日本の所得格差の現状と評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100012A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の所得格差の現状と評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 克己(横浜市立大学商学部)
研究分担者(所属機関)
  • 玄田有史(学習院大学経済学部)
  • 白波瀬佐和子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山田篤裕(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バブル経済崩壊後の長期化する不況や雇用情勢の悪化などを通じて、我が国の所得格差の状況について関心が高まっている。そこで、本研究では日本の所得格差の現状を1980年代からの趨勢とともに把握し、国際比較を通じて評価・検討することにある。社会保障の重要な機能の一つとしての所得再分配効果についても、国民一人あたりだけでなく、世帯類型別も考慮に入れた再分配効果の比較検討を行う。これにより、現行の社会保障制度における所得再分配機能の効果や課題について検討することができる。
研究方法
本研究では、厚生労働省「所得再分配調査」、「国民生活基礎調査」の個票データを用い、その再集計結果を元に各種の分析を行った。本年度は昨年度行った必要なデータクリーニングおよび必要とされた集計表などを元に各種の分析を行った。なお、個票の取り扱いには細心の注意を払い、個人情報保護に留意した。
結果と考察
本年度の研究結果について、以下の3点に集約することができる。
(1)日本全体の所得格差は90年代比較的安定しており、所得格差の程度を国際比較すると欧米所得並みであることが分かった。しかし、その一方で、欧米とは異なる日本の特徴も明らかになった。それは、日本において高齢者層、特に高齢者のみ世帯における所得格差が大きいことである。その原因として、①欧米に比べて高齢者が多様な世帯構造に属すること、②稼得所得のうち特に雇用所得が高齢者の所得格差に大きな影響を持っていることである。高齢者にはさまざまな状況にいる者が混在しており、その経済状態も多様であることが本分析を通して確認された。
(2)世帯間の所得格差を左右する一つの要因として、女性の就業の有無、就業形態の選択が考えられる。これらに最も強く影響するのは子供数であり、出産・育児は女性の就業確率を大いに低下させ、特に役員・雇用という常用の正規職員の道を大きく阻害させることにより、世帯間の所得格差を左右することが明らかになった。所得格差と保育所利用との関係を見ると、低所得世帯ほど保育所を利用する傾向がある一方で、保育所を利用することで妻が正社員である世帯の所得は増加する。その結果、共働き世帯では、保育所を利用しているからといって、裕福なわけでもなければ、貧しいといったわけでもないことも明らかになった。
(3)所得格差の地域差についてみると、西日本で所得格差が大きく、東日本で小さいという東高西低の傾向が見られること、税や社会保障による所得再分配効果も前者で大きく、後者で相対的に小さいことが明らかとなった。また、各地域における所得格差の変化は世帯構造の変化が大きな影響度を持ち、その程度には地域差があることも明らかとなった。
結論
所得格差の分析は人口や世帯構造、地域構造といった面の他に、女性の就業状態などの側面から分析するとさまざまな姿が見えてくることが明らかとなった。

公開日・更新日

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