国立病院政策医療ネットワークにおける「医療の質」評価に関する基礎的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100117A
報告書区分
総括
研究課題名
国立病院政策医療ネットワークにおける「医療の質」評価に関する基礎的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
友池 仁暢(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野周作(国立循環器病センター)
  • 難波吉雄(東京大学)
  • 山本康弘(国立循環器病センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国立病院の医療の質の評価を行う場合に必要な基盤や測定指標等について、各国の状況等を調査し、政策医療ネットワークの医療の質活動の基礎資料にするものである。
研究方法
病院間での医療の質の評価を行っていくためには、そのための各病院での基盤整備、データの収集と分析、各病院への還元とそれによる行動の変容がどのように行われているかについて調査する必要があるため、我が国よりも進んでいるアメリカ、ドイツ、オーストラリアを選んで調査を実施する。循環器病の分野に限定した医療の質の評価について、文献調査、聞き取り調査、電子メールによる調査、さらには直接電話やファックスを用いた調査を行い、その関連資料を収集する。これらの分析を行った後に、各国の医療の質の評価活動について、各病院が行う病名や診療実績の記載、様式、重症度の評価等がどのようになっているのか、データの収集や分析、各病院への還元とその活用などについて系統的な整理を試みる。系統的な整理の終了後、国立病院政策医療ネットワークで用いられることが望ましい医療の質の評価手法について検討を行う。
結果と考察
アメリカ、ドイツ、オーストラリアにおける医療の質の評価活動に関する調査結果の概要は以下のとうりである。①アメリカのメリーランド州の各病院では、院内感染、患者死亡率、予期しない再入院率、術後の合併症、在院日数などの多くの指標を用いて積極的な医療の質の活動を行っている。②ドイツでは2年前にできた法令により、心臓手術や臓器移植を実施している病院の医療の質がどのように保たれているかを保証するために、入院時、手術時、退院時のサマリー(多くのチェック項目あり)を作成し当局に報告することになっている。2年前に設立されたQuality Control Centerでこれらの分析を行った後、データが各病院に送り返されて他の病院との比較ができるようになっている。③複数の機能の異なる医療機関相互の医療の質等に関する比較分析をしていくためには、医療機関毎に共通の重症度分類、即ち疾病別に軽症、中等症、重症などに分類してそれぞれの重症度毎のデータを比較分析する必要があるが、これまでこのような重症度分類は困難とされていた。しかし、オーストラリアが最近開発した方法は、患者の症状を4段階に分けた後、用いられた術式や手技を考慮しながらそれぞれの患者が有する複数の合併症を量的・質的に詳細に分析することによって、より精緻な重症度分類を開発している。医療の標準化や病名の統一などがまだ我が国で行われていない中にあって、医療の質、即ち医療サービスの効率化や有効性に関する議論がさらに一層活発化していくとともに、患者等からの情報開示の要望はますます高まっていくとが考えられる。国立病院としてこのような世の中の変化に対応していくことが、国民からの信頼性を確保した良質の医療を提供する上で不可欠であろう。
結論
医療の質に関する評価指標を開発し、共通のサマリー等を用いて国又は地域の病院間のデータを収集、分析した後、各病院間に還元し、病院間の比較を通して医療の質の向上を促すことは、急務の課題と考えられる。

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