Stevens-Johnson症候群、toxic epidermal necrolysis (TEN)とhypersensitivity syndromeの診断基準および治療指針の研究(総括・総合研究報告書)

文献情報

文献番号
200100090A
報告書区分
総括
研究課題名
Stevens-Johnson症候群、toxic epidermal necrolysis (TEN)とhypersensitivity syndromeの診断基準および治療指針の研究(総括・総合研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(愛媛大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島正文(昭和大学)
  • 池澤善郎(横浜市立大学)
  • 塩原哲夫(杏林大学)
  • 堀川達弥(神戸大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来、重症型薬疹としてアナフィラキシー、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症(TEN)がよく知られている。特に、Stevens-Johnson症候群、TENは、現在でも致命率が高いのみならず、救命できた場合にも後遺症を残すことが多い。致命率を改善し、後遺症を軽減するためには、早期診断、早期治療が不可欠である。しかし、Stevens-Johnson症候群とTENはその関連性あるいは相違点につき未だ十分に理解されているとは言い難く、しばしば適切な診断がなされず、予後の悪化、後遺症の発生を生じることがある。また逆に、薬疹の一つの型である急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)が、TENと過って診断され不必要な治療を受けている可能性もある。一方、最近もう一つの重症型薬疹としてdrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)の存在が明らかになってきた。DIHSは、多臓器障害を伴う薬疹で、Stevens-Johnson症候群やTENと異なり皮膚以外の臓器障害が重篤となる。この薬疹は以前から存在していたが、概念が確立されていなかった。最近、DIHSにおいてhuman herpesvirus 6 (HHV-6)が再活性化し多臓器障害に関与する可能性が明らかになったことから、ひとつの薬疹型として認識されるようになってきた。しかし、DIHSの診断基準はなく、臓器障害を伴うStevens-Johnson症候群、TENとの異同が問題となっている。
そこで、アナフィラキシー、Stevens-Johnson症候群、TEN、AGEP、DIHSについて、病態と病型の独立性を検討し、それぞれの診断基準を作成することを目標とし研究を行った。
研究方法
それぞれの薬疹型の関連性と独立性を検討するため、病態の解明の研究と症例の検討という2つの方法をとった。
まず、病態の解明としては、HHV-6の再活性化がDIHS特有な現象であるかを調査し、DIHSの薬疹型としての独立性を検討した。また、アナフィラキシーについては、病態に不明な点の多いアスピリン蕁麻疹に注目し、その臨床症状とヒスタミンの関与について検討した。
さらに、論文報告された重症薬疹の症例、あるいは各施設で経験した薬疹の症例で、典型例、診断に問題のある症例に注目し、それぞれに共通する臨床所見、検査所見、また他の薬疹型と重なる臨床所見、検査所見を解析した。この結果から、まずそれぞれの薬疹型の概念を定め、次に、この概念に相当する症例を完全に網羅できる診断項目を検討し、診断基準案を作成した。
結果と考察
Stevens-Johnson症候群、TENの症例を検討した結果、Stevens-Johnson症候群では病変の主体は粘膜皮膚移行部であり表皮剥離をきたす皮膚病変が10%以上であること、TENでは表皮剥離が体表面積の10%を超え、皮膚粘膜移行部の病変は軽度であっても良いとした。但し、Stevens-Johnson症候群からTENへ移行する症例が明らかに存在し、Stevens-Johnson症候群と早期に診断した場合には、その後、TENへの移行の有無につき再評価が必要であると考えた。また、TENについては3型のサブタイプを設け、Stevens-Johnson症候群進展型(TEN with spot)、び漫性紅斑進展型(TEN without spot)、特殊型とした。
TENとの鑑別診断が必要となるAGEPについても、症例を集めて検討し、診断基準案を作成した。その結果、血液検査や皮膚生検によりTENとの鑑別は可能と考えられ、その項目を設定した。
DIHSは、皮疹と臓器障害のパターンから、Stevens-Johnson症候群、TENとの鑑別が可能であると考えられる。特にHHV-6の再活性化はDIHSに特異的な所見であり、DIHSの診断の項目としても非常に特異性が高いと考えられた。しかし、稀に広範囲の表皮剥離をきたしTENとの鑑別が不可能な症例の存在が判明した。この場合にはTENに含むことが妥当と考えた。
結論
Stevens-Johnson症候群、TEN、DIHS、AGEPの診断基準案をそれぞれ作成した。今後、重症薬疹は、上記に基づいた診断を行い、診断基準案の妥当性を全国レベルで検討し、さらに基準に準じた治療指針を確立する必要があると考える。

公開日・更新日

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