文献情報
文献番号
200100004A
報告書区分
総括
研究課題名
社会福祉施設における総合的評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 進一(大阪市立大学大学院)
研究分担者(所属機関)
- 北島英治(東海大学)
- 岡田まり(立命館大学)
- 藤林慶子(東洋大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
5,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究事業において、平成11年度は、特別養護老人ホームの施設入所者の施設サービス満足度を中心とした研究を行った。これは、ドナベディアンが言う結果評価(Outcome Evaluation)の部分である。平成12年度は、特別養護老人ホームの施設職員および施設長の職務自己評価研究を行った。これは、ドナベディアンが言う過程評価(Process Evaluation)の部分である。今年度は、ドナベディアンが言う構造評価(Structure Evaluation)を行うために、施設職員の職場環境とバーンアウトや施設長のスーパービジョンを取り上げた。
ドナベディアンがいう構造とは、サービス提供機関の組織環境を指し、具体的には、サービス提供者の特徴、サービス提供者の職場環境、サービス提供者と管理者との関係、組織の財政基盤などを示している。
そこで、今回、最終年度の研究事業として、現在、施設現場でも大きな課題として認識されている介護職員の職場環境とバーンアウト(特に、情緒的消耗感に焦点をあてたもの)との関連や、施設長のスーパービジョンに関する認識について分析を行っていくこととした。また、施設内における利用者主体の施設ケアのあり方を明確にしておくため、施設長自己評価に関する研究もあわせて行うこととした。
ドナベディアンがいう構造とは、サービス提供機関の組織環境を指し、具体的には、サービス提供者の特徴、サービス提供者の職場環境、サービス提供者と管理者との関係、組織の財政基盤などを示している。
そこで、今回、最終年度の研究事業として、現在、施設現場でも大きな課題として認識されている介護職員の職場環境とバーンアウト(特に、情緒的消耗感に焦点をあてたもの)との関連や、施設長のスーパービジョンに関する認識について分析を行っていくこととした。また、施設内における利用者主体の施設ケアのあり方を明確にしておくため、施設長自己評価に関する研究もあわせて行うこととした。
研究方法
① 施設職員(介護職員)調査
調査対象者は、全国老人福祉施設名簿(平成12年度版)から、全国400ヶ所の特別養護老人ホームを無作為に抽出し、1施設につき介護職員3名から回答を得ることとし、合計1,200名の介護職員である。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布は、質問紙を施設職員に直接配布し、その回収は、無記名で直接回収する方法を採用した。
調査期間は、2002年2月1日から2月20日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、59.2%であった。
調査項目には、基本属性、職場における人間関係、雇用条件、仕事量、仕事における役割・立場、MBI尺度(バーンアウト尺度)の一部である情緒的消耗感などがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の施設職員にパイロット・テストを行い、施設職員の合意が得られている。従って、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。
② 施設長調査
調査対象者は、全国老人福祉施設名簿(平成12年度版)から、全国800ヶ所の特別養護老人ホームを無作為に抽出し、回答を得ることとし、合計800名の施設長である。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布は、質問紙を施設長に直接郵送配布し、その回収は、無記名で直接郵送回収する方法を採用した。
調査期間は、2002年2月1日から2月20日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、56.5%であった。
調査項目には、基本属性、スーパービジョン行動、スーパービジョン行動促進要因、施設における自己評価項目(実施度および重視度)などがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の施設長にパイロット・テストを行い、施設長の合意が得られている。従って、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。
