歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化及び国家試験の実技能力判定の整備等に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200001100A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化及び国家試験の実技能力判定の整備等に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
中原 泉(財団法人歯科医療研修振興財団)
研究分担者(所属機関)
  • 住友雅人(日本歯科大学歯学部)
  • 真柳秀昭(東北大学大学院)
  • 井上宏(大阪歯科大学)
  • 櫻井薫(東京歯科大学)
  • 吉澤信夫(山形大学医学部)
  • 岩久正明(新潟大学歯学部)
  • 俣木志郎(東京医科歯科大学大学院)
  • 久光久(昭和大学歯学部)
  • 道健一(昭和大学歯学部)
  • 作田正義(大阪大学)
  • 斎藤毅(日本大学総合歯学研究所)
  • 川添堯彬(大阪歯科大学)
  • 花田晃治(新潟大学歯学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研修必修化を整備していくためには、現在行われている卒後臨床研修(努力義務規定)における状況を正確に把握し、それを踏まえて今後の展開を図っていく必要がある。臨床研修を必修化して遂行していくために必要な事項の調査を行い、詳細なデータを収集し、それに基づいて試案プログラムを作成する。このプログラムをシンポジウムを通じてその内容を審議していくことから、実用性の高いたたき台を構築する。また臨床に関する「基本的な実技能力の獲得」と「科学的・論理的な診断能力の修得」は卒前教育の主たる目的のひとつであり、これらの能力試験を歯科医師国家試験に導入することにより、社会的な要請に答えることが可能になるとともに、特殊な専門教育の講義に終始している歯科医療教育の内容や教授法を見直す契機とする。
研究方法
「歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化」平成11年度の歯科学生に対する臨床研修必修化に対する意識調査、平成10年度歯科医師臨床研修医の診療収入に対する調査、到達目標に関するアンケート調査、評価法の実態調査、臨床研修施設の指定基準および第三者評価を分析し、現時点での対応策を日本歯科医学教育学会と公開シンポジウムで発表した。平成11年度の調査結果を検討し、継続ならびに追加調査を実施した。その結果を集計し、分析した。到達目標については、調査した内容に基づき、基本理念、ねらい、一般目標、行動目標を立案した。ここで立案したものは、公開シンポジウムにおいて提示し、広範囲の領域、施設の方々から意見を頂いた。その意見を整理し、再度到達目標の試案を作成した。[国家試験の実技能力判定の整備]平成11年度の卒前の基礎実習(シミュレーション実習)、および臨床演習に関する全国の歯学部および歯科大学に対するアンケート調査の結果を検討し、実習試験の課題を具体的に提示した。その課題案の対象症例は、1.診査・診断(アルジネ-ト印象採得と診断用模型の製作)、2.歯の処置(支台歯形成)、3.有歯顎の修復、咬合の回復(テンポラリークラウンによる咬合と審美の回復)である。それぞれにつき試験場、試験会場で借用するもの、受験者が準備するもの、受験にあたって必要なもの、試験概要、試験後の評価の内容について検討した。そして各症例に対するチェックリスト式の評価表を作成した。1.については4年生5名と卒後2年目の医員4名、3.については5年生4名と卒後2年目の医員4名を対象にして実技試験を試行した。観血的処置を中心とした課題については、歯学部6年次学生5名を対象にしてOSCE方式による実技試験を施行、試験結果の妥当性を検討した。
結果と考察
[歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化]平成18年4月1日からの必修化の対象になる1年生は本制度を認識しているためか、83%が参加すると答えている。この値は過去の歯科学生を対象にした調査データに比してすこぶる高いものである。
これは学生が認識したととらえるより、大学側の認識が高まり、対応モードに入ったと読むべきであろう。公開シンポジウムでの到達目標の提示案に対しては、基本理念、ねらいは60%以上の方が適切であると回答したのに比して、一般目標、行動目標は50%台にとどまった。そこで多くの方々の意見を分析し、目標の再編成を行った。評価については、実態調査や関連資料の分析から、研修修了の評価基準・仕組みを設定するための基礎データを発掘し、複数の選択肢の作成を行った。研修施設の指定基準に関しては、研修プログラムの公表、研修医専用の診療台の確保、歯科衛生士の役割、到達目標を達成するための患者数確保、指導医の経験年数・数の見直しの必要性があることが判明した。[国家試験の実技能力判定の整備]実技試験の実施案を検討したところ、それぞれについて内容的な妥当性は得られるものと考えられたが、試験設備、試験媒体に関して内容的な妥当性とともに評価の客観性に関する検討が必要であることが判明した。
結論
[歯科医師の資質向上を目指した臨床研修の必修化] 今回のアンケート調査は特定の大学の歯科学生であったとはいえ、平成11年度の本研究での調査に比して、必修法制化は研修制度への関心を加速度的に高める結果を示した。やはり必修が平成18年4月1日から採用されることで、大学の対応が本格化したと読むべきであろう。研修医の診療収入には研修施設の対応や、研修医の診療技能によって大きく違ってくる。これは研修カリキュラムを統一することによって格差を少なくすることは可能になると思われる。しかしながら歯科における研修医の給与保証では、医療収入に頼ることは難しい。やはり国家財源にウエイトをおく必要があり、そのためには制度のメリットを国民に理解してもらう方略の構築が最重要課題となる。処置項目の達成数は施設において大きな格差が見られる。ばらつきの均等化を図るには、やはり適切な到達目標を設定するとともに、指導医の制度への認識をよりいっそう高める必要がある。公開シンポジウムのアンケート結果をもとに歯科臨床研修標準プログラムの試案を再編成した。主な特徴は次のとおりである。①プログラムを歯科臨床研修基本習熟コースと歯科臨床研修基本習得コースに大別した。②さらにそれぞれのコースを5つのユニットで構成し、GIOを掲げた。③各々のユニットに対してGIO、SBOsを掲げた。そして現在の大学病院における実態やこれまでの関連資料を調査から、研修修了の評価基準・仕組みを設定するための基礎データを発掘し、複数の選択肢を作成してみた。1年以上という研修期間の幅、研修期間の多様性など現時点での不確定要素を踏まえながら、少なくとも必修化の発足時までに準備すべき内容を具体的に提示した。今後は最小限の統一見解を具体的にまとめていく必要があるものと思われる。臨床研修施設の指定基準及び第三者評価に関しては次の通りである。すなわち①歯科医師臨床研修施設は、歯科医師臨床研修希望者のために、募集については人数を明確にし、公募していて、かつ研修プログラムを公表すること。②研修医や研修奨励のレベルは一様ではないので、診療時間に余裕が持てるように、各研修医専用の診療台が確保されていること。③歯科衛生士が、適当数(概ね常に勤務する歯科医師と同数)確保されていること。これには歯科診療に従事する看護婦や准看護婦は含まない。④臨床研修医に必要な患者が、適当数確保されていること。⑤現行のように臨床経験の年限で規定せず、指導者講習会受講者であれば、指導医としての資格を与える。⑥主たる施設で責任をもって推薦する歯科医であれば、常に勤務する歯科医師が1人でもよい。[国家試験の実技能力判定の整備]本年度の研究結果から保存系、補綴系ではファントム模型を使った実技試験が可能であること、外科・放射線系、小児・矯正系ではファントム模型による実技試験は困難であるものの、模擬患者などを使ってOSCE法など適用した試験が考えられた。しかしそれぞれの試験項目について、試験時間、使用する教材、評価方法、評価者間の誤差、試験の客観性、試験
費用に関する検討が今後必要であると考えられた。

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