診療施設間患者情報交換と情報収集形式の標準化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001124A
報告書区分
総括
研究課題名
診療施設間患者情報交換と情報収集形式の標準化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者紹介時の診療情報交換は、定められた様式によりおこなわれている。  まれに検査結果出力票が沿えられていることもあるが、ほとんどの場合、手書きで詳  細まで記入されている。診療中の手作業であるから、必然的に、その情報量は十分なものにはなりにくい。病院情報システムには処方内容、検査結果が電子的に保存されているので、これを電子的に受け渡しできれば、チーム医療として患者ケアの向上になる。しかしこの際に問題となるのが、病名、検査項目、検査部位等の記載である。
チーム医療の職制それぞれに、求められる記載の詳細度が異なる。当該研究の成果に  より、一旦詳細な記述がなされれば、求められる詳細度に応じて、より簡単な記述等を自動で生成できるようになり、情報移転がスムースとなる。平成11年4月に、診療録の電子保存に関する通達が出て、今後、診療録内容を電子的に保持する施設が増加すると考えられる。その状態で、各施設バラバラな形式での処理が行なわれると、バベルの塔の如き状態となり、情報が交換困難になってしまう恐れがある。幸い本邦にも、HL7, DICOMといった医療用規格が定着しつつあるので、医療情報交換の基本である、こういった項目についてのよい記述形式、変換機能を定めることが、本研究が急がれる理由である。
研究方法
画像伝送規格であるDICOMには、ここで用いるべき用語集が備わっている。 今やDICOMは画像データのみのためにあるのではなく、画像検査関連の文字データも 扱う。したがって、診断レポートや検査オーダの情報も扱う様になっている。そのため、米国病理学会が作成したSNOMEDコードの一部を取り込み、合同用語集を形成した。本研究では、実際に用いられている検査項目種別コード、検査部位コードが、どれほど上記DICOM用語集でカバーされ得るかを検討した。実際には富山医科薬科大学および浜松医科大学でのコードを用いた。そしてこの比較の結果、不足は深さなのか広さなのかを明らかにし、追加するための拡張方法についても考察した。本研究は、個人情報を含む保健医療福祉情報のプライバシー保護等を確保することも含めた情報伝達(情報交換)の方法を目的として行った。研究推進に当たって人や動物等を直接対象とすることは、無かったため、倫理面における新たな問題を発生することはなかった。
結果と考察
まず、検査項目種別コードを、DICOMのコード集に対応させた結果、ど れもどれかには該当するが、詳細度が十分でないことが判明した。これは例えば診療報酬請求病名集には、大分類、中位分類、推奨病名など、簡単なツリー構造を持つため、上位分類まで使えばどんな病名でも、必ずどこかに、唯一に該当させることが出来る、という状況と同じである。一方、検査部位コードでは、千余りのDICOMのコード集を持ってしても、5割程度しかカバーできない、という驚くべき結果が判明した。
この結果を受けて、(社)日本画像医療システム工業会と保健医療福祉情報システム 工業会からの協力も得て、検査種目と部位について、JJ1017コードとして制定した。これらは、大分類、小分類、詳細からなり、それぞれのレベルでの拡張が可能となっている。この成果物は、両工業会から公開されている。種別コードでの詳細度の不足も、部位の不足も、日本と米国との、検査部局の位置付けの違いに原因があると考えられる。この不足分のコードをDICOM関係者などの意見も参考に検討した結果、米国では検査依頼はもっと大まかであり、検査詳細は検査実施側の裁量であるため、依頼時点では詳細は必要がないようであり、一方、日本では依頼医の側から、検査の詳細についての記述が多いからである、と考えられる。また、JJ1017コードの運用では、ローカルでの詳細拡張の際も、そういった詳細な記述とともに、それが共通語たる基本分類では何に当たるかを見い出し、それに付加して、細分類コードをローカルに作成することした。例えば「造影CT」はCT.02.01であるが、ある施設ではダイナミック造影を通常の造影と区別する場合、末尾に「.01」をつけ、CT.02.01.01 とする。
そうすることによって、ローカルには詳細な情報の伝送が可能となり、またその内容 は、共通語としての分類に沿っているので、最低限の情報、つまり共通語である 「CT.02.01」によりは伝わるので、このレベルでなら施設間比較などが可能となる。この構造化された拡張機能は今後のコード・用語集の作成に有益であると考えられる。
結論
検査項目および部位について、多階層のコード系を作成した。これにより、任 意のレベルでの拡張、詳細記述が可能となり、例え詳細記述がローカルに拡張されたものであっても、共通語部分では他施設と同じものを扱うため、施設間比較などが可能となった。コードの検討に際して、米国と日本とでは、検査依頼の詳細度が異なることが判明した。日本の方がより詳細な内容の検査依頼をおこなうといえる。計画どおり、今後はこれらのコードを、主任研究者が昨年まで行なってきた、情報交換のためのデータ形式の中に実装し、特に糖尿病など特定の疾患について、診療施設間連携をおこなうことができる、臨床的形式の策定を行なう予定である。本研究推進において、生命、健康に重大な影響を及ぼすと考えられる新たな問題及び情報はなかった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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