調査対象者は、全国老人福祉施設名簿(平成12年度版)から、全国400ヶ所の特別養護老人ホームを無作為に抽出し、1施設につき介護職員3名から回答を得ることとし、合計1,200名の介護職員である。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布は、質問紙を施設職員に直接配布し、その回収は、無記名で直接回収する方法を採用した。
調査期間は、2002年2月1日から2月20日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、59.2%であった。
調査項目には、基本属性、職場における人間関係、雇用条件、仕事量、仕事における役割・立場、MBI尺度(バーンアウト尺度)の一部である情緒的消耗感などがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の施設職員にパイロット・テストを行い、施設職員の合意が得られている。従って、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。
② 施設長調査
調査対象者は、全国老人福祉施設名簿(平成12年度版)から、全国800ヶ所の特別養護老人ホームを無作為に抽出し、回答を得ることとし、合計800名の施設長である。
調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。質問紙の配布は、質問紙を施設長に直接郵送配布し、その回収は、無記名で直接郵送回収する方法を採用した。
調査期間は、2002年2月1日から2月20日までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率(回収率)は、56.5%であった。
調査項目には、基本属性、スーパービジョン行動、スーパービジョン行動促進要因、施設における自己評価項目(実施度および重視度)などがある。
調査項目の作成にあたっては、先行研究をもとに、主任研究者・分担研究者からなる研究プロジェクトグループで検討を行い、数名の施設長にパイロット・テストを行い、施設長の合意が得られている。従って、調査項目の表面的妥当性は確保されていると考えられる。
結果と考察
研究結果=① 施設職員(介護職員)調査
職場環境の質問項目(59項目)を整理するために、探索的因子分析(バリマックス回転)を行った。その結果、14の因子が抽出され、累積寄与率は、72.2%であった。因子ごとの信頼性を示すクロンバッハのα係数は、0.6以上であり、各因子に尺度の信頼性があることを確認することができた。
職場環境と情緒的消耗感との関連を見るために、基本属性と職場環境14因子とを独立変数とし、情緒的消耗感を従属変数として重回帰分析を行った。その結果、「仕事における役割・地位」「職場内の人間関係」「仕事量」「利用者との関わりからのネガティブな感情に関する相談」「仕事内容および役割の明瞭性」などの独立変数が0.01%水準で、従属変数の情緒的消耗感と関連していることが示された。また、「職場の雰囲気」が1%水準、「上司からのサポート」と「賃金に対する満足度」が5%水準で、従属変数の情緒的消耗感と関連していることが示された。なお、この重回帰分析の決定係数(寄与率)は、0.44であり、0.1%水準で有意であった。
② 施設長調査
スーパービジョン行動促進要因項目の因子構造を明確にするため、探索的因子分析(バリマックス回転)を行った。その結果、「施設長が行うスーパービジョンは、施設管理・運営や処遇改善のために重要である」などの項目を含む「スーパービジョン効果に対する認識」因子、「施設長が行うスーパービジョンとは、何をすることかよくわからない。(反転項目)」などの項目を含む「スーパービジョンの内容・行動目標に対する理解」因子、「スーパービジョンは、施設長の業務として職務規定などに明確に定められている」などの項目を含む「施設内でのスーパービジョン体制の明瞭性」因子の3つが抽出された。累積寄与率は、53.78%で、それぞれの因子の信頼性を示すクロンバッハのα係数は、0.6以上を示した。
また、その3つのスーパービジョン行動促進因子とスーパービジョン行動との関連を見るために、基本属性とスーパービジョン行動推進因子とを独立変数とし、スーパービジョン行動を従属変数として、重回帰分析を行った。その結果、3つのスーパービジョン行動促進要因すべてにおいて、0.1%水準で有意が見られた。なお、この重回帰分析の決定係数は、0.407であり、0.1%水準で有意であった。
