して深刻な社会問題になっている。都市部の中間層・富裕層では循環器疾患や悪性新生物などの老化や生活習慣に関連した慢性疾患が増加する一方、農村や都市スラムでは貧困問題や感染症・寄生虫疾患がまん延している。また医療設備に関しても、都市部の大病院や民間クリニックと、農村部の保健医療施設との格差はきわめて大きい。このような状況において、医療や福祉、公衆衛生などの広義の社会保障に係る現状分析、政策立案、制度設計、政策評価などの知識やノウハウを途上国の実務者、政策担当者に効果的に伝えること、またお互いの国の経験を分析し意見交換するような教育・研修の場を提供することが、今後の社会保障・保健医療分野の国際協力における日本の重要な責務の一つになると考えられる。本研究は国際協力の視点から、医療保障、高齢者福祉、公衆衛生行政などに係る専門家育成を行うための体系的なカリキュラムや教育態勢のあり方を検討し、またそのような教育・研修カリキュラムと教育・研修の場について具体的な提言を行うことにより、わが国の国際協力の質の向上に寄与するとともに、人材育成を通して途上国の人々の健康や福祉の向上に資することを目的とする。
研究方法
前年度の研修モデル事業の評価結果について詳細な検討を行う。さらに前年度の研修モデル事業への参加者の協力をえて、途上国の実際の事例(ケース)に基づく教材を作成する。3年間の研究成果に基づいて、一定規模以上の総合大学あるいは複数の大学・研究所間連携において、社会保障に係る国際協力のための専門家研修・教育を行う場合のカリキュラムおよび教材についての提言書を作成する。
結果と考察
前年度の研修モデル事業を詳細に検討した結果、①参加者の評価は全般に高かった②テーマの「有用性」「教育法」「教材」についての評価は、講義形式のものに比べてケース・シミュレーション形式のものが高く、後者の有効性が示唆された③プログラム開始前に教材を配布すること、また教材の内容について工夫することが必要であることが示された④参加者の多様性を高めるべきとする意見が多かった。日本人参加者の中には、ケースやシミュレーションを用いた教育に不慣れの者もいたが、ケースやシミュレーションによる学習そのものは有効だと回答していた。ケースやシミュレーションが、わが国の当該分野の高等教育、専門家教育にあまり普及していないことを示唆しているものと思われる。さらに研修モデル事業参加者の協力を得て、複数のケース教材を作成した。また望ましい教育・研修の場についての検討を加えた。これらについては、最終年度の総合研究報告書に資料として添付した。また、3年間の研究成果に基づいて、社会保障に係る国際協力のための専門家研修・教育を行う場合のカリキュラムおよび教材についての提言を総合研究報告書に盛り込んだ。
結論
国際協力の視点から、医療保障や公衆衛生・医療に係る教育・研修カリキュラムと教育・研修の場について3年間の調査研究を行った結果、以下の成果を得た。初年度の研究では国内外の研修プログラムの比較を行ったところ、日本の研修の特徴は「日本モデル」の強調にあり、一般性や応用性の低い知識の伝達に留まっている可能性が示唆された。次年度は研究の一環として、ケース(事例教材)やシミュレーションを取り入れた統合的な研修モデル事業を企画・実施して事後評価を行ったところ、参加者の評価は全般に高く、と
りわけケースやシミュレーションを用いた教育の有効性が明らかになった。さらに参加者から、プログラム開始前の教材配布や参加者の多様性を高めるべきとの意見が得られた。最終年度は、途上国の事例に基づくケース(事例教材)の開発を行うとともに、当該領域における研修・教育カリキュラムと教育・研修の場について具体的な提言を作成した。これらの研究成果は、各年度ごとに総括・分担研究報告書(最終年度は総合研究報告書)として印刷、公表した。当該報告書は、わが国の大学や研究機関が当該領域の研修・教育プログラムを企画する場合に活用することが可能である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)