看護の質の確保に関する研究

文献情報

文献番号
200001091A
報告書区分
総括
研究課題名
看護の質の確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
菱沼 典子(聖路加看護大学)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 和子(千葉大学看護学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先に日本における都市型保健所における戦前から今日までの過去60年間の保健婦活動から抽出した看護活動モデルの妥当性を他国の看護職の活動モデルと比較して検証し、高齢社会である我が国において有用なプライマリヘルスケア(PHC)に基づく看護モデルを開発する。
研究方法
看護活動モデルの妥当性を検討するために、まず聖路加看護大学WHOプライマリ看護開発協力センターと関連のあった6カ国(大韓民国(以下韓国)、タイ王国(以下タイ)、スリランカ民主社会主義共和国(以下スリランカ)、ケニヤ共和国(以下ケニヤ)、ガーナ共和国(以下ガーナ)、フィンランド共和国(以下フィンランド))のコミュニティにおけるPHCを担う看護職の活動について研究班で開発した質問紙を用いて、聞き取りあるいは現地および文献で調査した。データを研究枠組みの健康転換層およびPHCの視点から整理し、各国の看護モデルを同定し、さらに比較検討し、昨年提唱した看護モデルをさらに精選・発展させた。
結果と考察
概念枠組みの一つとして用いた健康転換層の視点から、ケニヤ共和国やガーナ共和国は感染症が最もおおきな健康課題であり、GNPが低く、平均余命が50歳代であり、健康転換第1相、スリランカでは感染症も課題でありながら、成人病の増加も同じく健康課題であり、識字率は高く、平均寿命が延びており、第1相から第2相へ移行しつつあると考えられる。韓国は慢性疾患が主要な健康課題で、また高齢化が急速に進んでいおり、第2相から第3相へ移行しつつある。タイにおいて疾患構造が韓国に類似しているが地域差が大きく、健康転換第1相、第2相、第3相が混在していると考えられる。フィンランドは諸指標が我が国と類似しており健康転換第3相と見ることができた。
昨年の研究では健康転換第1相では(サービス)提供型と命名できる看護活動モデルをとっていたが、ケニヤ、スリランカで提供型モデルがあげられており、感染症や母子保健活動では有用と考えられた。健康転換第2相では慢性疾患の予防や早期は発見では各個人の健康管理が重要で相談型の看護モデルを始め、広域な公害健康問題や生涯にわたる障害者支援など住民との活動することが必要となり、住民とともに活動する参加型モデル、他職種との協働が必要になるとコーディネート型、あるいはネットワーク型が見られ、これら活動モデルは健康第1、2、3相が混在するタイではすべての看護モデルが見られた。健康転換相2から3相のスリランカでは仕事の内容で提供型、と行政と住民と看護職との連携しての活動型であるトライアングル型の看護モデルも共に見られ、看護職のなかで役割を階層的に分化させていた。フィンランドはこの住民、看護職、行政連携のトライアングル型看護モデルとコーディネーター型モデルが見られた。健康転換第3相のような高齢社会では一人で生活が困難な高齢者を生活の質高く支えるために提供型モデルでは対応できず、住民と看護職、行政がお互いに連携して高齢社会住民全体のニードに対応していくトライアングル型モデルに変化してと考えられた。
我が国における高齢者ケアの現状の問題として、医療・保健・福祉が医療保険と介護保険というように一元化してはいないため、在宅高齢者ケアの利用者の立場からみると医療と生活が分断され、それぞれのサービスごとに高齢者自身が調達しなければならい現状がある。高齢者の質の高い生活の保証には医療・保健・福祉が連携しサービスを享受できる環境を作ることが必要である。看護職は医療・保健・福祉の場におり、看護職がこれら医療・保健・福祉機関を結び、コーディネートする役割をとることがふさわしいと考えられた。このコーディネートあるいはさらにネットワーク型モデルが在宅高齢者ケアの質の向上には不可欠であると考えられ、このために4年制大学が看護婦、保健婦の統合教育に着手してきた。行政での調査・企画能力をもつトライアングル型モデルの役割を担う人材の育成は大学院教育でなければ困難で。大学院修士課程で高度看護実践家の育成は急務と考えられた。
今回7つの看護モデルを袖出した。この看護モデルにおける住民と看護職は看護教育における学生と教員との教育活動モデル類似している。単に講義形式で知識・情報の提供だけでなく、対話を通しての相談型やグループ学習活動に参加しての参加型、他部門の連携を体験して学ぶコーディネート型やネットワーク型など学習形態の工夫で効果的にこれら看護活動モデルを学習を可能にすると考えられる。今後、これら看護活動モデルの実践での有効性について検討を重ねてゆきたい。
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)