文献情報
文献番号
200100130A
報告書区分
総括
研究課題名
インドネシアにおける医薬品供給システムに関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 正樹(国立長野病院)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川敏彦(国立保健医療科学院)
- 上原鳴夫(東北大学大学院)
- 小畑美知夫(国際医療協力事業団個別派遣専門家)
- 小川寿美子(琉球大学医学部)
- 木村和子(金沢大学大学院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
途上国の医薬品の供給体制についてインドネシアを例として以下の項目について調査研究を行うことを目的とした。①医薬品政策の現地調査および情報源について、②医薬品情報システムの現地調査、③保険制度の現地調査、④住民健康調査および家計調査の分析、そしてこれらより、途上国の医薬品援助に関する調査マニュアル作成することを目的とした。
研究方法
インドネシア現地でのフィールド調査、データ収集とその解析、文献調査および関係者インタビュー、そして班会議等によるブレーンストーミング等により研究調査を行い、最終的に医薬品援助マニュアルとしてまとめた。
結果と考察
(1)医薬品政策とその執行状況
インドネシアにおける医薬品政策について以下の項目について調査した。下記の項目よりなる。①医薬品登録:
1971 990 年,1993 年の大統領令 により医薬品の登録の必要性が述べられている。また1980 年登録のためのガイドラインがまとめられ、市場に流通する医薬品の登録についての基準と手順について定められた。このため医薬品の登録数は年々増加傾向にある。②医薬品の品質保証体制:1971年に、良質の医薬品の生産に関する基準(CPOB)が制定され、1973 年 には食品医薬品検査センター(Balai POM)が設置され、インドネシア全土の27 州で運営が行われている。③必須医薬品プログラム:インドネシアは途上国の中でもその導入も早く、1983年より開始し、1994年に第5版のリストが作成されている。必須医薬品リストは供給側リストと使用者側リストに分かれていて、供給者側リストにはリストA,リストB,リストCがある。リストA、リストBは国営医薬品製造会社で製造し中央政府予算により購入が行われ、リストCは私的製薬メーカーおよび地方政府予算による運用であった。
しかし、ハビビ前政権下、1999年5月に地方自治法(1999年法律第22号)と中央・地方財政均衡法(1999年法律第25号)の2つのいわゆる「地方分権化二法」の成立により2001年までに、これら医薬品予算とその執行権も州政府へ全面移管されることになった。さて、使用者側リストとしては320種類の病院リストと167種類のヘルスセンターリスト、32種類の村落の薬剤ポストリストがある。④ジェネリック医薬品の普及と生産供給体制:ジェネリック医薬品は必須医薬品リスト採用薬を中心に1990年代に入って増加傾向にある。④国内生産、供給体制:これらのジェネリック医薬品の国内生産、供給体制も国内の後述する製薬公社を中心に行われている。⑤ジェネリック医薬品の財源については2001年の地方分権以前は大統領特別予算(IMPRES)を中心とした中央政府予算がその多くを占めていた。?医薬品の適正使用・再評価:1991年 Loperamid/HCI、Etanbutolの安全性の面からの回収や1991年に下痢薬、抗生剤、抗菌剤、ステロイド、降圧剤、抗静脈瘤剤、経口痔剤、喘息薬など11種の医薬品の再評価などが特筆される。また医薬品の安全性の確保のために1995年中毒情報センターが設立され、医薬品の副作用監視(MEOS)も設置された。
(2)医薬品情報システムの現地調査
1999年の地方分権二法に関連して、中央省庁の再編成も2000年に施行された。このためそれまでの保健省内にあった食品医薬品局(POM)は保健省より独立してインドネシア医薬品食品庁(NADFC)となった。本庁はジャカルタ市内にあり、32の地方事務局と341の県レベルの医薬品供給センターをPOMより引きつぐこととなった。しかし大幅な権限の地方委譲により、NADFCの役割は医薬品登録、医薬品業者の免許、監視、医薬品情報提供等に限定されることになった。
