国際保健医療協力における開発調査実施手法の開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100134A
報告書区分
総括
研究課題名
国際保健医療協力における開発調査実施手法の開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
我妻 堯(社団法人国際厚生事業団)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川敏彦(国立医療・病院管理研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
7,975,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、国家保健医療総合計画策定手法の「マニュアル」とその手法を簡便に利用するための「テンプレート」(様式)を完成させることを目的とする。本研究により完成されるマニュアルとテンプレートを活用することにより、和製の「国家保健医療総合計画」の策定が可能となり、ドナー協調型支援において、右総合計画を各国に提案していくことにより、我が国のプレゼンスとイニシアティブを発揮することができるばかりでなく、個々のプロジェクトの検討においても、当該国全体の保健医療の現状から問題点の把握、解決方策の提言、将来計画の想定といった総合的な取組みが可能となり、従前に比して、より効果的な支援の実施が可能となる。また、従前まで限定的な開発計画のみが実施されてきた背景には我が国の保健医療分野コンサルタントの育成が立ち遅れていたことは否定できないが、本研究の成果である国家保健医療総合計画策定の「マニュアル」と「テンプレート」の提供が右コンサルタント育成の特効薬になり、ひいては、効果的な保健医療分野支援の実施につながることが期待される。
研究方法
1)開発途上国におけるモデル計画案-第2年度に改訂されたマニュアル及びテンプレートに基づき、過去の途上国の実態調査内容を当てはめて、モデル計画案を策定する。2)国家保健医療総合計画策定のためのマニュアルとテンプレートの完成-調査研究を通じてマニュアルとテンプレートを完成させることとする。
結果と考察
今年度は過去2ヵ年の研究結果を結実させ、カンボジアにおいてモデル計画を完成させ、また、国家保健医療総合開発計画策定の為のマニュアルとテンプレートを完成させた。マニュアルは、国際標準でいうところの国家保健医療総合開発計画の中にいかなる項目が網羅され、また、如何なる段階を経て計画が策定されるかを定義づけし、策定の方法をマニュアル化したものであり、テンプレートは、その計画策定の成果物の様式を提案したものである。開発途上国の「国家保健医療総合計画」の策定は途上国自身が行うというよりも、世銀等の国際機関、USAIDなどドナー諸国の援助機関による技術協力によって為されることが多いと言える。これは、いわば、グローバルスタンダードともいうべきもので、欧米のドナー諸国、国連機関等は、ほぼ同様な形での計画策定をしていると言える。一方、我が国の政府開発援助で実施してきた過去の保健医療分野国際協力においては、このようなアプローチは皆無であると言ってよく、欧米諸国が実施している計画策定が全体的な包括的なものであるのに対して、日本のそれは、限定的なものであるという評価が国際社会の中では成り立っているといえよう。日本の場合、対象国の全体に対して開発計画を策定するのではなく、より具体的な無償資金協力や技術協力プロジェクトを想定して、それに関わる事項のみを調査するといった手法であることが明らかになっている。国際社会はこのような日本のアプローチが国際社会の中で異質であると感じていると同時に援助国のコーディネーション、いわゆる、ドナー協調に日本が積極的に参加することを期待されており、本研究の成果がその期待に沿う国際標準の計画策定に資するものであると考えている。一方、今年度のカンボジアにおけるモデル計画策定の中で、欧米流の国際標準の計画策定といった視点に加えて、開発途上国の自主性と主体性を重んじたキャパシティービルディングに力点をおいた技術協力が求められていることが判明した。カンボジアでのモデル計画策定はカンボジア保健省のキャパシティービルディングも並行して行われたが、マニュアルに
はそういった途上国のキャパシティービルディングの手法についても含めることができた。この点については、欧米諸国及び機関からも評価されており、今後、国際標準の計画策定とキャパシティービルディングに配慮した日本の援助が展開されれば、欧米のこれまでの手法に一石を投じることも期待され、我が国のプレゼンス発揮に資するものと思われる。策定したマニュアルとテンプレートが今後の我が国の保健医療セクターの政策支援の大きな転換の一助となることを願ってやまない。
結論
本研究により完成されたマニュアルとテンプレートを活用することにより、和製の「国家保健医療総合計画」の策定が可能となり、ドナー協調型支援において、右総合計画を各国に提案していくことにより、我が国のプレゼンスとイニシアティブを発揮することができるばかりでなく、個々のプロジェクトの検討においても、当該国全体の保健医療の現状から問題点の把握、解決方策の提言、将来計画の想定といった総合的な取組みが可能となり、従前に比して、より効果的な支援の実施が可能となる。また、従前まで限定的な開発計画のみが実施されてきた背景には我が国の保健医療分野コンサルタントの育成が立ち遅れていたことは否定できないが、本研究の成果である国家保健医療総合計画策定の「マニュアル」と「テンプレート」の提供が右コンサルタント育成の特効薬になり、ひいては、効果的な保健医療分野支援の実施につながることが期待される。上記マニュアルとテンプレートを活用して策定したカンボジア・ヘルス・セクター・ストラテジック・プランがカンボジア保健省のみならず、ドナー各国・機関からも承認されたことを今後の我が国の保健医療セクター支援につなげたい。

公開日・更新日

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