利用者主体から見た施設長による施設自己評価分析の点数平均値を活用しながら、現在、施設内で施設職員の実施状況が良好でないと施設長が判断し、しかも、施設長が重要視している施設評価項目を分析した結果、施設改善目標で最重要項目となった項目は、「施設ケア計画の入所者および家族への提示」と「施設ケア計画作成における施設入所者の参加促進」であった。
職場環境の質問項目(59項目)を整理するために、探索的因子分析(バリマックス回転)を行った。その結果、14の因子が抽出され、累積寄与率は、72.2%であった。因子ごとの信頼性を示すクロンバッハのα係数は、0.6以上であり、各因子に尺度の信頼性があることを確認することができた。
職場環境と情緒的消耗感との関連を見るために、基本属性と職場環境14因子とを独立変数とし、情緒的消耗感を従属変数として重回帰分析を行った。その結果、「仕事における役割・地位」「職場内の人間関係」「仕事量」「利用者との関わりからのネガティブな感情に関する相談」「仕事内容および役割の明瞭性」などの独立変数が0.01%水準で、従属変数の情緒的消耗感と関連していることが示された。また、「職場の雰囲気」が1%水準、「上司からのサポート」と「賃金に対する満足度」が5%水準で、従属変数の情緒的消耗感と関連していることが示された。なお、この重回帰分析の決定係数(寄与率)は、0.44であり、0.1%水準で有意であった。
② 施設長調査
スーパービジョン行動促進要因項目の因子構造を明確にするため、探索的因子分析(バリマックス回転)を行った。その結果、「施設長が行うスーパービジョンは、施設管理・運営や処遇改善のために重要である」などの項目を含む「スーパービジョン効果に対する認識」因子、「施設長が行うスーパービジョンとは、何をすることかよくわからない。(反転項目)」などの項目を含む「スーパービジョンの内容・行動目標に対する理解」因子、「スーパービジョンは、施設長の業務として職務規定などに明確に定められている」などの項目を含む「施設内でのスーパービジョン体制の明瞭性」因子の3つが抽出された。累積寄与率は、53.78%で、それぞれの因子の信頼性を示すクロンバッハのα係数は、0.6以上を示した。
また、その3つのスーパービジョン行動促進因子とスーパービジョン行動との関連を見るために、基本属性とスーパービジョン行動推進因子とを独立変数とし、スーパービジョン行動を従属変数として、重回帰分析を行った。その結果、3つのスーパービジョン行動促進要因すべてにおいて、0.1%水準で有意が見られた。なお、この重回帰分析の決定係数は、0.407であり、0.1%水準で有意であった。
利用者主体から見た施設長による施設自己評価分析の点数平均値を活用しながら、現在、施設内で施設職員の実施状況が良好でないと施設長が判断し、しかも、施設長が重要視している施設評価項目を分析した結果、施設改善目標で最重要項目となった項目は、「施設ケア計画の入所者および家族への提示」と「施設ケア計画作成における施設入所者の参加促進」であった。
結論
考察と結論=① 施設職員(介護職員)調査
本研究結果から、職場環境要因が施設介護職員の情緒的消耗感に密接に関連していることが明らかとなった。
職場環境関連項目から、どのような介護職員が情緒的消耗感を強く感じているかを列挙すると、以下のような介護職員であることが明らかとなった。
① 職場内の人間関係が良好でないと感じている介護職員
② 仕事内容や役割が不明瞭で、なんでもさせられていると感じている介護職員
③ 1日あたりの仕事量があまりにも多いと感じている介護職員
④ 利用者との関わりからネガティブな感情が生じても、そのことに対して相談できる人や体制がないと感じている介護職員
⑤ 上司からスーパービジョンを得ることができないと感じている介護職員
⑥ 賃金と仕事内容のバランスがあまりにもアンバランスであると感じている介護職員
以上の結果より、施設介護職員の情緒的消耗感を防ぎ、介護サービスの質の向上を行っていくためには、施設長あるいは施設長格の者が、介護職員に対して適切なスーパービジョンを行い、場合によっては、介護職員に対してモニタリングを行うことが必要である。特に、施設長あるいはそれに準ずる者には、介護職員の仕事量は適切か、介護職員の仕事内容や役割は適切か、施設の雰囲気は良好か、介護職員間の人間関係は良好か、などをアセスメントできる能力をもっていることが求められる。
② 施設長調査
特別養護老人ホームにおける施設サービス向上をめざした施設長がスーパービジョン行動を積極的に行っていくためには、施設長がスーパービジョンについての理解を深め、スーパービジョンについての効果を認識していなければならない。また、施設内でのスーパービジョンに関する規定や内容についても明確にされていなければ、スーパービジョン行動を施設長が行うことは難しいと考えられる。