このNADFCの医薬品情報システムついて以下の調査を行った。①医薬品の需要情報については先述した医薬品使用・要求書(LPLPO)がヘルスセンターより県レベルの医薬品供給センターに収集されてNADFCに報告される。②医薬品の供給情報については、医薬品の生産量が製薬メーカーから3月ごとにNADFCへ報告される。③早期警告システムの構築とは1998年の経済危機の教訓により緊急時に対応するための緩衝在庫の保有をおこなうものである。地方分権により緩衝在庫の中央、地方の効率的な分担が必要であると指摘されている。このほかのNADFCの医薬品情報システムとしては④監視情報に関するシステム、⑤ 副作用情報に関するシステム、⑥医薬品登録情報に関するシステム ⑦医薬品の適正使用に関する情報などがある。
(3)住民健康調査および家計調査の分析―医薬品をはじめとした医療サービス利用に関する住民調査―
インドネシアにおけるヘルスセンターの利用および家計における医療費支出の状況に関してジャカルタ市都市部と西ジャワ(レバック県)の農村地帯でそれぞれ500世帯、合計7,746人の住民調査を行った。その結果、収入は 都市20.4万ルピア、農村4.4万ルピアで、医療費支出率は都市8.6%、農村2.4%、有病率は都市は年間人口1,000人あたり228人、農村は128人であった。ヘルスセンター受診回数は都市は年間人口千人に対して157回、農村は82回であった。またヘルスセンター外来自己負担分は都市では年間1.6万ルピア、農村では1万ルピアであった。また、過去1年間の入院経験世帯数は都市17.2%、農村1.6%と都市部に圧倒的に入院が集中していた。入院内容は都市部では腸チフス、糖尿病、下痢、外傷等で、農村部ではデング熱、糖尿病、高血圧等であった。入院費用平均は都市部で154.5万ルピア、農村部で37.3万ルピアであった。この調査で伺えることは、インドネシアにおける都市部と農村部における収入格差と医療サービス利用の圧倒的な格差である。
(7) 医薬品援助マニュアルの作成
以上のインドネシアにおける医薬品セクター調査の経験を日本の援助政策全般に活用するために、以下の項目で医薬品援助に関するマニュアルを作成した。項目は①序論、②プロジェクトの進行、③対象国情報の収集と優先分野の特定、④分野別マニュアル、⑥医薬品財源、⑦医薬品ロジスッテイクス、⑧医薬品政策よりなり、途上国における医薬品セクターの援助関係者が援助案件について検討する際に参考となる内容となっている。そしてこれらより、途上国の医薬品援助に関する調査マニュアル作成することを目的とした。
インドネシアにおける医薬品政策について以下の項目について調査した。下記の項目よりなる。①医薬品登録:
1971 990 年,1993 年の大統領令 により医薬品の登録の必要性が述べられている。また1980 年登録のためのガイドラインがまとめられ、市場に流通する医薬品の登録についての基準と手順について定められた。このため医薬品の登録数は年々増加傾向にある。②医薬品の品質保証体制:1971年に、良質の医薬品の生産に関する基準(CPOB)が制定され、1973 年 には食品医薬品検査センター(Balai POM)が設置され、インドネシア全土の27 州で運営が行われている。③必須医薬品プログラム:インドネシアは途上国の中でもその導入も早く、1983年より開始し、1994年に第5版のリストが作成されている。必須医薬品リストは供給側リストと使用者側リストに分かれていて、供給者側リストにはリストA,リストB,リストCがある。リストA、リストBは国営医薬品製造会社で製造し中央政府予算により購入が行われ、リストCは私的製薬メーカーおよび地方政府予算による運用であった。
