文献情報
文献番号
200100073A
報告書区分
総括
研究課題名
異種移植の臨床試験に関する安全性確保についての研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
吉倉 廣(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臓器移植待機患者は全世界で年間10万人以上いるが、提供される臓器は2万人分しかない。この臓器の不足を補うため動物臓器を利用する異種移植が計画され、最近では免疫抑制技術の発達や灌流装置の開発で、動物臓器・細胞をヒトに移植・移入したり、ヒトの血液を体外で動物臓器・細胞に灌流させることが可能になっている。しかし、異種移植によって患者が動物由来の微生物に感染する危険性があり、その微生物が感染性を持つ場合には患者の接触者から人類全体へと感染が拡大する可能性すらある。そこで、本研究では公衆衛生学的な立場で、新規の感染とその伝搬を適切にモニターし、コントロールしながら異種移植を実施するためのガイドライン策定を目的とした。
研究方法
異種移植に関する文献、欧米の異種移植ガイドライン等を詳細に調べ、参考にした。我が国における臓器移植の専門家、人畜共通感染症の専門家、及び感染症疫学の専門家等による検討会議を開催し、異種移植の持つリスクや適切な実施に必要な要件等に関する意見交換を行った。合計4回の検討会議をとおして、細部まで納得のいく議論をし、ガイドラインを策定した。現在、異種移植のドナー動物として使われる可能性が最も高いブタについては、ブタ内在性レトロウイルスのヒトへの感染が危惧されている。ブタ内在性レトロウイルス産生細胞を培養し、そこからプロウイルスのクローニングとウイルスの高感度検出技術を検討した。研究班の作業自体には倫理面の配慮が必要となる調査、研究は含まれない。
結果と考察
異種移植によって動物由来の未知の感染症が発生する可能性を完全に排除することはできず、同種移植とは異なる予測困難な問題が残されているというのが、専門家の共通の認識であった。そこで、異種移植を受けた患者とその家族、及び医療従事者への動物由来感染症を防止する最大限の対策と同時に、患者に対するインフォームドコンセント、患者等の追跡調査や検体の保存、感染症発生時の対応、に重点を置いてガイドラインの作成をおこなった。主な点は、以下の通りである。
1)異種移植の実施及び審査の体制
異種移植チームがプロトコールを作成する。チームには総括責任者のもとに、移植手術の責任医師、人畜共通感染症の専門家、ドナー動物種の畜産学と感染症の専門家、院内疫学または感染症防止の専門家、臨床微生物検査の専門家を含むこととする。プロトコールを移植実施施設の長に提出し、施設の長は異種移植による感染の潜在的危険性を評価できる専門家等によって構成される審査委員会に意見を求める。施設の長が異種移植の適否を判断し、あるいは審査委員会の意見をプロトコールに反映させるよう異種移植チームを指導する。審査委員会は、異種移植チームとは独立の組織とする。
2)動物臓器の品質管理について
異種移植片は、感染性病原体をできる限り排除した閉鎖環境で繁殖・飼育された動物から採取する。ヒト以外の霊長類はドナー動物として適さない。
3)インフォームドコンセント
ドナー動物由来の既知及び未知の微生物に感染する可能性があること、その感染症は、配偶者や家族等の濃厚接触者へ伝搬する可能性があること、従って、一生の間微生物学的な監視を受けなければならないことを患者に知らせる。また、移植患者自身が、濃厚接触者に対し感染の可能性を説明しなければならないこと等もインフォームドコンセントに明記する。
4)移植患者の微生物学的監視と記録・検体の保存について
異種動物由来感染性病原体の二次感染を監視するために、移植患者の生涯にわたって微生物学的監視を続ける。異種動物由来感染症について、過去に遡って検査ができるよう、適切な検体を定期的に採取し保存する。患者が死亡した場合は、異種移植片及び関連する主要臓器を採取し、50年間保存する。これらの監視の実行と記録作製は移植実施施設長の責任とする。
一方、ブタ内在性レトロウイルスがヒト細胞へ感染したとの報告がある。この報告を追試、確認すべく、ブタレトロウイルス産生細胞の入手・培養を行い、ウイルスを検出する方法を検討した。
1)異種移植の実施及び審査の体制
異種移植チームがプロトコールを作成する。チームには総括責任者のもとに、移植手術の責任医師、人畜共通感染症の専門家、ドナー動物種の畜産学と感染症の専門家、院内疫学または感染症防止の専門家、臨床微生物検査の専門家を含むこととする。プロトコールを移植実施施設の長に提出し、施設の長は異種移植による感染の潜在的危険性を評価できる専門家等によって構成される審査委員会に意見を求める。施設の長が異種移植の適否を判断し、あるいは審査委員会の意見をプロトコールに反映させるよう異種移植チームを指導する。審査委員会は、異種移植チームとは独立の組織とする。
2)動物臓器の品質管理について
異種移植片は、感染性病原体をできる限り排除した閉鎖環境で繁殖・飼育された動物から採取する。ヒト以外の霊長類はドナー動物として適さない。
3)インフォームドコンセント
ドナー動物由来の既知及び未知の微生物に感染する可能性があること、その感染症は、配偶者や家族等の濃厚接触者へ伝搬する可能性があること、従って、一生の間微生物学的な監視を受けなければならないことを患者に知らせる。また、移植患者自身が、濃厚接触者に対し感染の可能性を説明しなければならないこと等もインフォームドコンセントに明記する。
4)移植患者の微生物学的監視と記録・検体の保存について
異種動物由来感染性病原体の二次感染を監視するために、移植患者の生涯にわたって微生物学的監視を続ける。異種動物由来感染症について、過去に遡って検査ができるよう、適切な検体を定期的に採取し保存する。患者が死亡した場合は、異種移植片及び関連する主要臓器を採取し、50年間保存する。これらの監視の実行と記録作製は移植実施施設長の責任とする。
一方、ブタ内在性レトロウイルスがヒト細胞へ感染したとの報告がある。この報告を追試、確認すべく、ブタレトロウイルス産生細胞の入手・培養を行い、ウイルスを検出する方法を検討した。
結論
異種移植の実施にあたっては、今回策定したガイドラインに沿い、ドナー動物由来微生物による感染を最大限予防し、患者の微生物学的な監視を長期に渡って続ける必要がある。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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