災害時、自衛隊における初動医療のあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001084A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時、自衛隊における初動医療のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
桑原 紀之(自衛隊中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 箱崎 幸也(自衛隊中央病院)
  • 山田 憲彦(統合幕僚会議事務局第4幕僚室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、災害発生時、自衛隊の派遣システムや能力(特に医療救護活動)が自治体・国民等に広く理解出来る『自衛隊災害派遣(医療支援)』小冊子を作成することにより、今後の災害医療活動(医療機関を含むいくつもの多機関が共同で行う災害救援活動)を効果的に実施し、広く国民に寄与することにある。さらに、特殊災害発生時における初動医療体制のうち、各病院対応要領等も研究するものである。
研究方法
(1)自衛隊の災害派遣に関する全国の災害拠点病院アンケート調査
全国520の災害拠点病院(含む46基幹災害センター病院)に対し、小冊子『自衛隊災害派遣(医療支援)』(改訂版)と前回同様のアンケート用紙を同封し、調査を依頼した。
アンケート項目は、災害時の自衛隊派遣への具体的手続が理解されているか、災害時に自衛隊衛生活動に期待する事項は何か等の17項目と自由記入欄で自衛隊への期待・要望等に関して調査を行った。
平成9年以降に行って来たアンケート結果と・自治体との差、・病院としてこの2~3年の経過に伴う変化について、比較検討を行った。
(2)『特殊災害における患者対処の概要』作成
『特殊災害における患者対処の概要』を、災害拠点病院の他多機関(警察・消防・医師会等)に送付し、訂正・追加等の御意見を頂いた。
結果と考察
(1)全国災害拠点病院アンケート集計結果
郵送回収率は、61.3%の回答を得、平成9・10年度は同様のアンケート調査の県レベル(都道府県庁・政令指定都市)(69%)、市・区レベル(69%)および町レベル(79%)に比べ低い回答率(殊に東部方面)であった。
平成9年の都道府県、平成10年の市・区、平成11年の町と比較検討すると、
・知事等からの要請の必要性と具体的要請手続の理解度
要請の必要性(要請主義)に関しては市・区、町レベルより高く県レベルに近い87%を示した。しかし、具体的な手続に関しては知っているが12%(むしろ基幹病院以外の認知度が高かった。)、知らないが61%で自治体に比べ大きな差であった。
・自衛隊衛生への期待度
自治体と同様に95%と高く、複数回答の項目順では、1.患者搬送(84%)2.衛生器材・医薬品の補給(79%)3.救護所の開設(78%)4.防疫活動(64%)が上位であった。放射線検査(8.5%)臨床検査(5.4%)歯科治療(2.2%)は、期待度が低かった。
・防災訓練への参加
毎年参加(46.7%)、時々参加(24.8%)となんらなの形で71%が防災訓練を行っているが、自衛隊との共同訓練は、時々を含めても約30%で、63%が行ったことがないであった。ちなみ、に毎年行っている62病院中24(39%)は赤十字病院であった。また、共同訓練項目としては生活支援が主体で、医療支援は少なかった。
・自衛隊との連携強化の必要事項
約半数に自衛隊との定期的協議を持つことがあげられ、防災訓練への参加は35%にとどまった。また、10病院で自衛隊との連携は必要ないとの答があった。
・アンケート結果による拠点病院間の差
アンケート結果を集計していくと、病院差が著しく、回答者も、病院長や災害担当部長から事務系の一係官まであり、アンケート内容が理解されないままの返信が相当数みられた。また、各基幹病院でも地域差があり、自衛隊に対する認識差がみられた。
災害時自衛隊の迅速な災害活動は、平素から関係機関との密接な連携や調整が最も重要である。大規模災害時の医療支援においては、自衛隊衛生部隊と保健所/日赤/NGO等の医療チームとがどのように協同・分担医療活動していくのかが大きな問題であり、今回、その核となる全国の拠点病院を対象に従来通りのアンケート調査を行った。アンケート調査結果から自治体と比較して、災害拠点病院では自衛隊への災害派遣への関心や期待度は高いものがあったが、具体的要請手続、共同訓練実施や連携強化が不十分で、自衛隊に対する認識差が明らかにされた。また、平成9年に行った保健所、国立病院、赤十字病院、医師会等の医療機関のアンケート結果と、多くの項目で類似性があり、全国レベルで関心が持たれている割には3年の経過中に発展性に欠けていた。拠点病院は法的に直接、自衛隊との連携が取れないが、自治体、殊に県レベルを介して共同訓練を積み重ねて行く上で、重要な位置の病院である。昨年東京都が行ったビッグ・レスキューTokyo2000は自治体主導で、医療支援訓練においても自衛隊、その他の多機関が協同で実践的訓練に出来たことに意義をみる。
結論
自治体では、自衛隊の災害支援に理解を得られているが、今回のアンケート調査からも災害拠点病院では未だの感があった。全国的な見地からすると、拠点病院と自衛隊との距離をつめ、自治体を中心にして保健所・医師会・各医療機関と合同の協議会にて、より実践的な災害対処計画作成・共同訓練を行い、迅速でより効果的な災害救助活動が実現可能である。さらに今後は、特殊災害に対しても同様の対応が必要と思われる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-