しかし、ハビビ前政権下、1999年5月に地方自治法(1999年法律第22号)と中央・地方財政均衡法(1999年法律第25号)の2つのいわゆる「地方分権化二法」の成立により2001年までに、これら医薬品予算とその執行権も州政府へ全面移管されることになった。さて、使用者側リストとしては320種類の病院リストと167種類のヘルスセンターリスト、32種類の村落の薬剤ポストリストがある。④ジェネリック医薬品の普及と生産供給体制:ジェネリック医薬品は必須医薬品リスト採用薬を中心に1990年代に入って増加傾向にある。④国内生産、供給体制:これらのジェネリック医薬品の国内生産、供給体制も国内の後述する製薬公社を中心に行われている。⑤ジェネリック医薬品の財源については2001年の地方分権以前は大統領特別予算(IMPRES)を中心とした中央政府予算がその多くを占めていた。?医薬品の適正使用・再評価:1991年 Loperamid/HCI、Etanbutolの安全性の面からの回収や1991年に下痢薬、抗生剤、抗菌剤、ステロイド、降圧剤、抗静脈瘤剤、経口痔剤、喘息薬など11種の医薬品の再評価などが特筆される。また医薬品の安全性の確保のために1995年中毒情報センターが設立され、医薬品の副作用監視(MEOS)も設置された。
(2)医薬品情報システムの現地調査
1999年の地方分権二法に関連して、中央省庁の再編成も2000年に施行された。このためそれまでの保健省内にあった食品医薬品局(POM)は保健省より独立してインドネシア医薬品食品庁(NADFC)となった。本庁はジャカルタ市内にあり、32の地方事務局と341の県レベルの医薬品供給センターをPOMより引きつぐこととなった。しかし大幅な権限の地方委譲により、NADFCの役割は医薬品登録、医薬品業者の免許、監視、医薬品情報提供等に限定されることになった。
このNADFCの医薬品情報システムついて以下の調査を行った。①医薬品の需要情報については先述した医薬品使用・要求書(LPLPO)がヘルスセンターより県レベルの医薬品供給センターに収集されてNADFCに報告される。②医薬品の供給情報については、医薬品の生産量が製薬メーカーから3月ごとにNADFCへ報告される。③早期警告システムの構築とは1998年の経済危機の教訓により緊急時に対応するための緩衝在庫の保有をおこなうものである。地方分権により緩衝在庫の中央、地方の効率的な分担が必要であると指摘されている。このほかのNADFCの医薬品情報システムとしては④監視情報に関するシステム、⑤ 副作用情報に関するシステム、⑥医薬品登録情報に関するシステム ⑦医薬品の適正使用に関する情報などがある。
(3)住民健康調査および家計調査の分析―医薬品をはじめとした医療サービス利用に関する住民調査―
インドネシアにおけるヘルスセンターの利用および家計における医療費支出の状況に関してジャカルタ市都市部と西ジャワ(レバック県)の農村地帯でそれぞれ500世帯、合計7,746人の住民調査を行った。その結果、収入は 都市20.4万ルピア、農村4.4万ルピアで、医療費支出率は都市8.6%、農村2.4%、有病率は都市は年間人口1,000人あたり228人、農村は128人であった。ヘルスセンター受診回数は都市は年間人口千人に対して157回、農村は82回であった。またヘルスセンター外来自己負担分は都市では年間1.6万ルピア、農村では1万ルピアであった。また、過去1年間の入院経験世帯数は都市17.2%、農村1.6%と都市部に圧倒的に入院が集中していた。入院内容は都市部では腸チフス、糖尿病、下痢、外傷等で、農村部ではデング熱、糖尿病、高血圧等であった。入院費用平均は都市部で154.5万ルピア、農村部で37.3万ルピアであった。この調査で伺えることは、インドネシアにおける都市部と農村部における収入格差と医療サービス利用の圧倒的な格差である。
(7) 医薬品援助マニュアルの作成
以上のインドネシアにおける医薬品セクター調査の経験を日本の援助政策全般に活用するために、以下の項目で医薬品援助に関するマニュアルを作成した。項目は①序論、②プロジェクトの進行、③対象国情報の収集と優先分野の特定、④分野別マニュアル、⑥医薬品財源、⑦医薬品ロジスッテイクス、⑧医薬品政策よりなり、途上国における医薬品セクターの援助関係者が援助案件について検討する際に参考となる内容となっている。そしてこれらより、途上国の医薬品援助に関する調査マニュアル作成することを目的とした。
結論
公開日・更新日
公開日
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