医療保険給付における公平性と削減可能性に関する実証的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100044A
報告書区分
総括
研究課題名
医療保険給付における公平性と削減可能性に関する実証的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
八代 尚宏(日本経済研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木玲子(日本経済研究センター)
  • 鈴木亘(日本経済研究センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の医療行動や医療費の実態については、数多くの議論があるものの、精緻な個票データに基づく分析は意外なほど少ない。今年度は、「医療保険給付における公平性と削減可能性に関する実証研究」の第一年目として、特に老人医療の公平性と削減可能性に焦点を当てた調査を行う。基礎的なデータから数多くの知見を得、また、今後の老人医療費削減の方策を探ることが目的である。
研究方法
独自に実施したアンケート調査を実施した。具体的には、①高齢者の持病、②高齢者の医療負担、③高齢者が通院している医療機関と通院実態、④医療費の自己負担の増加と通院意向、⑤大病院と中小病院・診療所の基本診察料金の自己負担率の違いについて、⑥医療費の自己負担増を仮定した場合の医療機関の利用意向、⑦病院を利用する理由、⑧大病院の基本診察料金について、⑨病院の自己負担増を仮定した場合の診療所への変更意向、等を尋ねるアンケート調査を高齢者世帯1095サンプルに対して実施した。また、これらの他に、医療保険財政の将来推計を行う為のシミュレーションモデルを作成し、医療制度改革の効果について試算を行った。
結果と考察
アンケート調査後の限られた時間ではあったが、解析作業を行った結果、①高齢者の外来医療は所得にかかわらず同量の医療が行われており特に不平等は起きていない、②高齢者といえども待ち時間や通院時間が長い場合には通院回数が減少する、③終末期医療費の認識は正確である、④終末期の自己決定に対しては消極的であり、価格などに対しても反応しない、⑤緩和ケアやホスピスの充実はリビングウィル作成を促進する、⑥高齢者の大病院指向は、初診料よりも再診料の上昇によって改善される、⑦高齢者は公的医療の範囲の中で、長期入院の保険外化→軽医療の保険外化→終末期の保険外化→かかりつけ医制度導入の順で重要度をつけている。したがって、逆の順に改革しやすい等の知見が得られた。また、医療財政シミュレーションモデルの作成を行い、先般の医療制度改革の効果なども試算を行った。
結論
アンケートデータから得られた知見は、研究結果に示した通りである。その他、老健レセプトデータや医療保険財政シミュレーションモデルによる分析から、①寿命の長寿化は医療費増の要因ではなく、これまで行われた医療費の将来推計は過大になっている可能性が高いこと、②先般行われた医療制度改革を行っても医療保険財政の改善は一時的であり、医療供給面の改革など根本的な改革の必要が迫っている事などの知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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