震災後の診療機能の回復手順に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001086A
報告書区分
総括
研究課題名
震災後の診療機能の回復手順に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
河口 豊(広島国際大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
震災後の診療機能の回復を速やかにかつ円滑に行うために、病院あるいは診療管理者が、経時的に提供可能な診療機能の水準を判断できるような診療機能評価のための情報を、コンピューターネットワークを使って収集するでき、かつ震災訓練のも有用なソフトの開発をすることを目的とした。
研究方法
研究班は過去2年度の研究協力者のうち内藤秀宗(財団法人甲南病院副院長当時)、山田鈴子(六甲アイランド病院手術部婦長)、松山文治(財団法人甲南病院事務長当時)、菊池正幸(鐘紡記念病院臨床検査科科長)、川端和彦(鐘紡記念病院放射線科技師)、野田義輝(神鋼病院管理部企画室長当時)と新たに情報関係の宇田 淳(広島国際大学医療福祉学部)、金谷孝之(広島国際大学医療福祉学部)が加わり研究班を組織した。3年計画の研究における最後の年であり、前2年度の研究成果の見直しを行った。次いで必要な資料を得るために班員の4病院において、調査者が出向き震災時に必要な診療機材のチェック時間の測定調査を行った。チェック時間の対象部門は検査部・放射線部を中心に一部の病院では施設関係部門も調査した。それらを基にコンピューターネットワークのソフト開発を研究協力員が担当し、班会議で検討しながらソフトの修正を重ねていった。
結果と考察
3年計画の研究における最後の年である平成12年度は、パーソナルコンピューターによる診療機能の回復手順を円滑にするソフト開発をおこない、同時に震災時に対応した訓練にも利用できるようにした。①平成10年度は災害拠点病院504病院に対してアンケート調査を行い、防災マニュアル作成割合が低いこと、トリアージを行う場所を定めている割合も60~70%であったこと、災害時に必要と思われる診療機器に対する震災対策の割合も低いことなどの結果を得て、震災時に病院あるいは診療管理者が経時的に提供可能な診療機能の水準を判断できるような診療機能評価手順とチェックリストを作成した。②平成11年度は阪神・淡路大震災の際に外部からの応援者をうまく管理できなかった病院が多いことから、院内各部からの応援者の要請とそれらをまとめた院外への要請手続き、応援者にもとめる必要な情報の整理、来院した応援者への登録事項、各部への応援者配置に関する書類などを新たに検討し作成した。③これらを基に、平成9年に行った「病院における震災後の診療機器等の復旧による診療機器の回復に関する研究」の結果も基礎資料としてソフト開発を行った。震災時に病院あるいは診療管理者が、経時的に提供可能な診療機能の水準を判断できるような診療機能評価のための情報を、コンピューターネットワークを使って収集するものである。実際の震災の状況の中では非常に混乱し、その時にマニュアル本の頁を繰って必要な情報をもれなく収集することは大きなエネルギーを必要とする。それらを必要なチェックリストとして自動的にコンピューター画面上に呼び出し、チェックできるシステムとなっている。また各部はいちいち本部まで報告に出向かなくても各部の端末から入力することで行動の制限が緩和される。各部からの報告が一定時間より遅れた場合は自動的に督促する。その時間は3病院での各部で必要な機器の点検時間を測定して組み込んだ。さらに、このシステムは震災の訓練としても容易に利用でき、訓練を手軽に頻繁に行うことができる。実際の震災時に、いかに想定したとおりに活動できるかは訓練を積み重ね行動で覚えることが望ましいことは言うまでもない。日常的に使用している端末を訓練時に震災モードに切り替えることによって、通常慣れた手法で行えるため震災時における対応も円滑に進められると考える。また病院全体の訓練の他に各部門での訓練にも
使えるシステムである。④今後の課題としては、インフラの面では無線LANを使用することで震災時にも対応できるネットワークの実現を図る。また院内PHSを使用することなども検討する。次いで患者の自動診断装置の開発と同様な考え方で経時的な診療機能の水準評価を自動的に行えるようにソフトの開発を行う。これにより管理者の判断を必要とする項目が少なくなり、管理者の判断に使用する時間は軽減される。最後に報告の自動督促があげられる。現在は画面の項目を色づけすることで督促しているが、その特定の部門にアラームを発生することも可能である。またその時点で誰に督促すればよいかが特定できれば、その人の携帯端末に自動的にメールやアラームで督促できるようにソフトを開発する必要があろう。
結論
パーソナルコンピューターによる診療機能の回復手順を円滑にするソフト開発をおこない、同時に震災時に対応した訓練にも利用できる新しい手法を開発した。災害拠点病院などに共通のシステムを導入することにより、外部からの応援者が院内の入っても操作が可能となり、さらに外部へもオープンにすれば、周辺の病院からも当該病院がどの程度の医療活動に制限されているかが確認でき、援助活動がより確実なものとなる。今後の課題としてインフラの無線LANの信頼度、院内PHSの活用の可能性、自動診断装置の開発と同様な考え方で経時的な診療機能の水準評価を自動的に行えるソフトの開発、報告の自動督促が残されている。

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研究報告書(紙媒体)

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