今後、施設長を対象とした研修においては、施設職員に対するスーパービジョンのあり方や方法についての講義や演習を行い、多くの施設長がスーパービジョンの重要性を理解し、スーパービジョンを実施していくことが望まれる。また、施設内スーパービジョンに関する制度的な裏づけも必要であろう。
スーパービジョンに加えて、今回明らかになったことは、施設内における利用者主体のためのケア体制の整備である。特に、施設長が認識している重要課題は、「施設ケア計画の入所者および家族への提示」と「施設ケア計画作成における施設入所者の参加促進」であった。ケア計画に関する指導研修は、介護保険制度開始以来、かなり積極的に進められてきたが、今後も、ケア計画に関する教育研修は、積極的に進められていくべき課題であると考えられる。
両調査研究から、施設長あるいはそれに準ずる者が介護職員や施設職員のスーパービジョンを行うことの重要性が明確になった。特に、介護職員に対しては、スーパービジョンだけでなく、介護職員の人間関係を的確に捉え、それぞれのレベルに合った適切な役割を介護職員に提供し、仕事量についても適切であるかどうかを定期的に把握するシステムづくりが施設内には必要であることも明らかとなった。その意味では、施設を構造評価することの重要性を再認識していくことが求められる。
本研究結果から、職場環境要因が施設介護職員の情緒的消耗感に密接に関連していることが明らかとなった。
職場環境関連項目から、どのような介護職員が情緒的消耗感を強く感じているかを列挙すると、以下のような介護職員であることが明らかとなった。
① 職場内の人間関係が良好でないと感じている介護職員
② 仕事内容や役割が不明瞭で、なんでもさせられていると感じている介護職員
③ 1日あたりの仕事量があまりにも多いと感じている介護職員
④ 利用者との関わりからネガティブな感情が生じても、そのことに対して相談できる人や体制がないと感じている介護職員
⑤ 上司からスーパービジョンを得ることができないと感じている介護職員
⑥ 賃金と仕事内容のバランスがあまりにもアンバランスであると感じている介護職員
以上の結果より、施設介護職員の情緒的消耗感を防ぎ、介護サービスの質の向上を行っていくためには、施設長あるいは施設長格の者が、介護職員に対して適切なスーパービジョンを行い、場合によっては、介護職員に対してモニタリングを行うことが必要である。特に、施設長あるいはそれに準ずる者には、介護職員の仕事量は適切か、介護職員の仕事内容や役割は適切か、施設の雰囲気は良好か、介護職員間の人間関係は良好か、などをアセスメントできる能力をもっていることが求められる。
② 施設長調査
特別養護老人ホームにおける施設サービス向上をめざした施設長がスーパービジョン行動を積極的に行っていくためには、施設長がスーパービジョンについての理解を深め、スーパービジョンについての効果を認識していなければならない。また、施設内でのスーパービジョンに関する規定や内容についても明確にされていなければ、スーパービジョン行動を施設長が行うことは難しいと考えられる。
今後、施設長を対象とした研修においては、施設職員に対するスーパービジョンのあり方や方法についての講義や演習を行い、多くの施設長がスーパービジョンの重要性を理解し、スーパービジョンを実施していくことが望まれる。また、施設内スーパービジョンに関する制度的な裏づけも必要であろう。
スーパービジョンに加えて、今回明らかになったことは、施設内における利用者主体のためのケア体制の整備である。特に、施設長が認識している重要課題は、「施設ケア計画の入所者および家族への提示」と「施設ケア計画作成における施設入所者の参加促進」であった。ケア計画に関する指導研修は、介護保険制度開始以来、かなり積極的に進められてきたが、今後も、ケア計画に関する教育研修は、積極的に進められていくべき課題であると考えられる。
両調査研究から、施設長あるいはそれに準ずる者が介護職員や施設職員のスーパービジョンを行うことの重要性が明確になった。特に、介護職員に対しては、スーパービジョンだけでなく、介護職員の人間関係を的確に捉え、それぞれのレベルに合った適切な役割を介護職員に提供し、仕事量についても適切であるかどうかを定期的に把握するシステムづくりが施設内には必要であることも明らかとなった。その意味では、施設を構造評価することの重要性を再認識していくことが求められる。
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