高齢者モデル居住圏構想の評価研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100041A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者モデル居住圏構想の評価研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
小川 全夫(九州大学)
研究分担者(所属機関)
  • 前田大作(ルーテル学院大学)
  • 山本圭介(山口県立大学)
  • 安立清史(九州大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
5,678,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の著しく進んだ山口県周防大島地域における厚生行政を核とした広域行政の取組みとしての「周防大島高齢者モデル居住圏構想」について、政策評価、プログラム評価、サービス評価、教育評価などの面から研究する。
研究方法
既存調査資料の二次分析、ヒヤリング、アンケート調査、行政統計分析など質的、数量的評価調査のトライアンギュレーションによる。
結果と考察
山口県周防大島高齢者モデル居住圏構想は、平成11年度から取組まれた4町の広域計画である。人口高齢化の最も進んだ地域の振興を図ろうとする地域計画であるが、その中核には地域厚生行政を据えているところに特徴がある。もちろん地域政策として、自治省や農林業行政や運輸行政や教育行政などとも関連があり、実際に個別の課題を立てて検討を進めている。
この構想は、当初、公的介護保険制度の発足に重なったために、要介護認定作業を4町で共同する試みに取組み、周防大島高齢者モデル居住圏構想推進協議会事務局が、そのまま要介護認定共同事務局を兼ね、IT技術の構築において広域行政の成果を上げた。そして平成14年4月からは、公的介護保険業務は広域連合に発展する運びとなった。これによって、公的介護保険関係の事業は、高齢者モデル居住圏構想からは独立することとなった。
この構想のもうひとつの重要な柱は、UJIターン促進といった地域人口確保事業であるが、この事業についてはさまざまな動きがみられるものの、なお乗り越えなければならない課題が山積している。
住民参加や住民協働といった面では、定年帰農者の会、新規居住者の会、福祉NPO、ボランティア・ネットワークなどの動きがあるものの、なお既存の住民組織による活動以上の動きにはなっていない。
福祉職の質の向上をめぐる自主研修活動や、学生の地域実習活動などが盛んに取組まれ、その波及効果と思われる動きが、高校教育や住民のヘルパー資格取得などといった面にも現れている。山口県では独自の介護保険研究大会というピア・レビューの動きがあるが、地域レベルでのピア・レビュー組織のあり方を問うている。
「高齢者モデル居住圏構想」は、周防大島という地理的にはまとまりのある地域にある4町の広域行政の取組みであり、公的介護保険制度の導入に際しては、積極的に広域行政の効果を上げたといえる。その他の取組みは、まだ全てが試行段階であるといえる。しかしながら全国の広域行政の動きは、さらに広範囲の合併を目指す段階に入っているので、今後はその動きとにらみ合わせた上で、さらなる工夫が必要になってくるだろう。
人口確保事業の面では、自然発生的な転入者の増加が既にあったが、これをUJIターン対策として積極的に打ち出そうとするのが、「高齢者モデル居住圏構想」で謳われたことであるが、今後はさらなる条件整備を推進する必要がある。
住民参加や協働の動きは、新しいNPO、社会福祉協議会、郵便局や農協や商工会構成員によるボランティア活動として芽生えがあるが、本格的な展開はまだ先のことのようである。「すこやかほほえみネット」というネットワーキングの取組みが成否を分けるだろう。
福祉専門職あるいは学生の研修や実習の動きは、「高齢者モデル居住圏構想」の中でも積極的な取組みがあり、波及効果が出ていることから考えて、もう一段進んだ事業との組み合わせが必要になるだろう。
結論
周防大島における高齢者モデル居住圏構想は、広域行政推進に大きく貢献している。特に公的介護保険制度に関わる広域行政については、着実な歩みとなっている。しかしながら、いよいよ介護保険の広域連合が組まれる段階になって、独立した事務局を持つようになると、「高齢者モデル居住圏構想」は、地域厚生行政としての特徴は薄れ、これよりも人口対策や運輸対策や中山間地域農業対策といった事業が浮上してくる可能性がある。そこでなお地域の厚生行政を核に据え続けるためには、公的介護保険以外の保健・福祉事業を位置付け直すことが必要になる。それには、これまで自治体が独自に展開してきた保健・福祉事業の整理統合も必要になる。

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