構造化医療用語の実用化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001145A
報告書区分
総括
研究課題名
構造化医療用語の実用化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
里村 洋一(千葉大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 木村通夫(浜松医科大学)
  • 廣瀬康行(琉球大学)
  • 山崎俊司(琉球大学)
  • 土屋文人(東京大学)
  • 津本周作(島根医科大学)
  • 熊本一郎(鹿児島大学)
  • 石川光一(国立がんセンター)
  • 日紫喜光良(信州大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
5,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療録の電子化は、医療の効率化と質の向上に貢献し、我が国の医療を改革する上に強力な武器となることが予測されている。しかし、その実現のためには、さまざまな環境の整備が必要とされる。そのもっとも重要なものとして、医学用語の標準化が挙げられる。この研究は電子化した診療記録を医療機関関係者間で共有するためのデータの標準化を目標として、用語集の整備の手法を開発しようとするものである。申請者等の一部は、これまでの数年間、内外の主要な医学用語集を解析し、診療記録での使用に好適な電子化医学用語集の構築について研究してきた。その結果、部門別または目的別に編集された用語集から医学的に意味を保持する概念の最小単位(ATOM)を抽出し、これらに品詞、領域(部位・臓器、処置・手術、症状、病態、病因、固有名詞など)、同義語、略語、等の属性を与えることによって、構造化された医学用語集を編集できることを証明した。また、このATOMを集めた辞書を用いてSNOMEDの半自動翻訳を試み、見込みのある成果を見た。この研究成果を基盤として、ATOM辞書の充実を試みた上で、医療の各分野で作成された文書の中で使われている医学用語を、標準用語に置きかえる実験をし、実用上の問題点を検討するのが今回の研究である。
また、同様に英語の用語集の日本語への自動変換にも挑戦する。このシステムの完成によって、電子カルテの設計者が用語の使用で迷うことがなく、電子カルテの利用者が標準用語を意識することなくデータの入力や検索が行える環境が整う。。
研究方法
まず、繁用される基本概念(ATOM)を構築し、SNOMEDの中に出現する頻度の高い単語(病名、症状、部位と臓器、医療行為など)に関するATOMの抽出をすすめ、それぞれのATOMに、英語とその品詞、対応する日本語とその品詞、使用領域、及び優先度などの属性を与えた。また、それぞれのATOMを含む用語の文脈を定義して、それぞれの文脈における基本語表現の利用法、すなわち命名法のシステム開発を試みた。また、編集を容易にするための類似語検索システムと用例検索システムの開発を行った。
結果と考察
基本概念約5,500について、その英語の品詞、日本語の品詞、使用領域を定義し、品詞と使用領域に応じて日本語表現の優先度を与えた。また、MEID辞書(日外アソシエーツ)から指定単語を含む表現を検索するツールとSNOMEDの用語から同様に指定した単語を含む表現のリストを作成するツール、更に、SNOMEDの上位コードから、同じカテゴリーに含まれる用語のリストを表示するツールなどを用意し、翻訳に際して随時参照ができるようにした。
この基本語辞書とツール群を利用して、SNOMEDIII の翻訳システムを構築した。このシステムでは、任意のSNOMED用語を、先ず、基本単語に分解し、ついでそれぞれの単語を基本語辞書に従って翻訳する、更に、英語と日本語の語順の違いを克服するために前置詞や形容詞の配置変換ルールを通して、日本語の語順に変える。全ての単語の日本語訳が単一である場合は、用語のエキスパートによってその適否が判断され、正しいと判断された場合には、そのまま正規の翻訳として採用する。また、一つでも基本語に複数の翻訳がある場合は、これを単語別に併記してエキスパートの選択を待つ仕掛けとした。
このシステムを利用して、SNOMEDIII の用語(M、T、F、D、Pの各軸に限定)の翻訳試験を行った。その結果、33,441用語のうち、一意に翻訳できたもの(翻訳候補が1つ)が9,438語、複数の候補が示されたものが、18,836語、候補を発見できなかったものが 5,167語であった。ただし、これらの翻訳結果が正しいかどうかについての全面的な検証は行っていない。
結論
今年度の研究は、基本語辞書の整備とSNOMED翻訳支援システムの作成、及びそのテストランに終わったが、このシステムが、高い確率で実用的に利用できる可能性を示し得たと考える。語順のルールはまだ不完全であり、また、複数の概念から構成される英単語をそのままATOMとして解釈しているために、翻訳に際して十分な論理性が備わっていないなどの課題が残った。研究の第2年度に当たる平成13年度には、各医学専門領域毎に、このシステムを用いた翻訳を試み、その翻訳結果の正確さ、語順変換ルールの問題点、基本語辞書の過不足、属性の多様化の必要性などについて検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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