医療費の自己負担増による高血圧症患者と糖尿病患者の受診行動の変化(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100050A
報告書区分
総括
研究課題名
医療費の自己負担増による高血圧症患者と糖尿病患者の受診行動の変化(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
畝 博(福岡大学医学部教授)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場園明(九州大学健康科学センター助教授)
  • 津田敏秀(岡山大学大学院助手)
  • 田中喜代史(第1勧業銀行顧問)
  • 宮崎元伸(福岡大学医学部衛生学助教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はA健康保険組合の被保険者本人を対象として、1997年9月に導入された被保険者本人に対する定率2割負担の受診行動への影響について分析し、不必要な受診や過剰診療に留まらず、必要な受診さえも抑制している恐れがないか否かを医療経済学的に検討したものである。
研究方法
1996年9月から1999年8月までA健康保険組合に所属し、高血圧症あるいは糖尿病で1996年9月から1997年2月まで6ケ月間連続して受診した者を対象者とした。受診指標は受診率、毎月受診した患者の割合である完全受診率、1件当たりの診療日数、1件当たりの診療費用とした。
結果と考察
1.受診率の変化
受診率は、高血圧症、糖尿病ともに定率2割負担導入後有意に低下した。高血圧症の受診率は2割負担導入直後に低下した後、ほぼ横ばいで推移したが、糖尿病の受診率は2割負担導入後2年間の間低下し続けた。これらの現象は完全受診率においても観察された。高血圧症の完全受診率は2割負担導入後変動を示しているが、70%を下回ることはなかった。一方、糖尿病では漸減し、1998年8月以降70%を下回った。
2.1件当りの受診日数と1件当りの医療費
1件当りの受診日数および医療費はともに定率2割負担導入後に有意な変化を認めなかった。
今回の定率1割から2割への自己負担増は高血圧症患者と糖尿病患者の受診行動に影響を与えており、その影響は糖尿病患者により顕著であった。この理由として、糖尿病の1件当たり医療費が高血圧症に比べ1万円以上高いことが挙げられる。定率1割負担では高血圧症で1,400円、糖尿病で2,500円であったものが、定率2割負担ではそれぞれ3,000円、5,000円になっている。5,000円の自己負担は国民にとっては大きな負担と考えられる。また、高血圧症は投薬により血圧は確実に低下するが、一方、糖尿病では食事や運動などのライフスタイルの変容がなければ治療効果は小さく、負担の割にはその効果が実感されにくい。このことが、2割負担導入の影響が糖尿病の方に顕著に現れた、もう一つの理由と考えられた。
結論
1997年9月に導入された被保険者本人に対する定率2割負担は高血圧症患者および糖尿病患者の受診行動に影響を与えていた。

公開日・更新日

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