歯と咬合の長期的維持管理に関する予防・治療技術の評価についての          総合的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001121A
報告書区分
総括
研究課題名
歯と咬合の長期的維持管理に関する予防・治療技術の評価についての          総合的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 寛二(岩手医科大学歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂東永一(徳島大学歯学部)
  • 相馬邦道(東京医科歯科大学歯学部)
  • 宮武光吉(鶴見大学歯学部)
  • 廣瀬康行(琉球大学歯学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
15,357,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢に至るまで歯と咬合を適正に維持する方策を総合的に検討し、歯列崩壊の予防および健全な咬合の維持管理方法を確立することが、現在のわが国の歯科保健に強く望まれている課題の一つである。本研究においては、人のライフサイクルを軸に、科学的根拠による歯と咬合の長期的維持管理を達成するための指針を打ち出すことを目的とする。得られた結果は、補綴物の維持管理期間をより長期に設定すること、および長期的維持管理を行うために必要な診査項目の見直しを行う上で寄与しうる貴重なデータになるものと考えられる。
研究方法
平成12年度は歯と咬合の長期的維持管理に必要な調査を行う際に使用するプロトコールを作成し、各分担研究ごとにデータを収集した。その概要としては、
①学童期における口腔内状態が成人での口腔内環境に及ぼす影響を知るため、十代後半の男女を対象に現在の口腔状態、全身状態と学童期の口腔状態を質問紙法による後ろ向き調査を行い1309名から回答を得た。
②歯列不正と咀嚼機能障害の関連を調べるために、歯列不正を有する小児100名のデータを採取した。形態検査には口腔内写真撮影、印象採得をおこない形態データを出し、機能検査としては下顎運動、咀嚼筋筋電図、咬合力測定を採用し、機能データを採取した。
③顎関節症患者に対する咬合治療をEBMに基づき評価するため、咬合治療を行う群と行わない群に無作為に分けて、その効果を調べる実験計画を立案した。実際の実験を開始するにあたり、正常者を対象に複数のスプリントを装着し、実験で使用するスプリントの規格を定めた。また、顎関節症患者を対象に治療効果の評価を行う実験であることから、徳島大学歯学部倫理委員会に諮り承認を得た。
④補綴処置後の維持管理方法を検討するため、歯科医師と患者の意識調査を行うため、調査プロトコールを作成した。健常者20名を対象にプロトコールに沿った調査を予備実験として行い、調査担当者の評価基準に対するキャリブレーションを実施した。
⑤補綴診断における電子情報の臨床応用として、咬合支持域、咬合力、咬合接触面積、咬合バランスをパラメータとする評価基準を探るために必要なプロトコールを作成した。健常者20名を対象にプロトコールに沿った調査を予備実験として行い、調査担当者の評価基準に対するキャリブレーションを実施した。
⑥情報交換のユースケースやモデルを策定し、診療情報の共有と提供の方策を求めるため、保険医療用担当規則1号様式の歯科傷病名欄にかかわる歯科診療情報の交換書式を策定し、その妥当性を検証した。
結果と考察
十代後半の男女を対象とした調査結果から、全体の1/3に顎関節およびその周囲に何らかの症状が出現していることがわかった。こういった症状が、学童期の口腔内環境とどのような関連があるかという点を今後の調査で明らかにすることにより、顎機能を良好な状態に保つために必要なものを提言できるものと思われる。発症した顎関節症に対する咬合治療を適切に行うため、また適応を定めるためにEBMに基づく治療効果を判定することの必要性が次年度の研究結果から言及できるものと考える。補綴物の長期的な維持管理ならびに欠損歯列が咀嚼に及ぼす影響を調べることにより、歯および咬合の長期的維持管理方法を示すための根拠が提示され、歯列および咬合の保全に対する予知性を高めるものと期待される。かかるデータを国民に提示し、データの共有を行うことは今後の歯科医療を行ううえで必要不可欠なこととなる。本研究では歯科診療情報の交換書式を策定することによる対応を試みた。今後実用化に向けてさらに検討を行う予定である。本研究で最終的に得られるであろうデータは、歯科治療を処置中心から予防・管理に主体をおく「健康マネージメント」へと切り替えしむる道しるべの一端を担うものと確信する。
結論
平成12年度においては調査・実験を行うに必要な準備を行い一部データ収集を終えた。次年度のデータを加え、解析して得られる結果を基に、咬合の長期的な維持管理に寄与する方策を策定できるものと思われる。その結果、歯科治療を予防・管理に主体をおく「健康マネージメント」へと導くための根拠を提示できうるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)