アジア近隣諸国における医療保障の技術協力の評価分析とモデル指標形成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100131A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア近隣諸国における医療保障の技術協力の評価分析とモデル指標形成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 聡(国際医療福祉大学)
研究分担者(所属機関)
  • 六波羅 詩朗(国際医療福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国がアジアの社会保障先進国として、今後アジア各国相互の信頼を深めるのに必要な医療保障技術協力を効果的に行うモデルの把握と指標構築の基礎となる要素を抽出し、この分野で国内外とも客観的かつ納得のゆく援助協力が行われるための判断基準の一つとして使用できるものを開発する。
研究方法
研究対象国として今回、インドネシアを取り上げ、社会経済の変動と保健政策及び医療保障システムの特徴について分析した。先行研究において得られた経済指標からの公平性、サービス提供の公平性を、アウトカム、プロセス、構造の要素でそれぞれ分析した。同時に1990年代からの政策的変化を詳しく見ることによって、インドネシアで新たに採用されている政策モデルを分析した。
結果と考察
インドネシアは東南アジアの中で経済危機を最も直接に受けた国であり、政府は、第7時5カ年計画を修正して保健医療の保護に乗り出したが、政権交代もあり、中央政府および地方政府に対する実質の財源配分は十分ではない。強制被用者健康保険制度(JPK)、政府職員の健康保険制度(ASKES)、地域の健康保険制度(KARTU SEHAT)は存在するが、労働者向けの公的医療保険普及率も低く、民間保険も含めて国民の21%程度の適用しかない。医療施設、医療マンパワー共に低い。従って農村、離島地区の保健水準の向上と、都市労働者の社会保険適用拡大を同時に遂行しなければならないというジレンマに陥っている。政府による「健康なインドネシア2010」では地方分権、疾病予防、保健医療人材開発、地域マネジドケア、等を唱えている。
考察=保健医療の公平性には財源に関する公平性がある。政府の戦略は、地方分権化による権限および財源調達の委譲である。次にサービス供給に対する公平性がある。政府は、貧困層や低所得層向けの公的医療機関に対する無料診療を促す「健康カード」を普及させる政策を図っているが、成果を上げていない。政策上の公平性が測定される条件として①所得(の再分配)、②教育、③医療支出、④医療資源、⑤居住地域(都市、都市スラム、農村、離島)等があるが、7600の保健センター(1カ所あたり国民3万人)、わずか340の病院という状況では、有効なアウトカム指標の測定には無理がある。次に政府の役割がある。保健行動の変化に影響を与える要素は①一般的、②民俗的、③専門的、に分類できる。しかし、公的勤務時間終了後は、公務員が民間の仕事をし、また公立病院が私立病院に変化する現状では、役割をとらえる作業も容易ではない。
結論
インドネシアにおける政策分析過程では、地理的、政治的特性から政府の方針とは逆に政府の役割、医療提供者の役割の比重が大きいことが伺われた。さらに、ここ1,2年で政権交代とともに、政策目標も大きく変わっている。保健医療技術協力に必要な基本要素として、所得再分配の公平性、教育の公平性、保健医療支出の実績、医療提供者等医療資源、居住環境、等の要素が挙げられる。

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