日本の既存医学データベースをEBMに生かすためのエレクトロニックサーチ・ハンドサーチの方法論の開発とデータベース改良に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001136A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の既存医学データベースをEBMに生かすためのエレクトロニックサーチ・ハンドサーチの方法論の開発とデータベース改良に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
津谷 喜一郎(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中山健夫(国立がんセンター/京都大学)
  • 宇山久美子(国際医学情報センター)
  • 山崎茂明(愛知淑徳大学図書館情報学)
  • 坂巻弘之(慶応義塾大学医療経済学)
  • 長谷川友紀(東邦大学公衆衛生学)
  • 大島伸一(名古屋大学泌尿器科学)
  • 平尾佳彦(奈良県立医科大学泌尿器科学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
よりよいアウトカムを目指したEBMの実践において、臨床の現場、ガイドライン作り、その他多様なユーザーは、質の高いデータベースに対する強い情報ニーズをもっている。本研究は、日本の医学データベースを用いたエレクトロニックサーチの方法論の作成、日本の既存の医学データベースの構造と内容の改良のためのシステム開発、診療ガイドラインの評価法の検討、を目的とする。
研究方法
(1)過去分と新規発生分のランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の出現数の概数の推定を行う。
(2)新規発生のRCTを同定するハンドサーチを行う。そのための教育プログラムの開発と教育の実施を行う。
(3)ハンドサーチに伴う、質管理のシステムを開発する。
(4)データベース構造の基本設計を行う。
(5)既存の診療ガイドラインを収集し、その評価法のあり方の分類と問題点の把握を行う。
結果と考察
3年計画のプロジェクトの第1年度は、日本で実施されたRCTの、「前向き」(prospective)の同定とデータベースの作成を中心とした。
(1)文献調査と研究班員の討議により、過去分のRCTについては、約10,000件、新規発生のRCTについては、毎月約30件、年間約300件と推定された。
(2)日本において施行される雑誌から、あるテーマを決めて論文をピックアップしコピーを届けるSelective Dissemination Information(SDI)serviceを行っている、複数の企業や団体の事務内容調査が行われ、本プロジェクトにふさわしい、組織が選ばれた。
(3)今回のプロジェクトの「スクリーニング」は、従来のSDI service におけるcustomerからの要望である、医学のある領域や医薬品単位のものとは異なり、RCTやCCT(controlled clinical trial:比較臨床試験)、meta analysisという研究デザインを中心とする。そこで、ハンドサーチに必要な教育がEBMの手法を中心に開発され実施された。
(4)毎月平均60件のRCTが同定された。これは、当初予定した毎月約30件、年間約300件を大きく上回り、約2倍で、日本では、年間1,000件に近いRCTが実施されていることが分かった。
(5)この間、作業をバラツキなくかつ効率的に行うためのhandsearch monitoring sheetやhandsearch manualが作成され、質管理を行うための1次チェック、さらに臨床薬理学、臨床疫学の専門家による2次チェックのシステムが開発された。初年度に作業の基本的システムは開発されたが、この年間約1,000のRCTに対して将来作業を行う予算的裏づけが必要となろう。
(6)同定された論文からの必要な情報を収載する、データベース構造の設計がなされ、実際の入力が開始された。入力項目として抄録は重要であるが、日本の医学論文の抄録は質が高いとはいえず、構造化抄録(structured abstract)の採用はまだ10誌に満たない。いずれ、構造化抄録を作成するための教育プログラムの開発と作業システムの確立が必要であろう。論文中の抄録を使用するにあたって、著作権をクリアーすることが必要である。本年度は、モデルとなる2つの雑誌を選び、著作権使用に関する支援と覚え書きづくりの作業が開始された。このプロトタイプに応じて、今後将来他の雑誌社との交渉がなされる予定である。
(7)ガイドラインの評価方法についての調査がなされ、EBMの主要な成果物であるガイドラインは、1)外的状況における有用性、2)ガイドライン本体の評価、3)ガイドライン導入による医療内容の変化の3つの視点から評価する必要があることが明らかとなった。従来のガイドラインの評価の多くは、外的状況における有用性とガイドライン本体の評価に属するものであるが、EBMの技術的・構造的限界からは、ガイドライン導入による医療内容の変化の検証が不可欠である。
結論
日本の月産RCTは約60であることが明らかになり、これを効率よく同定し、データベース化するための基本的システムが開発された。次年度以後の作業量の予測がなされ、質の高いデータベース作成にあたっての構造化抄録作成や著作権などへの対応に対する予備的調査がなされた。

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研究報告書(紙媒体)

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